悔しい気持ちを想像しながらも前面には出さない演技
――TVアニメとしては約2年半ぶりの新作となる第3期ですが、スタートからしばらく経った今の心境を教えてください。
立花 やっぱり『ウマ娘』だな~って思います。テンポ感やギャグの入れ方が他の作品とはちょっと違っていて。アフレコでも「ああ、これが『ウマ娘』の空気だ」って、懐かしく思いながら収録させていただきました。
――第4話と第5話では、サトノダイヤモンドが「サトノ家のウマ娘はGⅠに勝てない」というジンクスに挑み、大レースで続けて惜敗する姿が描かれました。
立花 皐月賞で悔しい負け方をしたあと、日本ダービーでは落鉄があって8センチ差の2着。こんな負け方をしたら、誰でも「落鉄さえなければ」と思ってしまうし、きっとダイヤ(サトノダイヤモンド)もそうだったと思うんです。でも、それを口にせず、すぐに気持ちを切り替えて、次のレースで勝つことだけに目を向けている。そんな姿を見て本当に強い子だと思ったし、史実で菊花賞を勝利していることがわかっていても、早く報われてほしいと思いました。
――キタサンブラックがネイチャ先生(ナイスネイチャ)に相談するのとは対照的に、サトノダイヤモンドは、すべてをひとりで抱え込んでいるような印象がありました。
立花 第6話で初めて(メジロ)マックイーンさんに自分の気持ちを吐露するんですけど、それまでは弱音を吐いたりするシーンもなかったので、ダイヤが実際にどう思っているのかは、アニメを見ている皆さんにも見せない演出なのかなと考えていました。だから、私もダイヤの悔しい気持ちを想像しながらも、それを前面には出さず、何を考えているのかわからないミステリアスな感じを意識して演じました。
収録前に、前半でいちばんの「泣き話数だから」と言われた
――菊花賞が描かれた第6話のアフレコは、やはり特別な思いがあったのでしょうか?
立花 そうですね。第5話の収録後に第6話の台本をいただいたのですが、監督から「前半でいちばんの『泣き話数』だから、頑張ってください」と言われて「わ~、マジですか~」と思いました(笑)。監督からは最後の泣きのシーンについて「今までのダイヤの表情とかキャラクター感は無視して、大号泣してほしい」とも言われていて。ダイヤがそこまで感情を表に出すのは、それだけ強い想いや背負ってきたものがあったからだと思うし、自分の中でどう気持ちを奮い立たせて爆発させたらいいのか、収録までの1週間は悩みに悩みました。
――悩んだ結果、どのような答えにたどり着いたのでしょうか?
立花 ちょうどそのタイミングで、ゴールドシップ役の上田瞳さんにお会いする機会があったので、相談させていただいたんです。上田さんからは「きっとマイクの前に立ったら演技はできるから『こういう風に泣こう』と考えるよりも、泣いたときのダイヤちゃんは何を思っていて、どんな景色が見えているのかとか、演技をするまでに必要な情報をたくさん集めたほうがいいよ」というアドバイスをいただいて。今までの話数の台本を読み返したり、アフレコ用の仮映像のダイヤの表情を見直したりしながら想像を膨らませて、収録に挑みました。
「ゾーンに入った」状態を表現したかったレースシーン
――実際、放送された第6話は、ダイヤの抱えていた想いが伝わるような素晴らしいお芝居でした。アフレコはスムーズに進んだのですか?
立花 比較的、スムーズだったと思います。泣きのシーンはけっこう喉を使うので、テストのときはタイミングなどを確認するだけにして、最後にその部分だけをひとりで一発本番で録らせていただきました。
――あとのことを気にせず全力で泣けるようにという配慮だと思うのですが、プレッシャーはすごそうですね(笑)。
立花 そうなんです! すごく緊張しました(笑)。でも、一回でOKが出て、監督や音響監督に「よかった!」と言っていただけたので、うれしかったです。
――レースの終盤、スパート中の叫び声も非常に迫力がありました。
立花 今まで勝てなかったGⅠに勝てたということは、きっとこれまで以上の走りができたからなんだろうと。ゾーンに入っているというか、すごく集中している状態の走りを表現したいと思ったんです。まっすぐ前だけを見つめて、息も切らさず走ることを意識したのですが、収録はすごく大変で酸欠になりそうでした(笑)。
- 立花日菜
- たちばなひな 6月14日生まれ。宮城県出身。アーツビジョン所属。主な出演作に『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(市井舞菜役)、『うちの会社の小さい先輩の話』(片瀬詩織里役)、『アイドルマスター シンデレラガールズ』(久川凪役)など。
『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』
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