TOPICS 2022.02.23 │ 12:00

オンエアから10年――
『機動戦士ガンダムAGE』の“挑戦”を振り返る①

2011年~2012年に放送された『機動戦士ガンダムAGE』(以下、AGE)。本作がガンダムシリーズの中でも“異色”と言えるのは、従来の枠組みにとらわれない、多くの“挑戦”をしたからに他ならない。ここでは当事者の言葉をお借りしつつ、全3回で『AGE』の“挑戦”を振り返ってみたい。第1回は、企画・宣伝面の“挑戦”について。

取材・文/森 樹

※当事者の言葉は『機動戦士ガンダムAGE』Blu-ray Boxに収録されたインタビューより引用

「三世代100年の戦い」、その舞台裏

『AGE』は、いわゆる「日5」(にちご。毎日放送制作の日曜夕方5時枠のアニメ)で、OVA『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』シリーズが劇場での期間限定上映を断続的に行っていた時期(2010~2014)に放送された。TVシリーズとしては『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』の次の作品にあたる。また、『AGE』は現状、テレビで1年間(4クール)連続放送を行った最後のガンダムシリーズとしても知られる。4クールで「三世代100年の戦いと家族を描く」という壮大な物語が骨子としてあるわけだが、まずはその企画の成り立ちとメディア施策について“挑戦”というキーワードを軸に見ていこう。

子供にも視聴者層を広げる作品作り

『AGE』は、さまざまな面でこれまでのガンダムシリーズではやっていなかったプロダクトや表現にチャレンジしている。中でも制作側・プロデュース側がひとつの軸にしたのが、「子供にも年齢層を広げた『ガンダム』にしたい」というコンセプトであった。これまでのガンダムシリーズは、男女問わず、中高生から上の世代をメインターゲット層にしてきたが、『AGE』ではこれを小学生などの幼い層にも浸透する内容にしたいと考えたのだ。それを実現するためのスタッフのひとりとして白羽の矢が立ったのが、『妖怪ウォッチ』『ダンボール戦機』などのヒット作を連発していたゲームクリエイター・脚本家で、レベルファイブの代表取締役を務める日野晃博(ひのあきひろ)氏だった。日野氏は企画への参加経緯について「もともとはバンダイナムコエンターテインメントの方から “『ガンダム』を全年齢から支持されるものにしたい”という意向をうかがって、そこから『AGE』の制作に参加しました」と語っている。

また、日野氏の参加からもわかるように、ゲームとの連動性も強く意識された。アニメ放送中には、レベルファイブとバンダイナムコゲームス(当時)がタッグを組んだRPG『機動戦士ガンダムAGE コズミックドライブ/ユニバースアクセル』(PSP)が発売。この作品にはアニメ本編を補完するオリジナルエピソードや、ゲームオリジナルの武器&パーツが登場する(サンライズ制作のアニメーションも収録)。日野氏が本編のスタッフに参加したことによる設定やコンセプトの共有が功を奏し、アニメ本編だけでなく、ゲームの世界観も含めてひとつの大きな物語として描かれる構成が実現したのだ。

ガンプラや商品展開における新施策

ガンダムシリーズと言えば、作中に登場するMS(モビルスーツ)がプラモデル=ガンプラとして数多く商品化されるのがひとつの特徴である。ガンプラの商品化はホビー事業部(現BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン)が担当し、『AGE』では通常ラインのHG(ハイグレード、1/144スケール)に加え、初心者向けかつ後述する「ゲイジングバトルベース」対応商品であるICチップ内蔵のAG(アドバンスドグレード、1/144スケール)や、大迫力のメガサイズモデル(1/48スケール)など、複数のラインナップをそろえていた。加えて『AGE』ではボーイズトイ事業部(後にバンダイ ブランドデザイン部などに改編)とも連動した完成品メカフィギュア「ゲイジングビルダー」が新たに登場している。パーツ換装機構が組み込まれたこのフィギュアには複数のICチップが埋め込まれており、アーケードゲーム「ゲイジングバトルベース」の筐体にフィギュアをスキャンすることで、ゲーム内にその形態を反映できるという画期的なシステムとなっていた。自分が組み立てたり、パーツを組み替えたりしたMSがゲームに反映される――『プラモ狂四郎』の世代には垂涎のシステムが商業ベースで可能な形となりリリースされたのは、『AGE』が仕掛けた“挑戦”の象徴とも言えるだろう。ただ、メカニックデザイナーの海老川兼武(えびかわかねたけ)氏が「デザイン面でチェック(する)機構(※編注/模型自体の構造、メカニズム)が増えました。今思えば、私が関わった歴代のガンダム作品の中でも制約がいちばんシビアでした」と語るほど、その実現には大きな苦労があったようだ。

これまでとは異なるメディア展開

『AGE』は外伝の連載がマンガ雑誌や模型雑誌でスタートするが、吉田正紀(よしだまさのり)氏によるマンガ『機動戦ガンダムAGE トレジャースター』が『コロコロコミック』(小学館)に連載されたことも、往年のガンダムファンには衝撃を与えた。レベルファイブ原作の『イナズマイレブン』や『妖怪ウォッチ』のコミック版が掲載されていたことを考えれば何もおかしくはないのだが、時代の変化を感じさせる“挑戦”であった。

このように「『ガンダム』の視聴者層を子供にも広げる」というコンセプトを起点に発生した、さまざまな“挑戦”。第1回では商品展開、メディア展開といった「外側」を紹介したが、その挑戦は、物語そのものや各種デザインにも波及していった。『AGE』で監督を務めた山口晋(やまぐちすすむ)氏は「(子供にも視聴者層を広げる)意識はしていましたが、やはり『ガンダム』らしさをどこまで残すかという葛藤はありました」と語っている。『ガンダム』らしさと子供に伝わるもの――その融合はどのようになされていったのか。第2回、第3回では、そうした物語とデザインにおける『AGE』での変遷を紐解いていく。endmark

作品情報

『機動戦士ガンダムAGE』Blu-ray Box(特装限定版)

<発売日>
2022年2月25日

<品番>
BCXA-1702

<価格>
44,000円(税込)

・TVシリーズ全49話に加えて、OVA『機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDEN』まで完全収録!
・特典には、過去のBD豪華版特典のドラマCDを纏めたアーカイブドラマCDや特製ブックレットが付属!
・「機動戦士ガンダムAGE ユニバースアクセル/コズミックドライブ」オープニングムービーも初収録!
・メカニックデザイン海老川兼武による描き下ろし収納BOX!
・メカニックデザイン石垣純哉、キャラクターデザイン千葉道徳による描き下ろしインナージャケット!

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