Febri TALK 2021.10.20 │ 12:00

黒田洋介 脚本家

②『機動戦士ガンダム』で加速した
ロボットやミリタリーへの興味

連載インタビューの第2回で取り上げるのは、当時、世間的に大ブームを巻き起こしていた『機動戦士ガンダム』。出版業界の裏側を知るきっかけになったという、この作品との出会い、そして当時の状況を振り返る。

取材・文/宮 昌太朗

ガンプラ・ブームがなければ、業界に入ることはなかったかも

――2本目に挙げたのは『機動戦士ガンダム(以下、ガンダム)』。これは、何歳のときに見ていた作品でしょうか?
黒田 小学校5年生のときに本放送が始まったと思います。おぼろげな記憶なんですけど、兄から「実際にあるようなライフルを使うロボットアニメがあるんだよ」と聞いて「なんだそれは!?」と思って見始めました。ただ、初めて見た回が「イセリナ、恋のあと」(第11話)で……。なんか話がジメジメしていて「ロボットがあんまり活躍せんなあ」って、ちょっと肩透かしを食らった感じが記憶に残っています(笑)。ただ、オープニングがめちゃくちゃカッコよかったので、次の週から見続けるようになって。そうするとストーリーも理解できるようになってきて、そこからは最後までガーッとハマった感じでした。

――『ガンダム』以前にもロボットアニメは放送されていましたけど、そちらは見ていたのでしょうか?
黒田 もちろん、見ていましたし、プラモデルも買っていました。ただ、僕はたぶんミリタリーものが好きなんですよ。巨大ロボットが出てきて合体して……というより、メカや兵器に機能性やリアルさが備わっているものが好きで。そもそも車や電車、飛行機なんかが好きだったので、やっぱりスペック的なものだったり、デザインにリアリティを感じさせてくれる作品が好きだったんだと思います。『宇宙戦艦ヤマト』や『ガンダム』はもちろん、そのあとの『超時空要塞マクロス』とか、ある程度SF的なバックボーンが練られた作品が好みだったんだな、と。今、振り返るとそう思います。

――そういう意味では一貫している。
黒田 そうですね……。メカに歴史背景を感じられるものが好きでしたね。ワンオフよりも量産機が好き、というか。『ヤマト』には試作型の戦艦もあれば、量産型の戦艦もあって、ああいう考え方はすごく理にかなっていたなと思います。

――それでいうと『ガンダム』でも、主人公機のガンダムより量産型のほうに心を惹かれたり……。
黒田 いや、そこはやっぱりまだ子供なので、アムロ・レイが乗っているガンダムがいちばん好きでした(笑)。とにかく強くなっていくじゃないですか。圧倒的に強くなっていく過程をワクワクして見ていました。しかも、アムロがニュータイプとして覚醒すると、今度はガンダムの性能が彼の能力に追いつかなくなる。あの設定がすごく好きで、その時点で僕のなかでは、ガンダムよりアムロが上にいっちゃうんです。「ガンダム、カッコいい」から「アムロ、カッコいい!」に変わる(笑)。だから最終回でガンダムの首がもげてしまっても、「しょうがない! アムロが生きてるんだからいい!」と。そんな考えで見ていましたね(笑)。

『ビルドファイターズ』で描いた

プラモを作る楽しみや

できあがっていく過程の喜びは

完全に自分の実体験ですね

――あとプラモデル好きとしては、やっぱりガンプラ・ブームも忘れられないと思うんですが……。
黒田 そうですね。再放送で『ガンダム』ブームが起きて、そこからどんどんバンダイさんが新製品のプラモデルを投入して。劇場版3部作が終わる頃まで、僕のなかでは途切れることなくガンプラ・ブームでした(笑)。新製品が出たら片っ端から買う、という。しかも当時よく行っていたプラモデル屋さんで、プロモデラーの方と会うんです。小橋法彦さんと藤川政秀さんという方なんですけど、ホビージャパンから出ていた『HOW TO BUILD GUNDAM』という特別増刊号の表紙を飾ったフルハッチ・オープンのガンダムの作例だったり、あとは『ホビージャパン』で初めてガンダムをジムに改造したりした方たちなんですけど。

――いわゆる有名モデラーですね。
黒田 そうです。その方たちと知り合ったことで、ガンプラ好きがさらに加速していきました。ずうずうしい子供だったので、小橋さんのお宅にお邪魔してプラモ・テクニックを教えてもらったり、プラモ制作の手伝いをしたり。……で、話は脱線するんですけど、小橋さんの手伝いをするようになって中学2年生のときですね。「このプラモの作例を届けておいて」と言われて、秋田書店におつかいに行くんです。そのときに編集部を見学させてもらったり――秋田書店にはマンガの編集部もあるので、マンガの生原稿を見せてもらったり、あとは「この映画、見たかったら行っておいでよ」と試写状をもらったり。

――今ではちょっと考えられないくらい、おおらかな時代ですね。
黒田 そうですね。とにかく、すべてが新鮮で、オタクとしてはめちゃくちゃありがたい経験をさせてもらいました。ガンプラ・ブームがなければプロモデラーさんに会うこともなかったでしょうし、出版社に行ったり、撮影に立ち会うこともなかったでしょうし。雑誌の作り方とか原稿の書き方とか、そういうことを学んだのも、あのときだった気がします。

――今のお話を聞いていると、ちょっと『ガンダムビルドファイターズ』っぽいものを感じますね(笑)。
黒田 たしかに……。『ビルドファイターズ』に関しては、まったく苦労せずに書けました。『ガンダム』やガンプラの資料をひっくり返す必要もないし、確認するとしても新しいプラモデルの設計図をチェックするくらいで。あとは脳内知識をフル・バーストさせながらガーッと脚本を書いていくだけ(笑)。それ以外にも、作品で描いているプラモデルを作る楽しみとか、できあがっていく過程の喜びとか、あと新しい武器をノートに書いてみたりっていうのは、もう完全に自分の実体験ですね。「そりゃやるでしょ、普通」「新しい武器は作るでしょ」「改造した機体に、自分スペック設定するでしょ」みたいな……。本当にそれくらいの気分で書いていました。endmark

KATARIBE Profile

黒田洋介

黒田洋介

脚本家

くろだようすけ 1968年生まれ、三重県出身。脚本家。雑誌編集者、ライターを経て『天地無用!魎皇鬼』で脚本家としてデビュー。主な参加作品に『僕のヒーローアカデミア』『ガンダムビルドファイターズ』『機動戦士ガンダム00』など。

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