TOPICS 2024.09.17 │ 12:01

『グレンダイザーU』
シリーズ構成・脚本 大河内一楼インタビュー①

TVアニメ『グレンダイザーU』は、1975年に放送された『UFOロボ グレンダイザー』のリブート新作。恋愛を中心に据えた新しいストーリーの中に東映アニメ版の要素を散りばめた作品で、クリエイター陣の豪華さでも注目を集めている。そのひとりである大河内一楼に、制作のスタンスやキャラクター造形について、2回にわたりインタビュー。同席したプロデューサーの柏木豊にも、制作時のエピソードなどを語ってもらった。

取材・文/本澤 徹

憧れのクリエイターと一緒にやれるのがうれしい

――まず、『グレンダイザーU』に参加することになった経緯をお願いします。
大河内 『DEVILMAN crybaby』という作品でご一緒させていただいたダイナミック企画の永井一巨さんから「また(脚本を)頼みたい」という連絡をいただいたんです。そのときに「監督が福田(己津央)さんで、キャラクターデザインが貞本(義行)さん」と伺って、僕にとっては憧れのレジェンドクリエイターたちなので、一緒にやれるのがめちゃめちゃうれしくて、すぐに「やります」とお返事しました。
――東映アニメ版の『UFOロボ グレンダイザー(以下、グレンダイザー)』は見ていましたか?
大河内 『マジンガーZ』や『グレンダイザー』は、当時の少年は当たり前のように見ていて、僕もそうでした。

柏木 作品への思い入れでいうと、福田総監督は『グレンダイザー』愛が強くて、貞本さんは『マジンガーZ』が好きなんです。大河内さんには、ふたりの方向性の違う「好き」のエッセンスをうまくまとめていただきました。
大河内 作品って、誰かの「好き」を実現させないと面白くならないと思うんです。だから貞本さんが出してきたアイデアや福田さんが好きと言っていた要素は、なるべく入れたいと思って作りました。福田さんは「マリアちゃんはこういうところがいいんだよ」とか「あのとき、俺はここに感動したんだよ」といった話をたくさんしてくれましたし、貞本さんも絵やストーリーボード、コンテという具体的なかたちで魅力的なものをたくさん出してくれて、それがすごくありがたかったです。

――貞本さんの絵というのは、キャラクターデザインではなく?
柏木 この企画がシナリオ会議に進む前から、イメージイラストをいくつか描いていたんです。大河内さんは、そういうインスピレーションをうまく取り入れてくださいました。
大河内 設定やストーリーという制約がない段階で描かれたイメージって、ストレートに「これが見たい」という快楽に直結していると思うので、僕は大事にしたいんです。多くの場合、それは人を惹きつける魅力的なものですから。
――貞本さんの絵が元になっているところというのは、具体的には?
大河内 まずは冒頭のシークエンスですね。貞本さんが描かれたコンテ的なものがあって、それがとてもワクワクしたんです。それとマジンガーXも印象深いですね。まったく想定外のメカでしたから。
柏木 今回のシナリオは、そうした新しいアイデアと、東映アニメ版から変えずに大事にしたい部分が破綻なく両立していると思っています。これは、大河内さんならではのすごさですね。

ヒカルの変化は明確な役割を持たせようとした結果

――恋愛劇がメインになるというのは、最初から決まっていたのですか?
大河内 「『宇宙円盤大戦争』(※1)の要素を入れたいので、そのヒロインであるテロンナは出したい、でも『グレンダイザー』にはルビーナの回があって(※2)、どちらかを選ぶわけにはいかないので、ふたりを双子の姫にして三角関係にしたい」という話が、最初に福田さんからありました。『グレンダイザー』はもともとラブロマンスの要素が濃いので、自然に受け入れることができました。
――ルビーナは東映アニメ版に近いですが、テロンナは戦士型のヒロインに変化していますね。
大河内 双子で性格も一緒だと見せ方が難しくなってしまうので、違いがはっきりわかるようにしました。それに、両方とも大人しいヒロインにしてしまうと戦場に出てこられないので、一方は戦いにコミットするキャラにしたかったというのもあります。
――第11話の展開は衝撃的でした。
大河内 双子で三角関係という前提でドラマチックにするなら、やはり入れ替わりだろうというのが最初の着想でしたね。ラブロマンスで悲恋というのは、もともと『グレンダイザー』が持っている大きな魅力のひとつだと思いますし。

※1 1975年に「東映まんがまつり」の一編として公開された劇場アニメ。『グレンダイザー』のパイロットフィルムとしての役割を担うことになった。
※2 『グレンダイザー』の第72話は『宇宙円盤大戦争』のリメイク的な内容で、この回のヒロイン、つまり『宇宙円盤大戦争』のテロンナに相当するキャラクターがルビーナ。

――東映アニメ版のメインヒロインである牧葉ヒカル(東映アニメ版:ひかる)が、恋愛的な意味でのヒロインから外れているのも印象的でした。
大河内 それはよく言われますが、「外した」みたいな意識は全然ないんです。僕はデュークの重要なパートナーとして作ったつもりで、大きな運命や世界の秘密を一緒に背負うかもしれない、恋愛よりも大きいところでのヒロインになれる可能性があるキャラだと考えています。
――設定を大幅に変えたのはなぜでしょう?
大河内 東映アニメ版のひかるは、研究所の博士の娘というわけではないし、デュークと本格的に恋愛するわけでもない。物語の構造上の役割がないんですよね。今回は、ルビーナ、テロンナ、さやか、マリアとヒロインが多いので、彼女なりの役割を用意しないと霞(かす)んでしまうと思ったんです。

――女性キャラでは、ナイーダも印象的でした。第4話は、東映アニメ版でナイーダが登場した第25話のオマージュ色が濃いですね。
大河内 ナイーダに関しては、福田さんから「入れたい」とはっきり要望があったので、迷いはなかったですね。もとのエピソードもとても良いですし。第4話のサブタイトル(大空に輝く愛の花)が東映アニメ版の第25話と一緒になったのは、スタッフ総意のリスペクトだろうと思っています。

――『グレンダイザー』には女性のゲストが出る話が多いですが、ナイーダ以外のキャラを登場させる案はありましたか?
大河内 いろいろな名前が挙がりましたが、尺の問題で入りませんでした。有力だったのはキリカ(東映アニメ版の第63話に登場)で、科学者という設定なのでズリルの副官にする案もありましたが、福田さんのキリカへの愛が大きくて「今後も続く可能性があるなら、キリカを中途半端に出すのはもったいない」ということで、副官はマリーネという別のキャラになりました。endmark

大河内一楼
おおこうちいちろう 1968年生まれ。宮城県出身。1999年に『∀ガンダム』でアニメ脚本家としてデビューし、以後、多くの人気作品でシリーズ構成と脚本を務める。代表作は『コードギアス 反逆のルルーシュ』(ストーリー原案・シリーズ構成・脚本)、『SK∞ エスケーエイト』(シリーズ構成・脚本)、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(シリーズ構成・脚本)など。
作品情報

2024年7月5日からテレ東・BSテレ東、AT-Xほかにて放送開始!

原作/永井豪(「UFOロボ グレンダイザー」)
総監督/福田己津央
キャラクターデザイン/貞本義行
シリーズ構成・脚本/大河内一楼
音楽/田中公平
アニメーション制作/GAINA

  • ©Go Nagai/Dynamic Planning-Project GrendizerU