――今作『トロプリ』は「明るく楽しい」イメージがとにかく前面に出ている印象ですが、この方向性はどのような理由で決まったのでしょう？
村瀬　土田監督が参加されたことが大きいですね。お願いすることが決まり、「こういうことをやりたい」と意見を出し合う中で、監督からも「明るくて楽しい」という言葉が出ましたし、別の方が監督だったらまた違うテイストになっていたと思います。

――土田監督に白羽の矢が立ったのはどのような理由でしょうか？
村瀬　もともと「人魚が出てくるお話」をベースに考えていたのですが、『人魚姫』のイメージだと、ちょっと暗い印象になるんじゃないかという不安があったんです。そこを払拭したい、別のイメージを投下することで面白い化学反応を起こせないかなと考えました。悲劇のイメージで捉えられることが多い『人魚姫』ですが、私は悲劇として扱いたくなくて。「人間になりたい」という思いを持って地上に行こうとする勇気や、自分のやりたいことのためにまっすぐ進む力をメインに描きたかったんです。そういう意味でも「陰」にいくのではなく「陽」にいきたい。それを一緒に考えて面白く作り上げてくださる方……土田さんなら、と思ってオファーしました。

――シリーズ構成の横谷さんは『プリキュア』シリーズ初参加ですよね。こちらはどういった経緯で？
村瀬　私自身、横谷さんとは初めてだったんですけど、『トロプリ』では「新しい風を吹かせたい」という自分の中で掲げていた目標があって。新しいスタッフにも入ってもらって、その方たちと一緒に新しい『プリキュア』を作っていきたいと思っていました。そんなときに「『プリキュア』をやりたい」と言ってくれている脚本家さんがいる、と先輩から聞いて、紹介してもらいました。

――横谷さんは「じつは怖くて起用された理由を聞いていない」と言っていたんですが（笑）。
村瀬　そうだったんですね（笑）。でも、個人的に横谷さんの他の作品のシナリオも拝読していて、土田監督と組んで自由に動いてもらったら、すごく面白いものが生み出せるんじゃないかと思っていたんです。土田監督にお願いすることが決まった際に、「こういうことがやりたい」という演出リストを作っていただいたんですが、それを見た横谷さんが何度もうなずいてくださったので安心したことをおぼえています。

――もうひとりのメインスタッフである、キャラクターデザインの中谷友紀子さんはどのような意図での起用でしたか？
村瀬　『プリキュア』はこれまでのシリーズでたくさんの方に参加していただいているので、企画段階で「歴代シリーズの中だとどれがイメージに近いか」をまず考えました。その時点で私の中では「歴代の中だったら中谷さん」というイメージがありまして。過去に実績がある方にお願いすると決めていたわけではないんですけど、実際に描いていただいたら「このキャラクターが動いているのが見たい！」と思ってお願いしました。

――中谷さんのイメージがもともとあったのはどういった理由でしょうか？
村瀬　「人魚」という想像上の生き物を出したかったので、ファンタジー的な美しさというか、不思議な雰囲気をアニメーションの画に落とし込んでくださるんじゃないかなと思っていました。他の作画のスタッフの方々がよく「中谷さんがデザインされた設定画を見ているだけで、キャラクターが動いているのが想像できる」とおっしゃっていて、そういった印象は以前の『Ｇｏ！プリンセスプリキュア』でも感じていたので、「動き出すようなキャラクターを作り出せる方」として魅力を感じていたのかもしれない、と今になって思います。