――物語の結末を知らないまま演じたとのことですが、結末がわかっていたほうが演じやすいものですか？
宮本　たとえば、原作がある作品の場合、原作を読み込む人とあえて読まない人に分かれると思うんですけど、私は全部読んでからやるタイプだったんです。でも今回、1話ずつ台本を渡されてやっていったときに、お芝居をうまく持っていきやすいことに気づきました。
上田　私は……もし裕太を演じるのであれば、先の展開は絶対に知りたくなかったと思うけど、アカネとしては知りたかったですね。本心が後半にどんどん吐露されるので、その軸があると、前半の取り繕い方とかが全然違っていたと思います。

――声優のタイプの違いで言うと、役を客観的、理論的に作るタイプと、感覚的に憑依させるタイプがあるのかなと思うのですが……上田さんはブースの中で孤立するくらい入り込んでいたということは、憑依型なのでしょうか？
宮本　麗ちゃんは憑依型だと、いろいろな方がおっしゃっていますね。
上田　言われるよねぇ。自分では全然わからないんですけど、たしかに考えないほうがうまくいくことが多くて。もちろん、基盤としてのロジックは必ず作るんですけど、そのうえで、現場で「これに変えてみて」とドンって背中を押されたときのテイクのほうが良かったりすることが多いんです。多分、感覚で構築して発信することのほうが得意なんですよね。意識はしていないですし、それを憑依型と呼ぶのかは、ちょっとわからないけど……。
宮本　アカネ役に入り込んでシュンとしている麗ちゃんを見たあとに、違う作品で普通に明るくしている麗ちゃんを見て、「あ、上田麗奈さんって、こういう一面もあるんだ」と思ったくらいなので、役によって別人に見えるくらい入り込んでいると思います。

――宮本さんはどちらでしょう？
宮本　自分としては憑依型になりたいんですけど、映像を見たときに、キャラがどういう姿勢でいて、どういう発声をするかとかいろいろ考えてしまうので、憑依型ではないのだろうなって思います。麗ちゃんは、そういう部分を自然にできている感じがあって……。
上田　たしかに姿勢とかは無意識に感じていて、あとで言われてから「ああ、そういえばそう思ってやっていた」って気づくことが多いかも。侑芽ちゃんは（斉藤）壮馬さんと似ているかもしれない。頭が良くて、客観的で、自分以外のことも見えているから細かいことまで気づける。
宮本　ええー、全然……。でも、壮馬さんのお芝居のスタンスは尊敬しています。以前、細かい部分にまで目を配る姿を目の当たりにして「すごい！」と思ったことがあったので、意識して見習うようにしています。
上田　六花と侑芽ちゃんは似ているから、六花だけを見ていると憑依型に見えるんだけど、他の作品での侑芽ちゃんを見ると、すごく頭がいいんだなと思います。

――終盤はふたりが絡む場面も多いですが、お互いに演技についての相談などはしましたか？
宮本　最終回の最後の掛け合いのときだけは、少し話しましたよね。もう1回やろうか、とか。
上田　そう。粘っちゃって。
宮本　私もやり直したくて。でも、ふたりで話したのはそのときくらいですよね。
上田　そうだね。侑芽ちゃんとは全然……。やっぱり、アカネとして六花が好きすぎるからこそ、近くにいてはいけないという気持ちがありました。スタジオで侑芽ちゃんの隣に裕太（役の広瀬裕也氏）が見えるんですけど、六花を裕太に取られたような気持ちになって、「なんだ、コイツ」って嫉妬心みたいなものを持ったりして（笑）。
宮本　やっぱり憑依型ですよね。

――劇中のアカネは、六花を巡って裕太に嫉妬しているんでしょうか？
上田　アカネは、他人とお互いに思い合える関係をリアルで築けなかったから、この世界でだけでも築きたいという思いが根本にあります。それもあって「大好きな六花が私以外の人と仲良くしている姿」を見せられるのが嫌で、苦しくてたまらないんです。だから、六花と親しくしているように見える裕太には苛立っていたんじゃないかと思います。それだけでなく、六花に対しても「他の人と楽しく会話できるじゃん、みんなと仲良くしているじゃん、私だけじゃないじゃん」みたいな感情になって、優しくしてくれたのに皮肉っぽいことを言ってしまったり。

――独占欲が強いというか……。
上田　アカネって赤ちゃんなんです。ずっと枯渇していて、「お腹が空いた！ なんでくれない!?」って自分の感情をストレートに爆発させてしまう。

――上田さんは怪獣の声も担当していますが、アカネの分身ということで、同じスタンスで演じていたんですか？
上田　怪獣の声はアカネの感情の表現ではあるんですけど、ディレクションで「あとから加工して怪獣の声にするので、抑揚をつけないで、発声練習みたいにやってください」とも言われていて、最初はそういう風にやっていました。でも、話が進むにつれて、抑揚をつけずに機械的に演じることができなくなって、すごく感情的な音になってしまって……それもうまく加工していただいて、怪獣の声になりました。

――終盤の怪獣の声は悲愴で痛々しくて、聞いていて辛くなるくらいでした。
上田　怪獣として言う言葉はスタッフさんが決めていて、最初は「死ね」とか「殺す」とか、攻撃的ではあっても冷静な部分が残っているセリフが多かったんですけど、後半は「行かないで」とか、泣いているだけ、笑っているだけとか、すごく感情的な内容になっていって。それが演技の変化につながったんだと思います。
宮本　怪獣の声は、毎回、収録の最後に録っていたんですけど、六花として後ろで聞いていて、「ああ、ごめん」という気持ちでした。回を重ねるごとに麗ちゃんがヒートアップしていくのもわかりましたし、辛かったです。
上田　六花が謝ることなんか何もないんだけどね。そこが、六花のいいとこだよね。

おふたりのインタビューの続きは書籍『SSSS.DYNAZENON ＆GRIDMAN ヒロインアーカイブ』に収録。