黒崎一護の軌跡と明かされたルーツ
死神として劇的なスピードで成長
『BLEACH』の主人公・黒崎一護。連載初期では、霊が見えること以外は普通の少年がたまたま朽木ルキアという死神と出会い、「虚(ホロウ)(※1)」に襲われたことでやむなく死神の力を譲渡されたと考えられていた。しかし、ストーリーが進むにつれて、一護の死神としてのポテンシャルはこれ以上なく高いものであることが判明する。一護のどこが特別なのだろうか? 今一度、彼の成長過程を振り返っていこう。
『死神代行篇』でルキアから死神の力を譲渡され「死神代行(※2)」となった一護は、現世に現れる多くの虚と戦うことで強くなっていく。その後、「尸魂界(ソウル・ソサエティ)(※3)」へと連れ去られたルキアを救い出すため、浦原喜助のもとで修業。自分自身の死神の力を目覚めさせることに成功し、斬魄刀・斬月を手に入れた。『千年血戦篇』にも登場する通称「斬月のおっさん」は、この修業の際に一護の精神世界に初めて登場した。
TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」Episode:13より
- (※1)虚(ホロウ) 生者・死者を区別なく襲い、魂を喰らう存在。もともとは普通の人間の魂だが、さまざまな原因により邪悪化し、現世に現れて人間に危害を加えようとする。虚を倒すことで、その魂魄を尸魂界へと昇華し、現世と尸魂界にある魂魄の量を均等に保つことが死神の大きな役割。
- (※2)死神代行 尸魂界から能力を買われ、死神としての権利を行使することができるようになった者。一護の場合は朽木ルキアから死神の力を譲渡されたことで、虚退治をするようになった。
- (※3)尸魂界(ソウル・ソサエティ) 死んだ者の魂魄が行き着く先で、いわゆる霊界。貴族や死神が住む瀞霊廷(せいれいてい)と、一般民衆が住む流魂街(るこんがい)に分かれている。
続く『尸魂界篇』では「護廷十三隊(ごていじゅうさんたい)(※4)」の十一番隊隊長・更木剣八との戦いで重傷を負い、さらなる力を求めたことにより、精神世界に通称「内なる虚(白一護)」が初登場し、斬月のおっさんの代わりとして一護の修業の相手を務めた。以降、一護の精神世界にはこのふたりが存在することとなる。さらには六番隊隊長・朽木白哉との戦いに備えて夜一に修業をつけてもらったことで、ついに「卍解(ばんかい)(※5)」を習得。白哉との戦いに打ち勝つ。
TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」Episode:13より
- (※4)護廷十三隊(ごていじゅうさんたい) 護廷十三隊の役割は、尸魂界の護衛や現世における魂魄の保護、虚の退治など、現代社会で言うところの警察や軍隊といった性質を持っており、まさに尸魂界の武力の要。
- (※5)卍解(ばんかい) 斬魄刀はその潜在能力を引き出すことで、より強い力を得られる。その究極が卍解であり、言わば自分だけの必殺技のようなもの。
『破面篇』では、内なる虚(白一護)がたびたび暴走してしまう問題を解決するため、「仮面の軍勢(ヴァイザード)」に修業をつけてもらい「虚化(※6)」を会得する。また、藍染惣右介との最終決戦に備え、父である黒崎一心との修行により「最後の月牙天衝(げつがてんしょう)」も習得し、結果としてこの技で藍染との戦いに勝利する。その代償として死神としての力を失った一護は、『死神代行消失篇』で「XCUTION(エクスキューション)」という組織と出会い、「完現術(フルブリング)(※7)」という新能力を獲得。その後、一護は自身の死神の力も取り戻したことで完全復帰を果たした。
- (※6)虚化 精神世界に生まれた虚の人格に飲まれるのを防ぐため、虚の人格を制御し、自在に力を発現できるようにした技。
- (※7)完現術(フルブリング) 物質に宿った魂を引き出し、使役する能力。完現術を持つ人間は「完現術者(フルブリンガー)」と呼ばれる。
一護は死神と滅却師のハーフ!?
一時期こそ死神の力を失った一護だが、ここまでは死神として順調に成長を続けてきたと言える。しかし、『千年血戦篇』では思いもよらぬ展開が待ち受けており、これまで知らされていなかった一護のルーツが明らかになっていく。そのきっかけは『千年血戦篇』第7話でのユーハバッハとの戦い。ここで一護は無意識ながらも「滅却師(クインシー)(※8)」の技である「静血装(ブルート・ヴェーネ)」を発動させる。ユーハバッハが去ったあと、一護は父・一心から、死んだ母親が滅却師であったことを伝えられる。つまり、一護は死神の父と滅却師の母から生まれた子供だったのだ。
TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」Episode:11より
TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」Episode:11より
- (※8)滅却師(クインシー) 虚と戦い殲滅(せんめつ)することを目的とする集団。死神が自らの霊力で戦うのに対し、大気中の霊子を集めて己の力とするなど、戦闘スタイルは死神と大きく異なる。200年前、死神たちの手によってほとんどの滅却師は殺されている。
『千年血戦篇』は怒涛の伏線回収!
さらに衝撃の事実は続く。『千年血戦篇』第13話では、ずっと一護の精神世界にいた斬月のおっさんが、本当は斬魄刀の化身などではなく、一護の身体の中に宿っていた滅却師の力だったことがわかる。さらに、修業のために生み出していたと思われていた内なる虚(白一護)こそが、じつは本物の斬月だったことも。すべては一護を想ってのことだと告げた斬月のおっさんは「これ以上の幸せがあるものか。満足だ」と言い残して消滅する。一護はふたりに対して「ありがとう斬月。あんたは俺だ」と感謝の意を表し、真の『斬月』たちを手にすることとなった。
一護に関する謎が次々と解明されていく『千年血戦篇』。『破面篇』において、それまで一般人だと思われていた父・一心が、かつて死神だったことが明かされた瞬間も衝撃的だったが、さらに胸熱な展開が続く。今回の記事で状況を整理しつつ、7月からの2クール目を震えて待て!