TOPICS 2022.03.22 │ 12:00

『ワッチャプリマジ!』
ゲームとアニメをつなぐ「イリュージョン原案」の仕事①

「プリティーシリーズ」の4作目として放送中の『ワッチャプリマジ!(以下、プリマジ)』。本作の見どころであるライブシーンはどのように組み立てられているのか。アーケードゲームのプロデューサーを務め、アニメでも「イリュージョン原案」としてクレジットされている加藤大典氏に尋ねた。

取材・文/田中尚道

「イリュージョン原案」の仕事とは?

――ゲームとアニメの二軸で展開する作品ですが、ライブシーンはどのような流れで制作しているのでしょうか?
加藤 ゲームが原作なので、ベースはゲームのほうで作っています。作品内に登場するステージのデザインやライブシーンの特殊演出である「イリュージョン」、魔法の呪文の「マナマナマジパチュッピ」とか、あとはカードが登場したりとかいろいろな要素がありますが、ゲーム側で用意してアニメでも活かしてもらうかたちです。これまでの「プリティーシリーズ」の『プリティーリズム』『プリパラ』『キラッとプリ☆チャン』と同じです。

――加藤さんはアニメでは「イリュージョン原案」とクレジットされていますが、どのような役職なのでしょうか?
加藤 これまでは「協力」と入れてもらっていたんですが、今回はなんだか気持ちがざわついて、珍しい名前で入れたいと思ったんです。『KING OF PRISM』のときは「プリズムジャンプ原案」と入れてもらったんですが、「イリュージョン原案」は入れてもらうようにするまで2週間くらい悩みました。でも、今ではなんだか大変なことをやっていると思われている気がして……なんならすぐ消したいです。

――……そ、そうなんですか。
加藤 いえ、嘘です(笑)。先にも言ったライブシーンの後半に披露する特殊演出(=イリュージョン)、いわゆる「必殺技」をどういうものにするかを考える役目ですね。それはずっと担当してきたので「僕がやってるよ」ということを言いたくて入れてもらいました。「演出」というよりは「企画」や「構成」というほうが感覚的には近くて、こんなステージで、どのタイミングでドローンからカードを射出するとか、ここで呪文を唱えてイリュージョンに入る……というような流れを考えています。

「マジパチュッピ」は“Magical Power to the People”

――『プリマジ』でとくに見せたかったことは何でしょうか?
加藤 ライブという空間の熱狂です。ライブを見たり応援している時間って、魔法にかかっているように世界が変わって感じるじゃないですか。終わってしまうと現実に引き戻されるメリハリのある場所。それが『プリマジ』の“マジ”にかかっているんです。ライブの参加者みんなに魔法がかかっているような、元気と希望があふれた場所を作りたい。それにはいろいろなギミックが必要だよねということで、ライブが盛り上がると妖精さんが集まったり、観客のテンションが上がっている様子が「ワッチャ」というかたちで出るといいよね……とアイデアを出していきました。今の設定とは変わってきていると思うんですが、自分のなかでは「マジパチュッピ」は「Magical Power to the People」の略が発想の原点なんです。

――「Power to the People」というと、ジョン・レノンの?
加藤 そうです。ちょうど企画の進行がコロナ禍と重なって、人が街を出歩けなくなった。ライブもなくなってしまって、なんて世の中なのかと。それをちょっとでも勇気づけられる、魔法のような力があればいいなと思って。だから「Power to the People(=人々に勇気を)」なんです。そんなわけで、『プリマジ』のライブを見てみんなに元気になってもらえたらうれしいです。

――なるほど、それで『プリマジ』というタイトルになったのですね。
加藤 案では『プリフェス』とかいろいろあったんです。テレワークをしながら新しいシリーズのタイトルを「プリ、プリ、プリ……」とずっと考えていたのですが、僕は在宅だと仕事がはかどらない人間で。ある日も、ずっと部屋にこもって「プリ、プリ、プリ……」と考えていたのですが、これじゃいかんと思いまして。結局『プリマジ』はタカラトミーアーツさんからのアイデアだったので、まったく仕事になっていない。なので、テレワークをあきらめて、あるとき出社したら「マジパチュッピ」という言葉が降ってきて、おっ、呪文っぽくてわけのわからないイメージでいいぞ、と。そこから「イリュージョン」というテーマが出てきて、これをライブ中に繰り出す技にしよう、と考えがつながっていきました。

――当初の企画に「魔法」という要素はなかったのでしょうか?
加藤 「魔法」という要素自体は企画案にありました。ただ、ライブ中に飛び出す「イリュージョン」は、いわゆる杖を持った魔法使いが使うようなものではなく、「プリティーシリーズ」なりの魔法の表現ってなんだろう?と考えて見出したものになっています。僕なりの「イケてる魔法の雰囲気」とライブが融合したものという感じですね。

技術の進化と12年分のノウハウの蓄積

――長く続いているシリーズですが、制作環境の変化などはありましたか?
加藤 ゲームの環境でいうと、今回からゲームエンジンにUnityを導入して、過去よりも作りやすくなっています。ただ、それよりもチームにノウハウの蓄積があるおかげで、アイデアが出てからの動き出しが早いというか、最初に上がってくる素材の質が高くなっていますね。デザインにせよ、CGにせよ、全体的に高い水準になっていると思います。

――コーデのデザインにリクエストを出すことはありますか?
加藤 先に言ったように、12年間のノウハウがありますから、スカートの丈とか、細かな袖などの表現もそのノウハウの中でデザインしています。今回、ロングスカートがあるんですが、これはUnityを導入したことで実装できたアイテムですね。ダンスの動きに関しては、ときどき「アニメと違う」と言われたりするのですが、アニメの登場話数では可能だけど、ゲームだと別のコーデで動かしたときにモデリングが干渉してしまったりすることがありますから、ゲームではセーフティーゾーン内で動かしています。endmark

加藤大典
かとうだいすけ 1978年生まれ。愛知県出身。株式会社シンソフィア所属のゲームプロデューサー。『プリティーリズム』から始まるシリーズすべてに参加し、『プリティーリズム』の「プリズムジャンプ」や『プリパラ』の「メイキングドラマ」、『キラッとプリ☆チャン』の「やってみた!」などの演出を手がけている。
作品情報


『ワッチャプリマジ!』
テレビ東京系6局ネットにて毎週日曜10時00分より放送中!

 


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収録内容/TVアニメ『ワッチャプリマジ!』第1話~12話

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