TOPICS 2024.02.05 │ 18:00

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』
小林千晃に聞いたアニメ版・安達の演じかた①

原作コミックの売上が累計280万部を突破し、2020年の実写TVドラマも大ヒットとなった『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(以下、チェリまほ)』が待望のTVアニメ化。主役の安達清を演じる小林千晃を直撃したインタビューの前編では、「触れた人間の心が読める」という特殊設定だからこその苦労と楽しさについて聞いた。

取材・文/清水素子

安達は現代に生きる等身大の30歳

――まずは安達清役に決まったときの感想を聞かせてください
小林 僕はオーディションで安達しか受けていなかったので、うれしさは大きかったですね。オーディションを受けるときに原作を読ませていただきまして、女性向けの作品ですが、男性が読んでもとても面白かったんです。主人公の安達は自分に自信のない人物であり、かつ題材がオフィスラブというあたりからも、現代に生きる等身大の30歳だと思っていて。加えて魔法が使えるというファンタジー要素もある。このリアリティとファンタジーの中間というのが、他の作品にはないドラマ性であり、魅力だなと思っています。

©豊田悠/SQUARE ENIX・アニメ「チェリまほ」製作委員会

――普通であれば見ることができない相手の本心が見えることによって登場人物たちの人間関係が変わっていくのが『チェリまほ』の面白さですよね。安達というキャラクターを演じるに際して、どんな風に解釈しましたか?
小林 ファンの方々の反応を見てみると、実写ドラマ化もされているので、作品自体はすでに知っている方が多かったんです。そのため、キャラクターに対するイメージは固まっているだろうから、「これもアリだな」と感じてもらえるような安達にしたいと考えました。アニメではまた表現方法が違ってくるので、マンガやドラマに引っ張られないことが重要だなと。

――具体的に言うとどういうことでしょうか?
小林 安達はうだつが上がらなくて、要するにモテない男。そうなるときっとボソボソしゃべるだろうし、人とのコミュニケーションも得意じゃないだろうから、どちらかというと陰気な雰囲気を出したいなと考えました。彼が生きてきた30年の間に一体何があって、こんなに自信を失ってしまったのだろうというところを意識しながら演じましたね。

ただ、黒沢というモテる奴……つまり、恋愛に限らずたくさんの人と付き合ってきた人物に好かれるからには、安達には顔がかわいいとか優しいだけではない魅力がきっとあるはずだろうと。だからネガティブなだけではなく、理由のあるネガティブであることが伝わるように気をつけて演じました。安達が黒沢に愛される理由を表現したかったんです。

©豊田悠/SQUARE ENIX・アニメ「チェリまほ」製作委員会
©豊田悠/SQUARE ENIX・アニメ「チェリまほ」製作委員会

――黒沢優一役の鈴木峻汰さんとの対談記事では「安達は、じつはとても優しくて情が深い」とコメントしていましたよね。
小林 安達って誰かが困っていたら率先して助けようとしたり、意外と人のために動いているんです。だからこそ部下や後輩からも慕われるのだろうし、黒沢が安達を好きになるきっかけもそう。普通の人なら見過ごしてしまうようなところまで深く見ている、観察能力の高いところが彼の優しさにつながっていると思います。

安達と黒沢の心の機微を感じ取ってほしい

――黒沢の内心に触れて戸惑いながらも、心を読むことで黒沢の魅力を知り、結果的に黒沢との距離が縮まっていくというのが『チェリまほ』の肝ですよね。
小林 そうですね。人の心が読める能力は、悪用することだってできると思うんです。実際、安達も相手の欲しいものを探るのに能力を使っていましたが、それも黒沢や他人のため。安達の能力の使い方からは、彼の不器用さだとか、勝手に自滅しちゃうかわいさも表現されているように感じました。また、この能力を通じて安達と黒沢の距離が少しずつ近づいていく様子が『チェリまほ』では本当に丁寧に描かれています。精一杯お芝居をしているので、心の機微みたいなものを感じ取っていただけたらうれしいですね。

©豊田悠/SQUARE ENIX・アニメ「チェリまほ」製作委員会

――触ると人の心が読めるという設定上、流れ込んでくる他人の気持ちに対してリアクションを取ったりする場面も多いと思うのですが、苦労はありませんでしたか?
小林 これまでに出演したほかの作品で心を読む魔法の100倍ぐらい非現実的な魔法を使ってきたので、あまり悩まなかったかもしれません(笑)。大地を割ったり、何にもない空間に水を出したりするような「ザ・魔法」な行為に比べたら、心を読む魔法は相手がちゃんとビックリしたり、何かしら反応をしてくれるので、その辺りもやりやすさにつながっていたのではないかと。

――たしかにそうですね!(笑)
小林 ただ、おっしゃる通り、安達のセリフってモノローグでツッコむ部分と、普通の会話がわりとシームレスに進行していくんです。普通に会話したり叫んだりするセリフと、心のセリフが交互にくることもあるので、喉がなかなか落ち着きませんでした。あとはかけ合う相手がどんどん変わっていくので、会話しているのかそれともモノローグなのかが混乱しやすいという大変さもありましたね。でも、毎回のアフレコはすごく楽しかったです。

©豊田悠/SQUARE ENIX・アニメ「チェリまほ」製作委員会

――具体的にはどんなところが楽しかったですか?
小林 黒沢役の鈴木くんがアドリブいっぱいでモノローグを演じてくれたり、藤崎希役の小清水さんが思いっきりギャップを見せてくれるので、まわりの役者さんとのお芝居感がすごく楽しかったですね。コロナ禍の影響もあって4~5人でのアフレコだったのですが、小人数な分、先輩のお芝居をたっぷり堪能できたのもうれしかったです。鈴木くんは僕より年下ですけど、役でもお芝居でもすごく落ち着いてリードしてくれましたし、お互いアフレコ現場にどんなものを持ってきて、どんな表現をするんだろう?というのが楽しみのひとつでもありましたね。endmark

小林千晃
こばやしちあき 6月4日生まれ、神奈川県出身。大沢事務所所属。2017年に声優デビュー。主な出演作は『マッシュル -MASHLE-』(マッシュ・バーンデッド)、『葬送のフリーレン』(シュタルク)、『憂国のモリアーティ』(ルイス・ジェームズ・モリアーティ)など。
作品情報

TVアニメ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』
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  • © 豊田悠/SQUARE ENIX・アニメ「チェリまほ」製作委員会