TOPICS 2021.09.28 │ 12:00

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章
監督・橘正紀インタビュー 前編

美少女×スパイアクション『プリンセス・プリンシパル』の最新作『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』第2章がついに公開。爽快なアクション連発・本格スパイ映画の魅力を、前後編の監督インタビューで深堀り!

取材・文/前田 久

「雰囲気」だけで方向性が伝わる現場になってきた

――『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』第2章では、新兵器・ケイバーライト爆弾が物語のキーアイテムになります。このアイデアはどこから生まれたのでしょう?
 正確にはおぼえていないのですが、スタッフ間での話し合いは「共和国から何か重大なものが盗み出されて、それを取りにいく」というストーリーを軸にしつつ、王室の話を絡めていこう……というところからスタートしました。そこから「何か重大なもの」……大きなインパクトのあるアイテムを作品の世界観に合うかたちで考えたときに「ケイバーライトを使った新型の爆弾はどうか」という話になったんです。「共和国と王国でケイバーライトを使った技術の開発競争がある」というストーリーがTVシリーズの第4話(case9)で描かれていたので、それを踏まえたうえで、共和国が王国に対して優位に立てるアイテムであり、取られたら必ず取り返さないといけないものとして、とくに説明せずに登場させられるな、と。要するにマクガフィン(物語を展開させるための素材)なんです。ケイバーライト爆弾を取り返す道中で、アンジェたちが「敵の目的は本当に爆弾だったのか?」「爆弾を盗むことは手段に過ぎなかったのではないか?」と考えることで、どんどん大きい話に転がっていく。そんなイメージで今回の物語は構築しました。それでいて、そのアイテム自体も魅力的に見えるように作ることも重視しました。

――ストーリーを構築していく過程で大変だった部分はどこでしょう?
 やはりこの作品の根幹にあるのは「スパイアクション」なので、アンジェたちと敵の駆け引きの部分にはこだわりました。そこがいちばん大変な部分でしたね。

――第1章のときは『裏切りのサーカス』など、いくつかの映画を作品づくりのイメージソースとして参照したとのことでしたが、第2章でもそうした作品があったのでしょうか?
 いえ、今回は何か具体的に参考にした作品はなかったです。シナリオの段階で「こういうロケーションにしよう」という場所のイメージがある程度固まっていましたし、作品としてのイメージもわりとできあがっていたので、そうしたかたちでのイメージ共有をしなくてもよかったんです。ストーリーを作る段階で「スパイ映画のあの雰囲気だよね」みたいな話はしましたが、もう「雰囲気」だけで目指す方向性が伝わりました。

劇場に出てきた「アレ」は完全に僕の趣味です(笑)

――シリーズの展開も長いですから、それくらいスタッフ間でイメージが共有されているんですね。
 そうですね。おかげで最近は、ストーリー以外のところでもスタッフにまかせられる部分が多くなっています。ただ、今回の第2章ではビジュアル的な部分、とくにパーツ単位で「こんなデザインがいい」という話をして、こだわったところがけっこうありました。たとえば、蒸気を吐くドラゴン。あれはミヒャエル・エンデの小説『はてしない物語』に出てくる、スメーグという毒を吐く竜をイメージしました。ちょっと気持ち悪いデザインなのですが、ヨーロッパの本の挿絵にあるような醜悪な、禍々しい感じのデザインを参考にしたかったんです。日本人は『ドラゴンクエスト』に登場するような、洗練されたデザインの竜に慣れすぎている印象があったので、それとは違うものを出したいというのもありました。

――そうしたものの中で、監督ご自身がひと際こだわったものは?
 スチームパンク劇場に出てくるイグアノドンの像です。変わった形をしていると思いますが、あれはイグアノドンの爪の化石が最初に見つかったとき、それを鼻の先にあった角だと想定して作られた、トカゲみたいな形のイグアノドンの復元模型を参考にしたデザインなんです。これはもう、完全に僕の趣味でしかないです(笑)。そんなところも含めて、第2章は小ネタ的に僕の好きなものを入れて、第1章よりもアクションが多く、エンタメ色をより強くして楽しく制作しました。

