夢芽のビジュアルは好きな部分と少し嫌いな部分を入れました
――南夢芽ですが、彼女のキャラクターはどのように作っていったのでしょう?
雨宮 お姉さんを亡くした女の子というところが、最初に決まっていたんです。お姉さんが亡くなった原因を探る、ということだけが決まっていて、あまりキャラクター性は考えていなかったですね。ただ、それだけだとお話を転がしにくいということになって。そのときすでに蓬のバイト先の先輩――今の稲本さんにあたるキャラクターのアイデアを脚本の長谷川(圭一)さんが配置していたんですね。彼女の性格が今の夢芽の原型になっています。
――ちょっと何を考えているかわからない女の子、という。
雨宮 そうですね。決してメインキャラ向きの性格ではないんですけど、それを夢芽に当てはめてみてはどうか、という意見が設定制作の栗原(建)君から出たんです。で、それはちょっと面白そうだな、と。そこがスタート地点だったと思います。
――ビジュアル面はいかがですか?
雨宮 当初、僕が想定していたビジュアルは今の夢芽の姉(香乃)だったんです。ただ、デザインとしてはちょっと弱い、という話になったんですね。六花やアカネと比べられてしまうのは予想していて――そこと戦うわけじゃないですけど、差別化するときに、好きな部分とちょっと嫌いな部分を入れよう、と。
――監督の好みが反映されているということですか?
雨宮 僕だけではないですけど、そういうことですね。たとえば、トレーナーを着せると、絵としてはちょっと弱くなるんです。なので、メインキャラクターに着せることはあまり多くないと思うんですけど、でもトレーナーはかわいいからやりたい、みたいな。その一方で夢芽にはちょっと嫌いなところも入っていて。具体的にいうと、前髪のボリュームですね。本編ではあまり表現されていないかもしれないですけど、キャラクター設定だと前髪は本当に軽く描いているんです。その前髪の隙間からおでこが見える、今の若い人がやっているような髪型になるといいな、と。
――キャラクターデザインの坂本さんともやり取りをしたのでしょうか?
雨宮 やり取りしました。とはいえ、絵柄を模索するところからのスタートだった前作と比べると、今回は絵柄はすでに決まっているので。そこから大きく外れない範囲内でルックスを探る感じでした。2作目になって、多少フレキシブルにはできたかなと思っています。
ちせが物語を動かしてくれました
――なるほど。次は、ダイナゼノンチームの飛鳥川ちせについて聞かせてください。彼女はどのあたりから着手したのでしょうか?
雨宮 最初はそれこそ、飴を噛む仕草くらいしか決まっていなかったですね。メンバーとして「いること」しか決めていなくて、役割をとくに考えていなかったんです。そうこうしているうちにダイナゼノンのデザインを手がけている野中(剛)さんから、ゴルドバーンのデザインが上がってきたんですよ。もともと僕からはゴルドバーンにあたる怪獣のデザインを発注していなかったんですけど……。
――デザイン作業を進めていくなかでゴルドバーンが出てきた。
雨宮 そうなんです。で、せっかくならちせをゴルドバーンの担当にしよう、と。それでちせの立ち位置が決まったところがあります。だから、ちせに関してはヒロインだとも思っていなかったんですよね、申しわけないことに。
――いえいえ(笑)。あくまでもメインヒロインは夢芽だったわけですね。
雨宮 ただ、主人公チームには話をかき回してくれる人が、ちせ以外いないんですよ。どちらかというと受け身の人が多いので、ちせがいないと話が回らないな、というのはありました(笑)。
――ちせは不登校だったりしますが、彼女のバックグラウンドはどうやって決めたのでしょうか?
雨宮 これはちせ以外にも共通しているところなんですけど、蓬を除いてほかのキャラクターは、みんな「うまくできていない人が最終的にちょっとだけできるようになる」、そういうイメージで考えていました。社会とうまく折り合えていない人が、ちょっとだけできるようになる。それくらいの成長が描けたらな、と。たとえば、働けるのに働いていない暦が、最後にはちゃんと働くようになる、みたいな。
――ああ、なるほど。
雨宮 とはいえ、最終的に「ちせは学校に行けるようになりました」というふうにはしたくなかったんです。彼女はまだまだ若いわけで、まだ時間はあるだろう、と。そういうところから、今の形になったと思います。あと彼女が不登校という設定になったのは、自由に動ける人がほかにいなかったから、というのもあるんです。要するに、自由に動ける人がロボットの近くにいないと、なかなか4人そろわない。
怪獣に興味のないムジナとミステリアスな2代目
――次は敵となる怪獣優生思想のムジナですね。性格づけについてはいかがですか?
雨宮 方向性としては六花と近いところがあると思うんですけど「怪獣自体に興味がない」というところがスタート地点で。でも、それが途中から少しずつ変わってくる。社会人みたいな感じというんですかね。とりあえず仕事だから続けていたら、ちょっとつかめたことがある、みたいな。六花もそうでしたけど、見た目はクールなんだけど、中身はそういうわけじゃない、というのがいいかな、と。
――もうひとり、ナイトのサポート役である2代目も、魅力的なキャラクターでした。キャラクター的にも、ちょっと抜けた感じがあって面白かったですね。
雨宮 しっかり仕事ができる人ではあるんですけど、根本がちょっと抜けている。そこが魅力になるといいな、と。頼りがいはあるんだけど、根本を信用していいのかわからない、みたいな(笑)。そういう部分がミステリアスに映るといいかなと思っていました。
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- ©円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会
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