未来を信じて託す男
「下げる頭持ってなくてもいい。人を想う”心”は持て」
「東京卍會」の副総長で、創設メンバーのひとりでもある龍宮寺堅(以下、ドラケン)。小学五年生で頭にドラゴンの刺青を入れるなど気合いの入った不良ではありつつも、“一般人は巻き込まない”という信念だったり、他人を気遣う優しさなど、人一倍の道徳心を持つ人格者でもある。
感情にまかせて暴走しがちなマイキーを諫(いさ)めることのできるほぼ唯一の人物であり、花垣武道(以下、タケミチ)からは「マイキーの心」とも言われるほど。ときにはケンカをすることもあれど、お互いに深い絆で結ばれた最強&最高のコンビ。誰もがそう思っていたのだが……しかし、現実はそうではなかったというのが『東京リベンジャーズ』ならではの醍醐味だ。そもそも最初の現実ではドラケンは8・3抗争で死亡していたし、それを回避した世界の現代では死刑囚となっていた。現実として、ドラケンはどの未来でもマイキーを闇から救うことができていない。
そもそもドラケンは、タケミチが変えた未来においても人格が変化していない稀有(けう)なキャラクターで、彼の心は凶悪化した「東京卍會」に染まることはない。死刑囚になってまでタケミチの身を案じ、マイキーを止められなかった己を悔やむなど、心根の優しさも昔のまま。そんなドラケンがマイキーを救えなかったのは、本当に稀咲の策謀がそれを上回っていただけだからだろうか?
じつはそれだけではないことが顕著に表れているのが「血のハロウィン」での一件だ。このときのドラケンは、(羽宮)一虎を殺そうとするマイキーのそばにいながら、黙って見守るしかできなかった。そして彼は、そんな未来を予見するかのように、いち早くタケミチの中に希望を見出していた。つまりドラケンの本質とは、運命を受け入れ、未来を信じて「託す男」なのかもしれない。