――まずは、シュヴァルグランのGⅠ初勝利が描かれた第12話の感想から教えてください。
夏吉　第12話のシュヴァルグランの出番は前半と後半で内容が分かれていて、前半はトレセン学園へ入学した頃や、ライバルのキタサンブラックが現れて、同じように頑張っているのに結果が出ないときの気持ちとか、ここまでのシュヴァルの心情を描いた回想シーンが多かったですね。そのおかげで、ジャパンカップに向けて静かに闘志を燃やしていくシュヴァルの想いが自然と染み込んできました。あと、姉のヴィルシーナ、妹のヴィブロスと3人で話すシーンがあって。シュヴァルは、先に結果を出しているふたりに対して劣等感を感じているのですが、ヴィルシーナがシュヴァルに寄り添って共感してくれるんです。ジャパンカップの直前に姉妹との溝が埋まったと感じられたので、シュヴァルを演じる自分としても、後半のレースのシーンに向けて、すごく後押しをしてもらえた気持ちになりました。

――第12話のアフレコで印象的だった出来事を教えてください。
夏吉　やっぱり、後半のジャパンカップのレースシーンで、キタサンブラックと差すか差されるかという展開になるところがいちばん印象に残っています。前半の「ずっと前にいたキタサンブラックの背中を越えてやる！」というシュヴァルの熱い想いを引きずって、最初は大きな芝居にしたんです。レース中、キタサンブラックと出会ってからのことを振り返りながら、最後に「君が大好きだー！」と感情を爆発させるのですが、そこに至るまでを「小、中、大、特大」と階段を上るようにボルテージを上げていきたいと思っていました。でも、テストのときにそう提案したら（及川啓）監督から「ここはすべて淡々とやってください」というディレクションがあったんです。

――芝居のプランを大きく変える必要があったのですね。
夏吉　はい。それで、どうして淡々と言うのかなって、あらためてレース中のシュヴァルの気持ちを考えたんです。すでにピークアウトを迎えているキタサンブラックの背中を追いかけながら、ピッタリと後ろにつけている。あんなに遠かった背中がもう手の届くところまで来たとき、シュヴァルだったら、そんなにボルテージを上げず、「やっと君を捉えられる。君に引導を渡すときが来た。僕の気持ちはこうだよ」と静かに伝えるだろうということがストンと胸に落ちたんです。自分で作ってきたお芝居とは全然違うので、最初はギャップも感じたんですけど、最後に「君が大好きだー！」と叫びながらキタサンブラックを追い越していくシーンまで、自分の中で自然につながっていきました。シュヴァルグランの勝ち方って、こうかもしれないと教わったような気持ちでした。

――シュヴァルグランにとってキタサンブラックは、ライバル以上の大きな存在だったことは、少し驚きでした。
夏吉　私もシュヴァルは、キタサンブラックのことを絶対に倒さなければいけないライバルだと思っていると捉えていたので、最後の「大好きだー！」につながる心情をイメージするのはけっこう大変でした。でも、これまでの要所要所のセリフを思い返してみると、ただ単にキタサンブラックを倒したいわけじゃないんだなって。背中をずっと追いかける立場に甘んじてはいたけれど、「君と一緒に走っていることに誇りを持っている」という心に気づけたんです。外からは少し見えづらいけど、ここまでの話数にもそういう思いがあったんだなと解釈できたのは、私にとって第12話での最大の発見でした。

――第11話までのエピソードで、好きなシーンやとくに記憶に残っているシーンはありますか？
夏吉　第3話で、ダイヤちゃん（サトノダイヤモンド）のメイクデビュー優勝のお祝いになぜか呼ばれているのが、シュヴァルにとって初めてセリフのあるシーンで、キタサンブラックに「続いてシュヴァルちゃんの抱負を！」といきなりニンジンマイクを向けられて「僕も!?」と驚くんです。シュヴァルの第一印象が決まるシーンなのですが、最初は「なんで僕まで……」といった様子で立ちあっているので、キツい雰囲気にならないように、神経をすごく使いました。巻き込まれ体質なところを出しつつ、キタサンブラックの押しには敵わないことと、なんだかんだで（サトノクラウンを含めた）4人でいるのを楽しんでいるのかな、という雰囲気を込めながら言ったセリフでした。