Febri TALK 2022.07.13 │ 12:00

加藤大典 ゲームプロデューサー

②人生をともに過ごした
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』

アーケードゲーム『ワッチャプリマジ!』のプロデューサーであり、『KING OF PRISM』では「プリズムジャンプ原案」、『ワッチャプリマジ!』では「イリュージョン原案」などのクレジットでアニメにも参加している加藤大典。奇想の源流をたどるインタビュー連載の第2回は、人生に寄り添い続けた作品との出会いから「成仏」まで。

取材・文/前田 久

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を待っている間に結婚し、子供もできた

――2作目は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版(以下、エヴァ)』です。
加藤 Febri TALKで『エヴァンゲリオン』シリーズの話をする人は多いですけど、読んだら皆さん、すごく立派なことを話しておられるじゃないですか。僕にはそんな話はできませんし、下手したら、今日する中でもいちばんつまらない話になってしまうかもしれないんですけど……。

――いやいや、きっと大丈夫ですよ。第1回も面白かったですし。
加藤 第1回でお話ししたように、僕がアニメをいちばん見ていたのは小学生の頃。中~高校生時代はアニメを見ることを休んでいて、だからTVシリーズや旧劇場版が流行っていた頃は違うものにハマっていました。『STAR WARS』とアメコミです。でも、29歳のときだったかな、当時付き合っていた彼女と別れて、同棲も解消して、ひとりで暇になって、なんだかすごく寂しくなったんですよ。それで急に「人はこういうときに『エヴァ』を見るのかもしれない……」と思って。

――圧倒的に正しいです!(笑)
加藤 Yahoo!のトップニュースで新劇場版が制作されることも知って、近々1作目の『序』が公開されるというので、とにかくこれを1回見てみようと思ったんです。そうしたら、面白いんですよ。しかもサブタイトルが『YOU ARE (NOT) ALONE』。これは俺のことじゃないか!と(笑)。そこから一気にハマって、旧シリーズのDVDを全巻買いました。その頃、格闘技をやっていて、大先輩の格闘家の桜庭和志さんと夜な夜な飲んでいたんですけど、そこでも『エヴァ』上映会をしていて。そうしたら参加メンバーがみんなハマって。桜庭さんなんて(2作目の)『破』が公開されるときには、試合の入場でエヴァ初号機のかぶりものをするようにまでなっちゃって。

――桜庭選手のあれは加藤さんの影響だったんですね。『破』の頃の加藤さん自身の人生は?
加藤 僕は『プリティーリズム』のゲームを作り始めた頃でした。プロトタイプの開発の最初の山場を迎えるあたりでしたね。開発のマイルストンを越えるごとに「『破』を見に行こう!」と盛り上がって、結局4~5回は劇場に足を運んでいると思います。見るたびに「俺もあんな風に、シンジみたいに頑張りたいな」と思っていたんです。

――いい話です……。
加藤 『破』のサブタイトルは『YOU CAN (NOT) ADVANCE』で『YOU ARE (NOT) ALONE』から進化しているんですよね。こういうところがまたね、大事なんです。そこから時を経て、2012年。『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』の打ち上げのとき、その後、結婚することになる人と飲んでいて「映画に行きましょうか」という話になって、選んだのが3作目の『Q』でした。『Q』を一緒に見たことをきっかけに付き合い始めたんです。そして完結編の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を待っている間に結婚し、子供もでき、現在に至る。『エヴァ』のおかげで30歳手前の大失恋から立ち直って、ここまでやって来られました、という話です。……やっぱり、あんまり面白くないでしょう?

作品世界に入り込んでしまって

出てくるキャラクター

ひとりひとりをまるで

友達みたいに語ることができる

――面白いですよ! 『エヴァ』完結までの長い時間が、加藤さんの人生とシンクロしていた。
加藤 『シン』の最後にマリが出てきたじゃないですか。『序』のときにシンジのそばにいたのは綾波だけれども、最後まで一緒にいたのはマリ。そうなるなんて、『序』を見たときにはまるでわからなかった。これはまさに人生そのものだなって。僕も『序』の頃は、今の相手と結婚するなんて思ってもみなかったわけで、つまり人生に伏線はないんだなと。見終えた瞬間、成仏したなと感じました。

――成仏?
加藤 これまで『エヴァ』は何度も繰り返し見てきたのに、『シン・エヴァ』は最初にひとりで見て、そのあとケジメとして奥さんとも一緒に行ったら、その2回で満足しちゃったんですよね。その後、配信が始まっても、まったく見る気がしないんです。きっと見たら面白いんだけれども、もう気持ちが成仏しちゃったんですよ。もう見返さなくても大丈夫、と思えるくらいにいい作品でした。僕に限らず、『エヴァ』は誰かの人生を変えられる作品じゃないか。そういう作品を作れる庵野(秀明)さんみたいな人は、すごいなと思いますね。

――たしかに。
加藤 僕はプロレスが好きなのですが、いいプロレスラーはリング上でのたたずまいだけで「この人はすごい」と伝わってくる。それだけで試合が成立してしまうんですよね。アニメもそういうものだと思うんです。いい脚本だとか、いい作画だとか、いい絵コンテだとか、それって結局は、作っている人の意気込みが伝わってきて共感できるかどうか。『エヴァ』のすごさはそこじゃないかなと。庵野さんという人が、すべての要素に反映されている。出てくるキャラクターひとりひとりを、まるで自分の友達みたいな感じで語ることができるじゃないですか。他のアニメ作品でこうなることって、なかなかない。好きな作品、面白い作品であっても、もっと傍観者っぽくなるというか。でも、『エヴァ』だけは作品世界に入り込んでしまって、そしてみんな、庵野さん自身まで知った気になってしまうんですよね。面識もないのに「庵野はさぁ……」となれなれしく話し出してしまうような。

――ありますね、そういうところ。
加藤 そこまでできるのは、本当に作り手としてすごいなと思います。なんだか上からの物言いになってしまいますけど……。自分の中から出てくるものを広く受け入れられる作品に仕上げることにおいて、庵野さんは世界最高峰の作り手なんじゃないかなと思っています。endmark

KATARIBE Profile

加藤大典

加藤大典

ゲームプロデューサー

かとうだいすけ 1978年生まれ。愛知県出身。株式会社シンソフィア所属のゲームプロデューサー。『プリティーリズム』から始まるシリーズすべてに参加し、『プリティーリズム』の「プリズムジャンプ」や『プリパラ』の「メイキングドラマ」、『キラッとプリ☆チャン』の「やってみた!」などの演出を手がけている。

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