TOPICS 2023.07.26 │ 12:00

Cygames開発スタッフが明かす
『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』誕生秘話③

Webアニメ『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP(以下、ROAD TO THE TOP)』に企画スタート時から関わってきたCygames開発スタッフのコンテンツディレクターとシナリオディレクターへのインタビュー。最終回は、TVシリーズと同じく史実の再現度が話題となったレースシーンへのこだわりなどを聞いた。

取材・文/丸本大輔

アニメスタッフ努力とスキルが光るレースシーン

――前回も少し話題になった、実際の競馬に関連する小ネタは、シリーズ構成やシナリオ制作の段階でアイデアを出し合うのでしょうか? 絵コンテや作画の段階で盛り込まれることもあるのでしょうか?
Cygamesコンテンツディレクター(以下、コンテンツD) TVシリーズも含めて、いちばん多いのはシナリオ制作の段階ですね。ただ、レースの勝敗だったり、史実的に重要なエピソードなどはドラマの大筋に影響する部分ですので、シリーズ構成の段階でも盛り込んでいます。また、コンテの段階で監督や各話の絵コンテ担当のスタッフが盛り込んでくださる場合もありますね。
Cygamesシナリオディレクター(以下、シナリオD) モチーフ馬の根幹に関わるような史実要素は、キャラクター設定の段階でいろいろと試行錯誤しながら組み込んでいます。ウマ娘の「らしさ」に関わってくる要素ですので、非常に大切にしている部分でもあります。

――レースの再現度の高さについても、TVシリーズから続いて大きな話題になりました。レースシーンの展開や描写に関しては、アニメのスタッフ陣にどの程度までオーダーを伝えているのでしょうか?
コンテンツD 勝敗や結果を分けた部分、そのレースの意義、感動ポイントなどは、企画やシリーズ構成、シナリオ打ち合わせの段階で、私やシナリオディレクターからアニメのスタッフ陣にお伝えします。明確な勝因や敗因を見つけることは難しいのですが、たとえばナリタトップロードは「小回りが苦手」といった実際のエピソードや見解などをきちんと考証して、妥当性のあるラインを探りつつ、そういった要素を入れてほしいとお伝えしたりします。ただ、実際のレース描写だったり、キャラクターのアニメーション表現などは基本的にはアニメのスタッフ陣におまかせではありますので、レースシーンが高い評価を受けたのは、廖監督をはじめとするアニメスタッフの努力とスキルによる成果だと思います!
シナリオD レースシーンはとくに監督さんや演出さんの個性が出てくる部分でもあるので、一視聴者としても毎回完成を楽しみにしていました。

ふたつの物語が見事に決着した菊花賞

――第1話の皐月賞、第2話のダービー、第4話の菊花賞のそれぞれのレースシーンに関して、とくに素晴らしいと思ったポイントを教えてください。
コンテンツD レースシーンはどれも好きなので答えづらい質問ですね(笑)。全体として、TVシリーズとはまた違った表情やアクションが光るレースシーンとなり、『ウマ娘』の新しい表現のひとつとなったのがとても意義深いなと思っています。レース以外のシーンになるのですが、菊花賞の発走前にテイエムオペラオーがナリタトップロードのお尻を叩くシーンがお気に入りです。これも実際にパドックで緊張していた渡辺(薫彦、ナリタトップロードの鞍上)騎手をほぐすために、先輩の四位(洋文)騎手が叩くエピソードがあって、とても素敵なお話なので参考にさせていただきました。CygamesPicturesがとてもコミカルでかわいく仕上げてくださって、見ている側にとってもレース本番直前の緊張した気持ちが切り替えられる、素晴らしいアニメーションだったと思います。

シナリオD 各レースシーンはそれぞれ違った目的、魅力を持っているのでなかなか答えづらいですが、作劇の難易度でいえば、菊花賞がいちばん高かったのかなと思います。アドマイヤベガと妹との物語と、念願のGⅠ初勝利を手にするトップロードの物語。性質の異なるふたつの物語を、視聴者を置いてけぼりにせずにひとつのレースの中で見せていき、決着させるという複雑なことをすごく上手に映像に落とし込んでいただいたので、さすがだなと感動しました。

ぜひこの「3強」の続編を作りたい!

――『ROAD TO THE TOP』では解説者役として、元中日ドラゴンズの名投手でクラブ馬主としても知られる山本昌広氏が出演していましたが、どのタイミングで出演が決まったのでしょうか?
コンテンツD 企画の段階から、これまでのTVシリーズ同様にスペシャルゲストをお招きしたいなという思いがありました。実際に検討をし始めたのは、シナリオ制作と並行しながら、ウマ娘たち以外のキャストを決めていくあたりですかね。どなたにお声がけしようかとプロデューサーとも考えていたところ、競馬にも造詣が深く、一口馬主としても有名な山本さんがいいのでは、というお話になりまして、オファーをさせていただいたところ、快諾していただきました。

――山本氏の出演が決まったことで、シナリオ制作上の影響はありましたか?
シナリオD とくにシナリオや台本制作上の影響はありませんでした。私も学生時代は野球をやっていたのですが、昔、テレビで見ていた憧れの選手と、アニメの制作現場でご一緒することになるとは夢にも思いませんでした(笑)。

――『ROAD TO THE TOP』全4話が配信されてしばらく経ちますが、現在の心境と、視聴者へのメッセージをお願いします。
コンテンツD 個人的には続編を作りたいですね! おかげさまで高評価を多数いただきまして、多くの視聴者やファンにとって宝物となる作品のひとつになったのなら、この上ない喜びです。今回、初めて『ウマ娘』に触れる方、これまで『ウマ娘』を応援してくださった皆様にあらためてお礼申し上げたいです。ありがとうございます!
シナリオD 多くの人に見てもらえて、楽しんでいただけているコメントもたくさん寄せていただけて、うれしい気持ちでいっぱいです。物語を作る立場として、『ウマ娘』の物語に誰でも気軽に触れられる場所を作りたいとずっと思っていたので、今回、配信というかたちで皆さんにお届けできてよかったです。endmark

作品情報


『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』
『ウマ娘』公式YouTubeチャンネル「ぱかチューブっ!」にて好評配信中!

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