Febri TALK 2021.10.18 │ 12:00

黒田洋介 脚本家

①メカの魅力に惹きつけられた
『宇宙戦艦ヤマト』

『僕のヒーローアカデミア』をはじめ、数多くの人気作に参加する黒田洋介。プラモデルやオモチャに夢中だった少年が、いかにして脚本家になったのか――そのアニメ遍歴を聞く連載インタビュー。第1回は、アニメブームを巻き起こした伝説の名作について。

取材・文/宮 昌太朗

当時、メカコレクションはほぼ全部買っていました

――今日は黒田さんのアニメ遍歴を伺おうと思うのですが、その前に黒田さんが脚本家を目指すようになったきっかけみたいなところを教えてください。
黒田 脚本家になったのは、本当に偶然なんです。当時、編集プロダクションでアニメ雑誌の記事やゲームの攻略本の原稿を書いていたんですけど、その流れでゲームのシナリオを書く機会に恵まれまして。それから、何本かゲームのシナリオを書かせてもらったんですけど、そのなかに藤島康介先生原作の『ああっ女神さまっ』のパソコン版ゲームがあったんです。それを作っていたのがAICスピリッツさん――アニメスタジオのAICさんのゲーム部門でした。で、『ああっ女神さまっ』の仕事が終わったあとに肩を叩かれて「アニメの脚本家が足りないから、やらない?」と。

――それがスタートだったんですね!
黒田 アニメの脚本に興味はありましたし、一度書いてみて、「使いモノにならん」と言われたら尻尾巻いて逃げればいいや、くらいに考えてお仕事を受けました。僕は「映像作家や脚本家になりたい」と思って、この業界に飛び込んだわけじゃないんです。だから、今回選ばせていただいた作品も、単純に子供の頃に好きだったアニメですし、脚本家志望の人にとっては何の参考にもならないインタビューになると思います(笑)。

――いえいえ!(笑)
黒田 僕は子供の頃からプラモデルとオモチャが大好きだったので、どれだけその作品に関するオモチャを買ったか。あとはビデオデッキのなかった時代に、どれだけテレビに紙を押しつけて、画面の絵を模写をしたか。そういう情熱の量みたいなところで、好きな作品を選ばせていただきました。アニメを作るにあたってタメになるようなことは、まったく言えないと思うんですけど、「こんなヤツでもクリエイターになれるよ」という希望にはなるんじゃないかと思います(笑)。

――あはは。そもそも子供の頃から、アニメや特撮番組を見ていたのでしょうか?
黒田 そうですね。僕には4つ年上の兄がいたので、幼稚園の頃から家に『週刊少年ジャンプ』が置いてありました。だから、アニメやマンガ、特撮に触れるのは、すごく早かった気がします。とはいえ、当時はまだテレビが一家に一台の時代ですから、チャンネルの主導権は兄が握っていて、僕は兄が見ている番組を一緒に見ている感じ。今回、1本目に挙げた『宇宙戦艦ヤマト(以下、ヤマト)』も、その流れで見た作品でした。

強いな、速いな、カッコいいな

『ヤマト』のメカニックには

それ以上の魅力的があったんです

――当時は何歳くらいだったのでしょう?
黒田 たぶん、6~7歳の頃だったと思います。おぼろげな記憶なんですけど、裏番組が『アルプスの少女ハイジ』で、僕は当然『ハイジ』が見たかったんです。でも、先ほども話した通り、チャンネルの主導権は兄が握っているので、サッと『ヤマト』に変えられる(笑)。それで第1話からずっと見ていて、戦闘シーンがすごいとかの記憶はあるんですけど、話はちんぷんかんぷんでした(笑)。よくおぼえているのは第4話、ヤマトがワープするシーンで、森雪が裸になる場面を見て「わぁ、エッチだ!」と。そこのインパクトはめちゃくちゃ強かったです(笑)。

――あはは。
黒田 ただ、そのときは本当にそれくらいしか印象がなくて。本格的にハマったのはその翌年以降、再放送のときですね。やっぱりプラモデルが出ると欲しくなるんですよ。本放送のときはプラモデルが3種類あるかないかだったと思うんですけど、再放送で人気が出て、劇場版が公開するとバーッといろいろなプラモデルが出始めて。当時、100円のメカコレクションが出ていたんですけど、それをほぼ網羅するくらい買って、片っ端から作っていました。まだ子供だったので、塗装といっても、油性マジックで艦底を赤く塗るくらいしかできなかったですけど、でもそれをお風呂に持ち込んで発進シーンを再現したり。今でもプラモデルを買ってしまうくらいなので、当時のヤマト体験は相当、鮮烈だったんじゃないかなって思いますね。

――ということは、キャラクターよりもメカにハマったという。
黒田 そうですね。『マジンガーZ』で言えば、兜甲児よりもマジンガーZ、『仮面ライダー』でもライダーよりオートバイのほうに気持ちがいくタイプだったので(笑)。だからまず、メカが好きだったんですよね。後に『スターウォーズ』やスーパーカーブームなんかもあって、当然のようにハマりました(笑)。メカが好きなのは本当に単純に「強いな、速いな、カッコいいな」という部分が大きかったのですが、『ヤマト』のメカニックはそれ以上に魅力的だったんですよ。なかでも好きだったのは、やっぱりコスモタイガーⅡの複座型。飛行機の背面のところにパルスレーザーがついている戦闘機なんですけど、すごく好きでした。大きいヤツを作って、小さいヤツもいっぱい作って――というか、ひとつ100円なので、5つくらい作って編隊飛行させていました。

――『ヤマト』の前からメカへの興味があったのでしょうか?
黒田 そうですね。それもやっぱり兄の影響なのかなと思います。兄がプラモデルを作っているのを見て、じゃあ僕も……みたいな。兄が大きい飛行機のプラモデルだったら、僕は100円くらいの小さいロボダッチみたいなものを買ってもらって、隣りで作って遊んでいる、みたいな感じでした。

――『ヤマト』は劇場映画と並行してTVシリーズも制作されましたが、そのあともずっと追いかけていたんですか?
黒田 そうですね。『完結編』まではがっつりリアルタイムで追いかけていましたし、TVシリーズはもちろん、スペシャル番組も見て、劇場公開前に深夜ラジオで特番をやっていたらカセットテープで録音して、とか(笑)。いわゆるオタク的な活動はひと通りやっていましたね。endmark

KATARIBE Profile

黒田洋介

黒田洋介

脚本家

くろだようすけ 1968年生まれ、三重県出身。脚本家。雑誌編集者、ライターを経て『天地無用!魎皇鬼』で脚本家としてデビュー。主な参加作品に『僕のヒーローアカデミア』『ガンダムビルドファイターズ』『機動戦士ガンダム00』など。