TOPICS 2024.02.10 │ 12:00

『大室家』ならではの空気感を目指した 『大室家 dear sisters』
監督、コンテ・龍輪直征&シリーズ構成、脚本・横谷昌宏対談②

待望のアニメ化を果たした『大室家』。公開直後にお届けしている監督、コンテを担当した龍輪直征とシリーズ構成、脚本を担当した横谷昌宏の対談の第2回では、中心となる三姉妹の見せ方や、アフレコの様子から本作を掘り下げる。

取材・文/斉藤優己(パワフルプロダクション)

やっぱり作品の中心にいるのは櫻子

――1作目『dear sisters』は、花子まわりの話を中心に構成したとのことでしたが、描いていくうえでとくに意識したことは?
横谷 ストーリー的には花子たちと、花子をライバル視しているみさきが次第に仲よくなっていく過程が軸となっています。そこをメインに見せながら、2作目『dear friends』に向けて、撫子まわりの人間関係が把握できるように描きました。ただ、悩みどころだったのは、櫻子と向日葵のキャラクターが強すぎることで(笑)。このふたりの面白いエピソードはいっぱいあるんですけど、入れすぎるとバランスが崩れてしまうと思い、泣く泣く見送ったものがたくさんあります。
龍輪 櫻子は出てくるだけでまわりすべてを巻き込んでしまう、すごいキャラクターですからね。向日葵が振り回されていてかわいそうだなと、毎回思います(笑)。

横谷 櫻子は物語を引っ張っていく面白い子なんですけど、キャラクターが強すぎて他の話にうまく絡まないことが多いんですよね。なので、登場のさせ方には注意しました。
龍輪 『dear sisters』は花子、『dear friends』撫子の話を中心、という話をしましたけど、『大室家』という作品の中心はやっぱり櫻子になるんですよ。でも、櫻子と向日葵の話を入れすぎると、『ゆるゆり』にどんどん近づいていってしまうので、難しいバランスでした。
横谷 櫻子がおバカなことをして、それを花子と撫子が見守る、という感じが『大室家』のベースなので、そこを大切にしながら話を組み立てていきました。なんだかんだ言いつつ、花子と撫子が櫻子を大事に思っているというのを見せられればと思いましたし、家ではしっかりしているふたりが、学校ではそれぞれまた違った顔を見せているところも描いてあげたかったポイントですね。
龍輪 『dear sisters』は姉妹それぞれの話で進みましたが、『dear friends』では櫻子が他の姉妹たちの絡みに首を突っ込んでいくような感じになります。櫻子とのいろいろな絡みも楽しみにしてもらえればと思います。

キャラクター性を反映した学校シーン

――三姉妹それぞれの描き方、見せ方で工夫した点や心がけたポイントはありますか?
横谷 花子まわりの話は、にぎやかで明るく。撫子まわりの話は少しミステリアスな感じ。そして櫻子まわりはギャグもありつつ家族愛もあり――誰を中心に据えるかによって、必然的に話の空気も変わっていったので、それを意識しながら全員の出番をバランスよく考えました。
龍輪 映像的な話をすると、花子の学校シーンは雰囲気をかわいらしくしました。具体的には、イメージ背景を多めに盛り込んでふわふわした感じにしつつ、モブの生徒たちもたくさん描いてにぎやかにしています。一方で、撫子の学校シーンは写実的な作りにしていて、できる限り他の生徒たちを描かず、「撫子たち4人だけの空間」に見せるようにしています。

横谷 なるほど。花子たちはシンプルですけど、撫子たちは複雑な関係ですからね。
龍輪 そのふたつの要素がありつつ、大室家に戻ってきたら、花子も撫子も全部解放して素の自分たちに戻る、みたいな見せ方をしたかったんです。『ゆるゆり』のようなオーバーなギャグはやりませんが、櫻子の動きは面白く見えるよう、意識して作らせてもらいました。

アフレコでキャラクターのイメージがさらに膨らんだ

――本作で初めて声がついたキャラクターが多いのも見どころのひとつだと思います。アフレコの雰囲気はどのような感じでしたか?
龍輪 大室家と小学生組、高校生組でグループに分けて行いました。なので、高校生組は全体的に大人っぽく、小学生組は明るく元気といった雰囲気ができていたと思います。個人的には古賀葵さんに演じていただいたみさきが、すごくよかったと思っています。原作でもかわいいんですけど、声がついたことでさらにかわいさが増しました。

横谷 僕は倉知玲鳳さんが演じるこころの声がいちばん驚きましたね。倉知さんが僕になかったこころのイメージをくれた感じがして「こころってこんな声だったのか」と思いました。
龍輪 こころはマイペースでとらえどころのない子だから、各々イメージする「こころの声」ってけっこう違ってくると思うんです。そういう意味ではキャスティングが難しかったんですけど、「一見突き放してくるようでじつは優しい子」という、僕の中のこころのイメージに倉知さんの声がぴったりでした。

――『dear friends』では、小学生組はどのような活躍を見せてくれますか?
横谷 『dear friends』は撫子が中心のお話になりますが、もちろん小学生組がまったく出ないわけではなく、相変わらず仲よしなところを見せてくれます。撫子たちとは違う、明るいドラマを楽しんでほしいです。
龍輪 小学生組は花子とみさきの個性が強いんですけど、こころと未来にもしっかりとスポットが当たります。花子だけでなく、こころや未来もみさきと仲よくなっていくので、その過程を楽しんでほしいです。endmark

龍輪直征
たつわなおゆき 1977年生まれ。北海道出身。アニメーション監督・演出家。監督作に『咲う アルスノトリア すんっ!』『異世界迷宮でハーレムを』など。
横谷昌宏
よこたにまさひろ 大阪府出身。シナリオライター。シリーズ構成を担当した主な作品に『ケロロ軍曹』『Free!』『トロピカル~ジュ!プリキュア』など。
作品情報


『大室家 dear sisters』
大ヒット上映中!

  • ©なもり・一迅社/「大室家」製作委員会