――第1章は、TVシリーズよりもさらにハードで渋い展開でしたよね。
 あれは、本当はもっとライトにしようと脚本会議の段階ではみんな言っていたのですが、いざ作ってみたらそうならなかったんです(笑)。バンダイナムコアーツの湯川 淳チーフプロデューサーが「TVシリーズで想定していた視聴者層が、予想よりも若い人が多かった」とおっしゃっていたので、より入口を広げるつもりで、TVシリーズの第1話と同じように明るく、アクションを多めにするはずだった。ところがどんどん話の内容が重くなってしまい、アクションよりも謎解きの比重が多くなってしまったんです。それがあったので、第2章はシナリオの段階からスチームパンク劇場を出したり、他にもアイデアを盛り込んでおいて、アクションシーンを増やせるように工夫をしました。TVシリーズのときにもライトな回と重めな回があったので、今回の劇場シリーズもそのようなかたちにしていきたいんですよね。

あのキャラクターはシナリオではいなかったんです

――アクションシーンは出てくるガジェットも、シチュエーションもアイデア満載でした。どのような方針で作り上げていったのでしょう?
 今回はスチームパンク要素を多めにしました。美術監督の杉浦(美穂)さんから第1章の制作時に「(TVシリーズに比べて)スチームパンク要素が少ないじゃないですか」と言われてしまいまして(笑)。そのため、第2章ではスチームパンク劇場や爆弾など、ガジェットにこだわりました。今回の劇場やドラゴンのデザインはTVシリーズから参加してくださっている六七質(むなしち)さんに起こしていただいたものです。アクションシーンの組み立てに関しては、漠然と「こういうシチュエーションで、こんなアクションをしたら面白いだろうな」「こういうふうにしたらテンポが良いだろうな」と考えていきました。ロケーションで派手に動かせそうなところは設定を確認しながら、使えるところを使ってアクションさせていく感じです。ジャッキー・チェンのアクション映画では、ロケ地にあるもので何が使えるかを確認しながら立体的に映えるアクションを組み立てる様子がメイキングに記録されています。そんな感覚で面白いことができないかなとコンテを描いていました。とにかく第1章が地味だった分、今回はドタバタする感じにしたいという目論見があって、そういう意味でアクションシーンは楽しんで描けましたね。

――その場にあるものを活かすことにこだわったのは、映像からも伝わりますね。第1章の話になってしまいますが、二階建てバスでのアクションシーンがすごく好きで。あの状況じゃないとできないアクションをしていて……。
 『ポリス・ストーリー/香港国際警察』みたいな(笑)。

――そう、ジャッキー映画っぽい(笑)。そのシーンでも、第2章の最初の館のアクションでも、ちせが活躍していたのもうれしかったです。
 隊長とちせのアクションシーンは最初から入れようと考えていたので、見せ場として作画も頑張ったシーンですね。ちせは第1章では車で川に落ちたりしてアクションシーンとしての見せ場があまりなかったですが、ようやく面目躍如というか、活躍できてよかったです。ただ、ちせ役の古木のぞみさんが「ちせが活躍するとセリフがなくなる」とおっしゃっていて(笑)。戦闘シーンになると、セリフがなくなりますからね。

――たしかに(笑)。声優さんとしては痛し痒しですね。
 でもその分、期待している方々にとって格好いいシーンが作れたのではないかと思っています。

――そのあとの劇場でのアクションシーンでは、TVシリーズで印象的なサブキャラだったフランキーが再登場します。監督は前々から再登場させたいと語っていましたが、念願かなったかたちでしょうか?
 じつは……シナリオではあのシーンにいなかったんですよ、フランキー。

――そうなんですか!?
 シリーズ構成・脚本の木村 暢(のぼる)さんと「フランキーをどこかで出しましょう」という話はしていたんです。ところが、シナリオ会議が進んでいくうちに、フランキーを出せるようなシーンがなくなってしまった。もう、第2章しかフランキーが登場できるところはないなと。それで借金を抱えたキャラクターのサイドストーリーを膨らませ、金貸しをフランキーにして、絵コンテでいきなり登場させました(笑)。endmark

橘正紀
たちばなまさき 1976年生まれ。千葉県出身。アニメーション監督。東映アニメーションにて演出助手を務めたのち、フリーに。主な監督作に『東京マグニチュード8.0』『ばらかもん』『ファンタシースターオンライン2 エピソード・オラクル』など。2022年には劇場映画『ブルーサーマル』が公開予定。
作品情報

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章

絶賛上映中

  • © Princess Principal Film Project