TOPICS 2021.12.20 │ 12:00

『takt op.Destiny』のキャラクターメイキング
LAMインタビュー①

クラシック音楽の力を宿した少女=ムジカートと指揮者=コンダクターが、音楽を取り戻すために戦う姿を描いたアニメ『takt op.Destiny(タクトオーパスデスティニー)』。そのキャラクター原案を手がけたイラストレーターのLAMに、デザインのコンセプトを聞くインタビュー。前編は、参加の経緯とデザインの制作過程について。

取材・文/森 樹

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

曲への理解度を深めながら進めたムジカートのデザイン

――どのような経緯で作品に関わることになったのでしょうか?
LAM 2018年にDeNAさんから打診をいただいたんです。「クラシック音楽を題材に、主人公が音楽の力を宿した女の子たちと関係を深めていく様子をドラマティックに描きたい」という説明を受けました。僕がゲーム会社(アトラス)から独立して1年くらいのタイミングだったので、お声がけいただけたのはチャンスだと思いました。原案の広井(王子)さんとも打ち合わせさせてもらったのですが、僕自身が『サクラ大戦』など広井さんの作品に触れて育ったこともあり、感慨深かったです。

――メディアミックス作品ということも当初から伝えられていたのでしょうか?
LAM はい。ゲームとアニメで展開するということで、まずはゲーム版のキャラクターをデザインする作業から始めました。並行して、アニメ制作会社のMAPPAさんやMADHOUSEさんとも打ち合わせをし、アニメのムジカートたちもデザインしていくような流れでした。

――クラシック音楽を宿した少女たち(=ムジカート)が戦うという要素を、どのようにデザインに落とし込んだのでしょうか?
LAM 僕自身はクラシックに詳しいわけではなくて、曲は知っていても作曲者や曲名まではわからない程度でした。『運命』だったら「ダダダダーン!」という有名なフレーズはもちろん知っていましたが、キャラクターを作るにあたっては、まずは楽曲全体を通して聞き、作曲者や楽曲のバックボーンを調べて、曲への理解度を深めていく作業をしました。ただ、世界中の人たちに愛されている楽曲なので、僕の描いたキャラクターに全員が全員、納得するわけではないので……。

――『運命』に対するイメージはたしかに幅広いと思います。
LAM そこは悩んだのですが、DeNAさんから「LAMさんの『運命』を見せてください」と心強い発注をいただき、僕自身の解釈を全面的にアウトプットする形で進めました。普段から絵を描くときは音楽を流していることも多いので、そういう意味では今までやってきたことと何も変わらない作業であると気づいてからは、他のムジカートも含めてスルスルと描けるようになりました。もちろん、DeNAさんはじめスタッフの方々にフォローしていただいて、キャラの大枠の方向性や、デザインに反映できそうな要素はピックアップしてもらいました。

ムジカートたちの声は、僕が想像した通りでした

――アニメ版のデザイン作業はいつ頃からスタートしたのでしょうか?
LAM 2020年だったと思います。ゲーム版の準備を進めていくうちにムジカートのイメージも固まってきたので、アニメ版でも基本的なデザインの流れは一緒でした。ただ、ゲーム版とは登場するキャラクターも異なるので、アニメ版としてきちんとオリジナリティのあるビジュアルを作り出すことを意識しました。具体的には、アニメーションとして動かすことに適したシルエットや装飾を採り入れています。

――アニメで動かすことを考えてデザインしているわけですね。
LAM はい。アニメの制作においては、僕の原案を再解釈した長澤礼子さんのキャラクターデザインに合わせて、アニメーターさん、作画監督さんといったスタッフの方々が作画をするので。たとえば、アニメ版で最初に描いた運命のデザインは、衣装のニュアンスが違っていて、もう少し人形チックというかドールっぽい見た目をしていたんです。ただ、それだとアニメで激しい動きをさせるのが難しいものになっていました。それからは、アニメでもデザインの魅力が伝わる造形を、制作スタッフとやり取りしながら調整していきましたね。

――そのあたりはなかなか難しい部分であったと。
LAM そうですね。ゲームには花がたくさんあしらわれたスカートを履いているキャラクターもいますが、それを手描きのアニメで表現するのは難しいです。そういうゲーム版ではなかった制約を気にしながら、シルエットや配色、ヘアスタイルなどをデザインしていきました。その中でLAMらしさを残すにあたっては、引き算のデザインを意識しています。

――パーツやディテールを減らしていきつつも、自分らしさを残していく。
LAM あまりやりすぎると、ゲーム版のムジカートと並んだときに違和感が出るので、そこにも最大限気をつけながら制作しました。

――キャラクターの声がついたことで、イメージが変わった部分はありますか?
LAM 「このムジカートはどんなしゃべり方をするのかな」というのを想像しながら原案を描いていたのですが、役者さんの演技が素晴らしいのと監督の巧みなディレクションもあり、本当にイメージ通りでした。その意味では意外性もなく、バッチリハマっていたと思います。endmark

LAM
ラム イラストレーター。ゲーム会社に勤務後、2018年からフリーのイラストレーターとして独立。VtuberのデザインやCMのアートワークなどを手がける。『takt op.』ではムジカートのキャラクターデザインを担当。
作品情報

TVアニメ『takt op.Destiny』
好評放送・配信中

  • ©DeNA/タクトオーパスフィルハーモニック