「ここから新しい『ガンダム』が始まる」というムードがあった
――アフレコ当時から『SEED』の人気の高さは実感していたのでしょうか?
保志 最初はわからなかったですけど「21世紀のファーストガンダム」ということで、何かひとつリセットして臨めた作品なのかなと思いますね。「ここから新しい『ガンダム』が始まるんだ」というムードがあって、客層も若い男女のお客さんがついてくださって。僕個人としても、声優人生が良くなってきた時期だったので、相乗効果を感じていました。
石田 アフレコ中に作品人気を実感することって少ないのですが、『SEED』に関しては女性人気が高いということを収録の現場で聞いていました。その理由を分析しようとは当時思っていませんでしたが、何にせよ世間に受け入れられている、『ガンダム』作品として人気が出ていることには安心しました。少なくとも「お前じゃない」とは言われなかった(笑)。
保志 そんなことまで考えていたんですか?
石田 アスランというキャラクターが「こういうヤツがガンダムに乗ってほしくない」と思われずに済んだ。また、「俺たちの求める『ガンダム』はこれじゃない」とも言われなかった。注目されて人気になった作品だからこそ、アスランへの評価は気になりましたし、彼の存在があまり否定されなかったことはありがたかったです。
――その後、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY(以下、DESTINY)』にもつながっていったわけですから、『SEED』は求められ、そのキャラクターたちも受け入れられたということですよね。
保志 僕はキラで良かったと思います。オーディションではアスランも受けていたので、アスランに選ばれていたら「お前じゃない」って言われたろうなぁ(笑)。
石田 (笑)。
保志 アスランをやりこなせる自信がないですね。良くも悪くもピュアな状態でキラに臨めたのが良かったです。キャリア的にも。アスランだったら荷が重すぎる(笑)。石田さんで良かったですよ。
石田 ありがとうございます。僕もキラだったら、いろいろ言われていたはずですよ。
保志 作品によっては「俺たち逆じゃない?」と思うことはありますからね。「えっ、俺がこっち?」みたいな。
石田 それはそうだね。「この元気キャラを……?」みたいなことはあります。
保志 たとえば、『最遊記』シリーズで僕が猪八戒だったら荷が重すぎる。
石田 それはないよ(笑)。
――おふたりは『SEED』や『最遊記』シリーズが同時期にあり、そのあともいろいろな場面で共演していますよね。
保志 そうですね。20年、こうしてやらせてもらえるキャラクターはありがたいです。だからこそ、最初のキャスティングが重要だなって思います(笑)。先輩が役柄の中でも先輩をやっていたりするとやりやすいですし。
石田 そうですね。
アスランはキラがいるから、なんとかやってこられた
――『SEED』のおふたりの役は、そのあとの『DESTINY』だけでなく、ゲームやイベントでも声を収録することが多いですよね。
保志 たしかに最近もゲーム用に収録しましたし、毎年何かしらキラを演じることはありますね。僕としては、TVシリーズでやっていたものが正解というか、すべてだと思うのですが、今収録するときは、あの頃のキラを無理に再現しようとは思っていないんです。
――それが役と長く付き合っていくうえでの心構えなのでしょうか。
保志 それもありますし、声優として成長している部分をそのときどきで出していきたい。やっぱり当時とまったく同じようにはできないわけだし、まったく同じでやるのも面白くないじゃないですか。そのときの、ちょっとでも進化した部分を盛り込めたらなといつも思っていますね。
石田 僕は変えないようにするのが理想だと思っています。でも、変わっちゃいますよね。それを保志くんみたいに、潔くそのときそのときの自身を反映して、みたいな宣言というか、割り切りはできない性格です(笑)。あがいてはいるんですよ。
保志 僕は逃げかもしれないです(笑)。でも、声質自体が変わってしまっているので。あのときのキラのキーでやろうとすると、逆に演じ方が変わってしまうんです。
――逆にそれが違和感に。
保志 単純に音を近くしても、芝居が変わってしまう。その折衷案はいつも難しいなと思っています。それが長くできる声優という職業の特徴ではありますし、声質が変わらない人もいますから。
――では、最後に20周年を記念して新たなBlu-ray BOXが発売されることへの感想をお願いします。
保志 先日、Blu-ray BOX用のオーディオコメンタリーの収録があって、久々に石田さんやラクス役の田中理恵ちゃんと『SEED』について話をしたんです。同窓会みたいで非常に楽しかったんですよ。
石田 そうですね。当時の記憶は薄れているな、と思いながら収録に臨みましたが、他のキャストの皆さんと話しているうちに思い出すことがけっこうありました。オーディオコメンタリーには2本参加したのですが、保志くんが両方にホストとしていてくれて。心強いなと思いましたし、本当にアスランとキラってこういうことなんだなと。アスランはしっかりしていると言われているけれど、何かやろうとしても結局うまくいかない。キラがいるからなんとかなっている。
保志 いやー、僕なんかこれまで頼りになるなんて言われたことがないのに、石田さんに頼りになると言ってもらって……これが20年という重みってやつでしょうか(笑)。とてもうれしいですね。
- 保志総一朗
- ほしそういちろう 声優、歌手。アーツビジョン所属。『機動戦士ガンダムSEED』の Complete Blu-ray BOXに収録されている新規オーディオコメンタリーには3度出演。当時を振り返るトークを行っている。
- 石田 彰
- いしだあきら 声優。ピアレスガーベラ所属。『機動戦士ガンダムSEED』や続編『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のみならず、『最遊記』シリーズでも保志総一朗と長年共演している。
『機動戦士ガンダムSEED』HDリマスター Complete Blu-ray BOX (特装限定版)
<発売日>
2022年3月29日(火)
<品番>
BCXA-1701
<価格>
44,000円(税込)
・21世紀の”ファースト”ガンダムとして社会現象を巻き起こした大ヒットシリーズを、TVシリーズ放送20周年に向けて1BOXで発売!
・2012年発売「機動戦士ガンダムSEED HDリマスター Blu-ray BOX」初回限定版全4巻の全話・全特典内容をコンプリート収録!
・新規映像特典として次回予告集や福田己津央×T.M.Revolution/西川貴教 スペシャルトーク映像、そして新規封入特典として特製ブックレット(36P)を収録!
・WEB投票より選定された人気エピソード、計4話を新規収録オーディオコメンタリー Complete BOX版として新規収録!
・キャラクターデザイン・平井久司&チーフメカ作監・重田智描き下ろし収納ボックス
・平井久司描き下ろしデジスタックジャケット
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