TOPICS 2023.03.17 │ 12:00

緒山まひろ役・高野麻里佳と緒山みはり役・石原夏織が語る 『お兄ちゃんはおしまい!』の演じかた①

コミカルTS(性転換)作品として好評を博している『お兄ちゃんはおしまい!(以下、おにまい)』。最終回を目前にひかえた今、緒山まひろ役の高野麻里佳と、その妹である緒山みはり役の石原夏織が作品の魅力を語り合う。インタビュー前編は、ふたりが演じたキャラクターについて振り返ってもらった。

取材/森 樹 文/福西輝明

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

コミカルTS作品というだけでなく、人間ドラマとしても大好き

――おふたりはドラマCD版から『おにまい』に出演していますが、アニメの収録を通してキャラクターへの印象や感じ方が変わった部分はありますか?
石原 やっぱり絵の説得力が大きいです。みはりちゃんに対するまひろちゃんの身体の小ささやリアクションなど、アニメの絵と動きが入ることでキャラクター性が肉付けされました。それを見た私たち演者も、お芝居の幅が広がったように思います。
高野 第1話のアフレコは絵がほぼ完成した状態で臨めたので、絵にあわせた起伏の激しいコミカルなお芝居ができました。まひろとみはりのボケとツッコミも、ドラマCDのときよりもメリハリを出そうと心がけましたね。それと、アニメでは食事シーンや登校シーンなどの日常パートが丁寧に描かれていたのが印象的で。今まで知らなかったキャラクターたちのしぐさや癖などが垣間見えて、これまで以上にまひろたちのことを好きになりました。

石原 第1話の後半には、まひろが女の子になってしまった状況に思い悩むシーンがあって、コミカルなノリのドラマCDとはちょっと毛色が違うところに魅力を感じました。
高野 私は第1話の終盤が大好きなんです。ちょっとシリアスな展開と思わせて、まひろの口から出たセリフが「……乳首が痛い」(笑)。でも、お兄ちゃんを思うみはりの心情や、まひろが精神的に成長していく姿が物語全体にわたって描かれていて。コミカルTS作品というだけでなく、人間ドラマとしても大好きな作品になりました。

周囲の人々に支えられたまひろの変化

――これまでの放送を通して、あらためて見えてきたまひろの魅力や、新しい発見はありますか?
高野 まひろは元は男の子なので、もみじたちと会話するときはどんな距離感で接すればいいのか、考え抜いて演じていました。ここまで『おにまい』を見てくださった皆さんは、きっと第1話のまひろとは印象が違って見えると思いますが、それはもみじをはじめとする友人たちがいてくれたからこそ起きた変化なんです。もし、まひろが引きこもりにならずに過ごしていたら、きっとこういう人になっていたんだろうな、という変化が見えるのがとても素敵だなと。
石原 もみじちゃんたち同級生に対する態度と、かえでちゃんに対する態度は明らかに違うよね(笑)。
高野 憧れの女性であるかえでちゃんに対しては「かえでちゃ~ん♡」みたいな(笑)。たぶん、まひろが「女性」だと意識しているのは、かえでちゃんだけなんだと思う。一方、もみじたちとは「性別にとらわれない友達」という関係性が成り立っているところに尊さを感じます。

――まひろがもみじたちとガールズトークしているところを見ると、引きこもりだけどコミュニケーション能力は高いのだと感じました。
高野 まひろって意外と女子の輪の中に溶け込める人なんだ、と私も不思議に思っていました。きっともみじやあさひ、みよたちが、転入生であるまひろを積極的にかまってくれるいい子たちだから、まひろも安心して心を開けたんでしょうね。そして、他人と接するのが苦手だったまひろがだんだんいい方向に変わっていけたのは、友人たちだけでなくみはりがいてくれたからこそ。自分のことを心から思ってくれる人がそばにいてくれたから、まひろの人間性が再び磨かれたんだろうなって。まひろが毎日を楽しく過ごしているのを見て、みはりがうれし泣きをよくしているのですが、私はそれを見ていつもグッときちゃうんです。

――ちなみに高野さんは、まひろを男性と女性、どちらだと思って演じているのでしょうか?
高野 まひろが学校にいるときは、男子の前で無意識に服を脱いじゃったりもするので、素のまひろに近いと思うんですよね。だから、男性の気持ちでいるのかなと思って演じています。
石原 そうだったんだ! でも、たしかにもみじたちといるとき以外は男の子っぽいかも。
高野 とくに強く「まひろは男だ!」って思うのは、かえでちゃんとからんでいるとき。ラッキースケベなシーンでは「うれしい~♡」という気持ちが前面に出るので、そこはきちんと男性的に演じてほしい、というディレクションもありました。ただ、回を重ねるうちに男性的なまひろに慣れすぎてしまったせいか、かえでちゃんに対してグヘグヘしたスケベ心を出しすぎるようになって「ちょっと抑えてください」と指示が入ることもありました(笑)。

みはりの兄への変わらない思い

――みはりの変化について、石原さんはどのように感じていますか?
石原 物語序盤のみはりちゃんは、引きこもりのまひろちゃんをどうやって外の世界に連れ出すか、必死になっていました。でも、やがてまひろちゃんは自分から外に出ていくようになり、中学校入学以降は友達もできて「自分の世界」を構築するようになって。その結果、兄の背中をグイグイ押していたみはりちゃんは、独り立ちしていくまひろちゃんをそっと見守る立ち位置に変わってきているなと感じます。それでも以前と変わらずお兄ちゃんのことは大好きなので、一緒に写真を撮ったりお出かけしたりと、隙あらば絡んでいこうとするわけですが。また、お兄ちゃんがかえでちゃんにデレデレするのを見ると、「なんでそっちにいくんだー!」というヤキモチがムクムクと膨らんでしまう。そんな、しっかり者の天才少女ではなく、本来の「お兄ちゃん大好きっ子」な一面を出すようになったところにも変化が見られますね。まひろちゃんは精神的に成長していますが、みはりちゃんも違ったベクトルで成長していて、放送開始当初よりもいい関係を築けていると思います。

高野 以前のまひろは、みはりを妹として大切にしたいという思いと、出来すぎた妹に対するコンプレックスのジレンマに苦しんでいました。でも、女の子になってからはそうした葛藤がだんだん解けてきたなと思います。みはりのために調理実習で作ったクッキーを持って帰ってきたり、バレンタインチョコを用意したり。まひろは口ではなんやかんや言いますが、みはりのことを何ものにも代えがたい家族として大切にしているのが感じられて、私自身うれしくなっちゃいました。
石原 笑いあり、感動ありで『おにまい』って本当にいいアニメだよね。
高野 コミカルとお色気で押してくるかと思ったら、急に泣かせにくるところはすごいと思います。endmark

高野麻里佳
こうのまりか 2月22日生まれ。東京都出身。青二プロダクション所属。主な出演作は『ウマ娘 プリティーダービー』(サイレンススズカ役)、『恋愛フロップス』(カリン・イステル役)、『後宮の烏』(九九役)など。
石原夏織
いしはらかおり 8月6日生まれ。千葉県出身。スタイルキューブ所属。主な出演作は『金装のヴェルメイユ〜崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む〜』(シャロル・イリデッセンス役)、『社畜さんは幼女幽霊に癒されたい。』(リリィ役)など。
作品情報

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  • ©ねことうふ・一迅社/「おにまい」製作委員会