Febri TALK 2024.06.19 │ 18:00

瓜生恭子 アニメーションプロデューサー

①オタ活への目覚めのきっかけ
『新機動戦記ガンダムW』

『SK∞ エスケーエイト』『BANANA FISH』『UniteUp!』『WIND BREAKER』といった数々のヒットアニメでプロデューサーを務める瓜生恭子が選ぶアニメ3選。1本目は、オタク活動にハマるきっかけとなり、初めて触れた『ガンダム』シリーズという意味でも印象深い『新機動戦記ガンダムW』。

取材・文/岡本大介

カトルの父親が死ぬ話数を見て、丸一日寝込んだ

――瓜生さんは子供の頃からアニメ好きだったのでしょうか?
瓜生 マンガや小説、映画、舞台など、さまざまなエンタメが好きすが、中でもアニメは幼少期から大人になるまで、一貫してずっと好きなジャンルです。いちばん古い記憶だと、幼稚園くらいのときに『キャッ党忍伝てやんでえ』が好きで主題歌をずっと歌っていたのをおぼえています。小学校低学年の頃は『絶対無敵ライジンオー』が好きで、やはり主題歌を歌っていました(笑)。

――クラスメイトとアニメの話で盛り上がったりも?
瓜生 もちろんです。クラスの中でも、私は深くハマっているほうだったと思います。小学校高学年になるとキャラクターの声優さんに興味を持ち始めて、ラジオやドラマCDを聞いたり、イベントに出かけるなど、アニメファンらしいハマり方をするようになりました。とくに小学6年生のときにハマった『新機動戦記ガンダムW(以下、ガンダムW)』は、その後の私のオタク人生を決定づけたような気がします。

――『ガンダムW』はリアルタイムで見ていたのですか?
瓜生 たまたまテレビで終盤の話数を見て、どんな作品かすごく気になって、夏休みにレンタルビデオを借りて一気見しました。最初はキャラクターから入ったのですが、味方だったキャラクターが物語の途中で敵になったりと、それまでに出会ったことがない展開に衝撃を受けて、どハマりしました。

――『ガンダム』シリーズを見るのは『ガンダムW』が初めてでしたか?
瓜生 そうなんです。子供の頃から名前は知っていたのですが、自分には難しいと思っていたので見ていなかったんです。でも、見てみたら面白くって。小学生だったのですべてを理解することはできませんでしたが、それでもインパクトは強かったです。物語の中盤で、主人公のひとりであるカトルの父親が死んでしまうエピソード(第21話「悲しみのカトル」)があるのですが、あまりのショックで丸一日寝込んじゃったくらい(笑)。アニメに限らず、エンタメ作品に触れて感情をこんなに動かされたのは、これが初めての経験だったと思います。

――だからこそ強烈に印象に残っているんですね。ちなみに好きなキャラクターは誰でしたか?
瓜生 デュオです。なので、好きなモビルスーツもガンダムデスサイズです。あと、女性キャラはみんな好きでしたね。それぞれがちゃんと自立していて強くて、いわゆる守ってもらう系のヒロインではないのが新鮮でした。中でもレディ・アンは強いし、キャラも濃いしで大好きでした。

――強いヒロインが好きなんですね。
瓜生 好きですね。小学校中学年の頃だと思いますけど、『幽☆遊☆白書』を連載中だった冨樫義博先生に人生初のファンレターを送ったことがあるんです。内容は「もっと強い女の子を出してほしい」っていう嘆願で(笑)。そのせいではないと思いますけど、そのあとで軀(むくろ)が登場して感動したのをおぼえています。『ガンダムW』に登場する女の子は姿形は違えどみんな強いので、すごく好印象として記憶に残っています。

キャラクターそれぞれに正義があって応援したくなる

――その他で印象深いシーンはありますか?
瓜生 第1話でヒイロが初対面のリリーナに対していきなり「お前を殺す」と言い放ったのには驚きました。『ガンダムW』ってインパクトが強いセリフが多いですし、登場人物のキャラクターが面白いぐらい濃いのですが、それぞれに正義があって、そこに真っ直ぐなので不思議と応援したくなる魅力があるんですよね。

――メカやバトルシーンはどうでしたか?
瓜生 メカのデザインやアクションよりも、コックピット内で聞こえるいろいろなSE(サウンドエフェクト)やメカの起動音などがとても好きでした。オープニング主題歌にもSEが入っていて、めっちゃかっこいいなと思いながら見ていましたね。手先が不器用なのでガンプラには手を出しませんでしたが、音響面はずっとツボに入りっぱなしでした。

――「オタク人生を決定づけた作品」とのことですが、『ガンダムW』からはどんな影響を受けましたか?
瓜生 具体的な活動としては、作品ファンとの交流です。それまではクラスメイトと話して盛り上がるだけだったのですが、それだけでは満足できなくなって(笑)。当時はインターネットもなかったので、アニメ雑誌などを介して文通相手を探して、それで手紙をやり取りしました。年齢も住んでいる場所もバラバラだけど、同じ作品への愛でつながった友人がたくさんできて、世界が一気に広がった気がしました。

――キャラクターについて、どんなことを話していたんですか?
瓜生 「このキャラとこのキャラの関係性がいいよね」とか「このシーンのふたりの会話、めっちゃ萌えるよね」というような、キャラ同士の関係についての話が多かったと思います。

――小学生にしてガッツリとオタクだったんですね。
瓜生 これまであんまり自分のことをオタクだとは言ってこなかったんですけど……認めるしかないですね(笑)。それもこれも、やっぱり『ガンダムW』と出会ったことが大きいと思います。「ひとつの作品に深くハマる」という感覚を体験させてくれたことに感謝ですし、私にとっての初『ガンダム』だったのも思い出深いです。おかげさまで、気後れすることなくオタク道を突き進むことができたような気がします。endmark

KATARIBE Profile

瓜生恭子

瓜生恭子

アニメーションプロデューサー

うりゅうきょうこ 2008年にアニプレックス入社。宣伝部から制作部へと異動し、プロデューサーとして活躍。プロデューサーを務めた主な作品は『UniteUp!』『BANANA FISH』『SK∞ エスケーエイト』『王様ランキング』『WIND BREAKER』など。