Febri TALK 2022.07.11 │ 12:00

加藤大典 ゲームプロデューサー

①幼少期の思い出が仕事とリンクした
『鎧伝サムライトルーパー』

アーケードゲーム『ワッチャプリマジ!』のプロデューサーであり、『KING OF PRISM』では「プリズムジャンプ原案」、『ワッチャプリマジ!』では「イリュージョン原案」などのクレジットでアニメにも参加している加藤大典。その卓抜したイマジネーションの源流をたどるインタビュー連載は、幼少期の思い出からスタート!

取材・文/前田 久

NG5の曲は今でも歌えるくらい、はっきりおぼえている

――本日はよろしくお願いします。
加藤 この連載、皆さん本当にしっかりした話、面白い話ばかりされていますよね。僕はつまらない話しかできないので……。

――――いやいや、そんなこと言わずに。1本目は『鎧伝サムライトルーパー(以下、トルーパー)』。これまでのFebri TALKで出ていない作品ですし、どんな切り口の話になるのか、気になります。
加藤 僕は1978年生まれなので、1988年放送開始の『トルーパー』は小学校3~4年生、10歳頃に触れた作品でした。その頃が、人生でいちばんアニメを見ている時期だったんですよね。『魔神英雄伝ワタル』『聖闘士星矢』『天空戦記シュラト』『機動警察パトレイバー』……放送されているものを、とにかくやたらと見ていた記憶があります。その時期、隣の家に住んでいた兄弟と仲良くしていたんですけど、お兄ちゃんのタカシくんが僕の5つ上で、1973年生まれ。いわゆる「ファーストガンダム世代」 だったんです。

――『機動戦士ガンダム』のブームを子供の頃にリアルタイムで通過した世代ですね。
加藤 そう。野球が好きで、中日ドラゴンズを熱心に応援していたタカシくんが、ある日から突然、アニメの話ばかりするようになった。やがてタカシくんは『ガンダム』が好きだから『Newtype』を、弟のほうはそれと分ける形で『アニメージュ』を買うようになったんです。そして僕に「大ちゃんは『アニメディア』を買うといいと思うよ」なんてふたりですすめてきて……当時は何も考えていませんでしたけど、それって単に自分たちが読みたかっただけじゃん!って(笑)。

――小学生や中学生のあるあるですね。そうやって読める本を増やす。
加藤 それで小4から『アニメディア』を買わせられるわけですけども、面白い内容ではあるものの、なんか載っているアニメに偏りがあるんですよ(笑)。美少年だらけで、表紙は『トルーパー』や『天空戦記シュラト』なことが多い。当時の子供が大好きな『ドラゴンボールZ』とかじゃない。でも、読んでいるうちにいつの間にか、そういう作品が面白く思えてきてしまうんですよね。僕は名古屋出身なのですが、『トルーパー』は名古屋テレビ(メ~テレ)のサンライズアニメ枠(※)の作品でもあり、クレジットに「名古屋テレビ」と出るのがなんだか誇らしかったりもしたんです。

※1977年の『無敵超人ザンボット』に始まり、『機動戦士ガンダム』や勇者シリーズなど数々の名作を生んだ放送枠

――子供ながらにそこが気になるものでしたか。
加藤 僕のいちばん古い記憶は、2歳のときにメ~テレ枠で放送されていた『最強ロボ ダイオージャ』のテーマソングを歌っていたことなんです。そのくらい、あの枠が好きでした。……といった感じで思い入れはあるのですが、その分、作品の中身について思い出補正がかかっていたらイヤだなと思って、『トルーパー』もあえて見返さずに来たので、作品の中身についてはもう話せることがないのですが……。

クレジットに「名古屋テレビ」と

出るのが地元出身として

子供ながらに誇らしかった

――(笑)。タカシくん兄弟とはその後、どうだったんですか?
加藤 そのあとタカシくんからは『トルーパー』に出演していた声優さんたちが組んだユニット・NG5(※)のカセットテープを貸してもらうようになるんです。

※『鎧伝サムライトルーパー』で主役となる「五勇士」を演じた草尾 毅、佐々木望、竹村 拓、西村智博(現:朋紘)、中村大樹による声優ユニット

――伝説のユニットですね。報道番組で取り上げられたり、あまりの人気でライブで失神する人がいたとか。
加藤 NG5の曲を一時期はずっと聞いていて、今でも歌えるくらい、はっきりおぼえています。のちに仕事で関わった『プリティーシリーズ』で『プリティーリズム・オーロラドリーム』の春音あいらの父親役で佐々木望さん、『プリパラ』の真中らぁらの父親役で草尾 毅さんが出演されていたのを見たときはうれしかったですね。「サムライトルーパーがここにいる!」と(笑)。その後、さらにNG5の曲を聞き込んでいたことが『キラッとプリ☆チャン』のときにリンクするんです。

――どういうことですか?
加藤 ゲーム用のオリジナル曲を作るためのアイデアを考えていたときに、ふとNG5の『ミッドナイト・パーティ』という曲の記憶がよみがえってきたんです。「みんなで待ち合わせて博物館(ミュージアム)に遊びに行く」みたいな歌詞の曲なんですけど、そのオマージュにしようと。そっちが夜ならこっちは昼で、ピクニックに行こうじゃないか……と考えて『ハッピーピクニック』という曲を作りました。michitomoさんという素晴らしい作曲家が曲を作ってくださって、子供時代の憧れを仕事に落とし込むことができてよかったな、と。そんな出来事もあったので、『トルーパー』は僕の原点なんです……ということにしましょう(笑)。

――美しくまとまりました。『プリティーリズム』と同じタカラトミー(当時はタカラ)の作品ですしね。
加藤 おもちゃの展開はそうですね。『魔神英雄伝ワタル』もそう。こちらの監督だった井内秀治さん(故人)とも『プリティーリズム』でお仕事をご一緒できて、飲みに行けたりもしました。あの頃好きだったアニメに関わっていた方々と仕事で関わることができたのはありがたかったですね。タカシくんに自慢したい。何かの拍子にタカシくんがこの記事を読んで、僕のことを思い出してくれたらいいな(笑)。endmark

KATARIBE Profile

加藤大典

加藤大典

ゲームプロデューサー

かとうだいすけ 1978年生まれ。愛知県出身。株式会社シンソフィア所属のゲームプロデューサー。『プリティーリズム』から始まるシリーズすべてに参加し、『プリティーリズム』の「プリズムジャンプ」や『プリパラ』の「メイキングドラマ」、『キラッとプリ☆チャン』の「やってみた!」などの演出を手がけている。

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