TOPICS 2021.10.25 │ 12:00

プロデューサーが語る
『劇場版 抱かれたい男1位に脅されています。~スペイン編~』の魅力

2018年にアニメ化された、桜日梯子(さくらびはしご)原作の大ヒットBL『抱かれたい男1位に脅されています。(以下、だかいち)』。反響を呼んだTVシリーズから3年、スペインを舞台にした映画『劇場版 抱かれたい男1位に脅されています。~スペイン編~』が公開中だ。原作の人気をさらに高めたアニメを企画・プロデュースしたのは、プロデューサーの小田桐成美。小田桐をときめかせた『だかいち』の魅力を聞いた。

取材・文/川俣綾加

骨太ラブストーリーで間口の広いBL

――TVシリーズを振り返って、小田桐さんが原作を読んで『だかいち』をアニメ化したいと思ったポイントは何でしたか?
小田桐 ラブストーリーとして胸キュンするポイントがそこかしこに散りばめられ、コミカルなやりとりも多くてクスッとできる部分もありました。芸能界が舞台だから俳優としての葛藤や成長も描かれ、いろいろな感情を味わえる王道エンターテインメントとしてすごく楽しめたんですよね。桜日先生が描くキャラクターの造形も美しいし、間口の広いBL作品だと感じました。

――放送がスタートして、反響はいかがでしたか?
小田桐 コアなファンはもちろん、普段はBLを読まない人まで楽しんでもらえるといいなと思っていたのですが、実際には女性だけでなく男性も楽しんでくれたようで、それは少し意外でした。

――男性からの反響もあったんですね。
小田桐 割合でいえばわずかではありますが、先行上映会などのイベントに男性ファンの姿が見られたのはうれしかったです。『だかいち』は(東谷)准太と(西條)高人の絡みのシーンも魅力ですが、男女問わず惹きつけられるのは、作品自体にラブストーリーとしての強さがあるからだと思います。

――第1話の准太と高人のラブシーンは、原作をストレートに表現していくのだという気概を感じました。
小田桐 原作準拠のストーリーラインで進めるにあたり、そこはふたりが愛情を深めるシーンとなるので大切でした。とはいえ、局による考査もあるので、やりすぎてしまうと放送できなくなってしまう。事前に絵コンテなどを見ながらチェックして「ここまでなら大丈夫」というラインを模索していたので、「エロくしよう」というよりはむしろ逆のつもりでやっていたんですよ。もしかしたら、それで逆にエロくなったのかもしれません(笑)。TVシリーズ放送中にリアルタイムでTwitterを見ていたのですが、ラブシーンへの反響もすごく大きかったですね。

――さきほど小田桐さんがお話ししたように、コミカルなやりとりや俳優としての葛藤も魅力です。ドラマが骨太ということですね。
小田桐 恋して想いが通じ合ったふたりであり、俳優として成長していくうえでも、お互いがなくてはならない存在。過去も現在も共有しながら過ごしていく運命の相手との出会いを果たしているんですよね。それって本当に特別なことだと思うんです。

「エロい」だけでなく「美しさ」と「感動」を

――劇場版はどういった経緯で制作が決まったのですか?
小田桐 原作(第6巻)のスペイン編を読んで「これを映画館で見たい」と感じました。スペインの風景や街並みを大きなスクリーンで見られたらきっと面白いはずだと桜日先生に相談しました。今回、先生には設定や資料をお借りするだけでなく、シナリオの打ち合わせなど全体を通して監修に入っていただきました。

――ロケハンはどのように行ったのでしょうか?
小田桐 以前、桜日先生がマンガを描くためのロケハンでスペインを訪れていたので、その際に先生が作った資料をお借りしました。その他に、フラメンコのシーンをロトスコープ(※)で作画するために参考用の動画を撮らなければいけませんでした。日本人のフラメンコダンサーで撮る案もありましたが、音楽の横山克さんにお話ししたら、フラメンコギターを使った楽曲の発注もあったので、スペイン現地でダンサーの撮影と楽曲をリモート収録することになったんです。なので、音楽と相まってとても迫力あるシーンになっていると思います。

(※) 撮影した実写の映像をトレースして作画し、アニメーションにする手法

――音楽だけでなく、美術もスペインの空気を感じられて、そのなかで准太と高人のさまざまな表情が描かれているのが印象的でした。
小田桐 表情に関しては、原作でのラブシーンにおけるふたりの表情がぐっとくる絵ばかりで、いい意味で生っぽいんです。そこを丁寧に拾ってアニメでも再現することで、生々しいだけのラブシーンにならないように気をつけています。「感じているのは伝わるけれど、美しくもある」みたいな。とくに高人は普段の顔とベッドの上とで表情の変化が大きいので、しっかり差別化できるようにしています。龍輪(直征)監督やキャラクターデザインの芝(美奈子)さん、川口(千里)さんをはじめ『だかいち』の原作が好きなスタッフがそろっているので、作中でどの場面が大切か、どの表情を描くかを丁寧に見て作画しています。

――表情だけでなく、身体つきもしっかり描かれています。
小田桐 身体に関しては全キャラクターそうですね。桜日先生も鎖骨や手にこだわって描いているので。たとえば、アントニオの体型はけっこうガッシリしているのですが、ただ大きいだけではなく逆三角形の体格でとてもセクシーな筋肉のつき方をしています。セクシーさとリアルさのバランスは桜日先生の描き方を参考に、アニメでも再現するようにしていますね。

――美しさといえば、TVシリーズでもラブシーンなどで准太から天使の羽が舞って「きれい」「かわいい」と感じました。
小田桐 そう感じてもらえるように作ることは、龍輪監督を含めてスタッフみんなの共通認識でした。ラブシーンは劇場の大画面で見るとテレビサイズと違ったインパクトがありますし、閲覧の年齢制限もないので、音楽を含めてスッと入っていけるように意識しています。とくに後半の絡みのシーンはただの「エロい」ではなく、感動的な気持ちになれるような場面になっていますね。

作品情報

『劇場版 抱かれたい男1位に脅されています。~スペイン編~』
絶賛公開中

  • ©桜日梯子/リブレ 2021/DO1 PROJECT