運命(アニメ版)
――それぞれのキャラクターのデザインについて聞かせてください。まずは運命です。
LAM 運命の原案はゲーム版のときに描いていて、赤のカラーリングやバラのモチーフも、すべて僕から提案したものです。「運命の赤いバラ」というフレーズを思いついたことと、運命に縛られるじゃないですけど、茨を身体に巻きつけていたら面白い、という発想です。そこからアニメ版の運命を描くときに、ゲーム版では内側に巻いているボブカットのロールを外に広がるシルエットにしています。
――衣装はいかがですか?
LAM バトルのときの見栄えも考えて、裾の広がるスカートやマント生地を採用しました。脚にはニーソックスを履かせているのですが、これはなるべく露出を下げつつ、脚のキレイさやスカートとの対比をしっかりと見せてあげたいと考えたからです。ブーツを履かせているのは、ロードムービー作品であることを踏まえたものですね。
――デザイン上のお気に入りポイントは?
LAM 髪型ですね。とくにもみあげ部分の、毛先でバラのシルエットを表現しているところです。これは「揺れものが欲しいね」という制作的な意向から生まれたもので、かわいらしさが出せたかなと。
――バトルを想定してデザインを調整した部分はありますか?
LAM ひとつの戦法にとらわれず、銃や剣を使うということだったので、どんな戦闘にも対応できる身軽さと優雅さは担保しようとしました。
アンナ
――どのようなコンセプトでデザインしたのでしょうか?
LAM 「ロードムービーをテーマに、60~70年代のアメリカンなイメージ」という要望がありました。そのうえで、作品のメインを張れるような、愛されるキャラクターを目指しましたね。なおかつ、彼女はムジカートではなくて人間なので、運命との差別化も図っています。
――ロードムービー感をデザインに反映した部分はありますか?
LAM カウガールっぽさを意識しています。パンタロンっぽい末広がりのデニムを履かせて、しかも旅の途中で破れたりすることもあるだろうと、ダメージ(破れ)も入れました。
――お気に入りのポイントはありますか?
LAM じつはアンナはめちゃくちゃお気に入りです。お姉ちゃん感、世話焼き感、アメリカンな世界観をすべて盛り込めたので、かなり手応えがあります。とくにポニーテールも含めた、髪の毛の感じが好きですね。ちなみにサングラスは、僕が所有するサングラスがモデルです(笑)。
巨人(タイタン)
――レニーのバディとして登場するムジカートです。
LAM G.マーラーの『巨人』は壮大で、ホルンが印象的な楽曲ですよね。発注の際には「タイタンは巨人だけど、幼い少女にしたい」という希望があり、面白いなと思いました。
――ギャップを作ると。
LAM 僕はこのキャラクターにLAMらしさを全面的に入れたいと思い、かわいらしいけど壮大、幼い見た目なのに歴史があるといったアンバランスさをコンセプトにしました。髪の毛にグラデーションを入れて、ツインテールの位置をチグハグにしています。
――衣装は黒で引き締まったデザインですね。
LAM そうですね。ショットガンで戦うので、ドレッシーというよりは猟師のイメージです。ただ、女の子の記号として大きなリボンはつけました。色合いも非常にカラフルで、画面を華やかにしてくれる存在になっています。そのことで、シリアスにもギャグにも対応する振り幅を持たせられればと思いました。
天国&地獄
――好対照なふたりは、同時にデザインしたのでしょうか?
LAM そうですね。オッフェンバックの『天国と地獄』を聞いたうえで天国要素、地獄要素に分けて再解釈をしました。コンセプト的には、天国は真面目に狂っていて、地獄は狂気的に狂っているという感じです(笑)。
――狂気的な面を強調して。
LAM そのうえで制作から「天国はしっかり者の風紀委員」という要望があったので、前髪をパッツンにして真面目さを出しました。加えて太腿が見えるようにスリットを入れたり、目元に花や水に見える化粧をあしらったりすることでセクシーさも追加しています。カラーリングは、天国というキーワードから三途の川が連想されたので、青を採り入れました。
――一方の地獄は、褐色のキャラクターです。
LAM 天国が黒髪で、地獄は銀髪にしたいと考えていたので、そうなるとこの色味が映えるかなと。衣装のメインカラーは、狂気性を求めてショッキングピンクにしました。ムジカートっぽいドレッシーな色味も欲しかったので、紺色を使って派手さを抑えています。
――パンツスタイルなのも特徴的です。
LAM 天国がスカートなので、対比的にパンツスタイルにしました。大胆に変形したスーツは、かっこよさを内包したセクシーさを出すために考えたものです。
――デザイン全体の作業を振り返って、新しいことができた感覚はありましたか?
LAM 自分が描いたキャラクターを他の素晴らしいクリエイターの方々に描いていただくのは初めてだったので、キャラクターが僕の手を離れて舞台の上を歩き続けているような感覚がありました。なので、アニメには「僕の描いたキャラクターが動いている」みたいな感動と「僕のキャラクターをすごい方たちに描いていただけている」という第三者としての目線のどちらもありますね。
――客観視しながらアニメを見ていると。
LAM そうですね。キャラクターデザイン自体に手応えもあるのですが、現場のスタッフの方々の素晴らしい仕事のおかげです。その意味では、作品に関われてうれしいという気持ちがいちばん強いかもしれません。
- LAM
- ラム イラストレーター。ゲーム会社に勤務後、2018年からフリーのイラストレーターとして独立。VtuberのデザインやCMのアートワークなどを手がける。『takt op.』ではムジカートのキャラクターデザインを担当。