TOPICS 2022.07.04 │ 12:00

アムロ・レイの演じかた
~古谷徹の演技・人物論~ 第3回(中編)

第3回 古谷徹(アムロ・レイ)×古川登志夫(カイ・シデン)

ホワイトベースの戦友として次第に絆を深めていくアムロ・レイとカイ・シデン。古川登志夫氏とのスペシャル対談第2回は、声優の声質と演技の関係や『機動戦士ガンダム』の収録現場でのエピソードについて語っていただいた。

取材・文/富田英樹 撮影/高橋定敬 ヘアメイク/氏川千尋 スタイリスト/安部賢輝 協力/青二プロダクション、バンダイナムコフィルムワークス

ミハルとの出会いがカイを変えていく

――アムロとカイですから、番組では古谷さんと共演する機会も多かったと思いますが、印象に残っていることはありますか?
古川 ベルファストの辺りでカイがホワイトベースを降りることになって、アムロが自分の財産ともいえる工具箱をくれるシーンがありましたよね(第27話「女スパイ潜入!」)。その後、第28話(「大西洋、血に染めて」)くらいからカイの内面に変化が見られるようになっていく。ミハルとの出会いがあって、カイの中にも明確に自意識が芽生えていきますよね。たしかこの頃からカイにファンレターが届くようになったと思います。脇役であってもずっと生きていくキャラクターになるのかなと思いましたし、演じていても楽しかったですね。
古谷 素直じゃないですよね、カイって。ストレートにはモノを言わないというか。
古川 ひねくれ者というか、彼自身の照れもあるだろうし、批判精神みたいなものもあるんでしょう。そういう部分は後のジャーナリスト魂みたいなところにつながっていくのかもしれません。カイの社会を斜に見る性格は、一貫して変化していないと思えます。

古谷 本当に面白いキャラクターだと思います。アムロとしても、だんだん仲間意識が強くなっていったんでしょうね。最初は「なんだ、この人」っていう気持ちだったのが、戦場で苦楽をともにすることでかけがえのない仲間になっていく。カイがホワイトベースを降りるときだって「今日まで一緒にやってきた仲間じゃないですか」って引き留めますよね。どこかでアムロのことを思っていてくれて、庇ってくれたこともあったんじゃないかな。
古川 仲間のことを考えているようなところもあるんだよね。
古谷 そうなんです。ブライトはもともと軍人だし、上下関係で人を見るようなところがあったから仕方ないんですけど、カイに対しては仲間意識が芽生えているように思います。でも『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では「同級生なの?」みたいな(笑)。
古川 「ア~ム~ロくぅん」って、住宅街のご近所さんだもんね(笑)。
古谷 近所の不良ですよね(笑)。でも、あの飄々としたカイのキャラクターに、古川さんの声はぴったりだと思っていました。
古川 もともと軽薄な声なのでね(笑)。性格がそのまんま出てるの。
古谷 そういう明るい表現が僕は苦手なんですよね。

古川 そんなこともないんでしょうけれど、声質は大きな要素としてはあるのかもしれない。ハイトーンを響かせることが多いので、明るい感じになる。僕の声はハイバリトンというか高めなんです。
古谷 僕は泣きの演技のほうが得意なんですよ。それこそ星飛雄馬というスタートからしてそうだったから。たとえば、コマーシャルの収録で「もっと明るくしゃべってください」と言われると、どうしていいかわからなくなることがあります。
古川 不思議なんだけど、古川と古谷で名前が似ているせいかよく間違われるんですよ。
古谷 あ、それ本当に間違われますよね!
古川 「いつもの番組でやっているような感じで」とか言われるんだけど、それは徹ちゃんの番組なんだよね(笑)。昔、「Do!スポーツ」というテレビ番組のナレーションを僕がやっていたんだけど、同じ時期に徹ちゃんが「カーグラフィックTV」をやっていたから間違われることが多かった。「もっとカーグラみたいに落ち着いた感じでお願いします」とか言われるんで、本当に苦労しました。
古谷 僕なんか、もう知らん顔してそのままやることもありましたよ。古川さんになりきって(笑)。
古川 僕らの上の世代の先輩方なら帰っちゃうよね(笑)。

演技の幅と声質の関係

――先ほどのお話ですが、声質によって得手不得手が決まるということですか?
古谷 声質は大きく影響するけれど、それだけではないですね。本人の性格的な部分も大きな要素になっていると思います。
古川 僕なんかは内気で引っ込み思案だから、女性と面と向かって話せないようなところがあるけれど、でも役柄だとできるんですよ。『うる星やつら』の諸星あたるの印象が強いせいか、僕に会うと皆さん「本当に古川さんがやってるんですか?」って言われることも多いです。

――たしかに、あんな風な人だと思いがちですよね。
古谷 あんな風な人って!(笑) 諸星あたるのままだったら困るよね。
古川 実際は正反対だからね。でも、声質ということだと神谷明さんとも重なるところはあったかもしれないですね。オーディションでもよく一緒になりました。
古谷 でも、神谷さんは根が二枚目だから。振り切ってはじけるキャラは苦手だったんじゃないかと思いますよ。僕もどちらかと言えばそういうタイプなので、明るいキャラを演じるのは難しいです。

映画情報

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島

全国公開中

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