スペイン編はファンの期待に応える映画に
――小田桐さんがプロデューサーとして『だかいち』に携わって、他のジャンルと違うと感じたことは何でしょうか?
小田桐 いちばん大きかったのは絡みのシーンをどう描くか。性的な表現は局による考査があり、そこをクリアしなくてはいけません。「朝チュン」レベルの表現もできれば、ギリギリの表現もできる。いろいろな選択肢があるなかでどう料理していくかは考えました。
――そこは可能な限り原作準拠にしたというお話でしたね。
小田桐 お客さんのことを考えたとき、なるべく絡みのシーンを入れたいですからね。さきほどの表情の話も含めてファンの方はきっと見たいだろうし、ベッドの上でストーリーが進んだり、いいセリフを言ったりするので、やっぱり外せないんです。スペイン編でも准太が高人の手を縛る絡みのシーンがあって、准太の昂(たかぶ)りを表現しています。
――ドキドキしたり、キュンとしたり、笑えたり、かと思えばシリアスな場面もある。そういった落差で感情が揺さぶられる作品だと思います。
小田桐 いい意味で人間らしいキャラクターたちですよね。美しいけれど、美しいだけじゃない。ときにドロドロすることもあり、ドロドロが「性」に向くときもあれば、芸能界の仕事の中であらわれるときもあって。桜日先生のセリフも「この先ずっと一緒に生きる為には、ずっと一緒じゃだめだ」など、哲学的な言葉が多いんですよね。
――小田桐さんのなかで印象に残っているキャラクターは?
小田桐 准太と高人がいちばん好きですが、あまりに完璧なカップルすぎるので遠目から応援しています(笑)。TVシリーズのときは綾木(千広)も応援していました。スペイン編だと卯坂(和臣)と在須(清崇)がミステリアスな大人の関係で気になりますね。
――綾木についてはどうでしたか?
小田桐 綾木はもう、不憫だなって(笑)。不憫だけど、彼がいることでひと悶着あって准太と高人の関係が発展したり、絆が深まったりして、恋仲を深めるのに大切なキャラクターなんですよね。ちょっかいはかけてくるけど憎めない、いいポジション。そこは桜日先生のキャラづくりの絶妙さだと思います。ただ、綾木は劇場版ではワンシーンくらいしか登場していないので、劇場版から作品に触れられた方にはぜひTVシリーズの綾木も見てほしいです。
――すでに劇場版を見たファンからは「感動した」「かわいかった」の感想もありますね。今後の『だかいち』の広がりも楽しみです。
小田桐 後半は音楽も含めて盛り上がって、高人ががむしゃらに踊るフラメンコのシーンは本当に心に湧き上がってくるものがあります。フラメンコのシーンではキャラクターそれぞれの色が出ていますし、絡みのシーンもしっかりあるのでご期待ください。原作やTVシリーズから追いかけてくださっているファンのみなさんには、劇場でストーリーや空気感、表情にどっぷり浸かりながら、彼らの心情を追いかけてもらえたらうれしいです。
- 小田桐成美
- おだぎりなるみ 株式会社アニプレックス所属の制作プロデューサー。『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』『空の青さを知る人よ』『ヴァニタスの手記』などのプロデュースに携わる。