TOPICS 2026.08.25 │ 12:00

「楽園追放 心のレゾナンス 齋藤将嗣デザインワークス」発売決定記念
『楽園追放』の原点①

映画『楽園追放 心のレゾナンス』のキャラクターデザインを務める齋藤将嗣の仕事をまとめた書籍「楽園追放 心のレゾナンス 齋藤将嗣デザインワークス」が11月18日に発売決定。ここではそれを記念して、2014年発売の書籍「楽園追放 Expelled from Paradise 齋藤将嗣デザインワークス」に掲載された、『楽園追放』の原点を語るメインスタッフ3人(水島精二、野口光一、齋藤将嗣)による鼎談の一部をお届けしよう。

※「楽園追放 心のレゾナンス 齋藤将嗣デザインワークス」の予約はこちら

取材・文/森 樹

アンジェラの露出が多めなのは、虚淵さんのおかげ!?

齋藤 僕が水島監督に初めてお会いしたのは、本当に最初の打ち合わせのときですね。監督と上津(康義。本作デザイナー)さん、それに虚淵(玄)さんと野口さんがいて。
水島 そのときはもう齋藤くんで行くというムードになっているときですね。
――では、その打ち合わせのときに、あらためてキャラクターデザインを考えていくことになったんですね。
齋藤 そうですね。企画書のヤツはボツなので、新たに考えてくださいと。
水島 すでにシナリオは頭のブロックだけは出来上がっていたよね?
野口 ちょうど出来上がったくらいでしたね。
水島 映画でいうと頭の5~6分のところまで進めてもらって、そこから先はシナリオと並行してキャラクターも煮詰めていこうとしました。そのタイミングで描いてもらったアンジェラは、子供っぽいというか、綾波レイみたいで(笑)。あとは、服装をどうするかを話し合いましたね。
齋藤 ハイレグ問題がありましたね。もともと、太ももまで覆い尽くしているコスチュームもあったんですよ。東映アニメさんが過激なのを嫌がって、肌を隠す方向だったんですけど……。
水島 それを虚淵さんが「何を言ってるんですか!」って檄を飛ばし(笑)。でも、彼女の露出が多めなのは、そもそも登場人物が少ないし、作品世界においてディンゴとの差をどこに出すかという部分もありましたからね。
齋藤 アンジェラに関しては、僕がSNSにアップしていたイラストを水島監督がチェックしてくださっていて、「こういうテイストで」と具体的に言ってくれたのを覚えています。
水島 それは齋藤くんのイラストを見て、プロポーションとか絵のタッチをもともと持っている絵のセンスに近づけたいと思ったんですよね。

――水島監督と作業をしていく中で、印象的だったことはありましたか?
齋藤 アニメーションのデザインに関わらせていただくのは『楽園追放』が初めてで、いろいろ手厳しい意見もいただきました。それまで僕はゲーム会社にいましたが、デザイン作業にかかわったことがなかったので、一から勉強させていただいた感じでしたね。
水島 これまでそういう仕事をしてきたわけではないので、彼は本当に自由なんですよね。修正指示を出していないところを変えちゃったり、「清書してきました」と言って持ってきたのが微妙に違うデザインになっていることが多くて。
齋藤 今はもう、そういうことはないです(笑)。
水島 絵はすごくうまいし魅力的なんだけれども、仕事の作法という部分で突っ込みどころ満載で。しかも、彼は突っ込んでも大丈夫なタイプなので、作業の最後のほうはひどい言われようだった(笑)。
齋藤 たぶんここ2~3年で精神的にもすごく成長をしたというか、鍛えられました(笑)。
水島 ゲーム会社のときはどういう仕事だったの?
齋藤 3DCGの小物のモデリングばっかりやっていましたね、携帯電話とか。
水島 じゃあ、齋藤くんはSNS活動の結果、大きい話がきたタイプなんだね。シンデレラボーイだ(笑)。

当初、「顔は2Dの作画で、身体は3DCG」という話も

――齋藤さんがSNSにイラストをアップしていたとき、プロへの欲というものはありましたか?
齋藤 一切なかったですね。そんなことは都市伝説だと思っていましたから(笑)。
水島 逆に言うと、野口さんはいろいろなチャンネルを持っているのにSNSで「どこの誰かもわからない」人をピックアップしたのもすごい話ですね。
野口 SNS界隈ですでに有名だった人にコンタクトしてやり取りをしたときに、こういう人はたくさんいるんじゃないかと思ったんですよね。私のいる部署が新しい部署だったというのも大きいですし、個人的にCG関係者とのつながりはあっても、いわゆる2Dアニメの人たちは一から探すようなものだったので、もうフラットなかたちで探していこうと。
水島 でも、3DCGのことをよく知っている人が、齋藤くんの複雑な造形のキャラを選ぶというのもすごく不思議でしたね。
野口 まず単純に絵が魅力的だったんですよね。そこが大きかったです。

――「CGで動かさなければならない」ということも考えながらデザイン作業を進めたのでしょうか?
水島 デザインをチェックするにあたっては、3Dになるからこうしようとは特に考えていなかったですね。
齋藤 顔は2Dの作画で、身体は3DCGにしましょうという話が最初に出ていて。身体が3DCGでできるんだったら、アンジェラのコスチュームには「ひねり」を入れようと思ったくらいですね。
水島 あとで「このひねられている素材は何だ?」っていう問題にぶち当たるわけなんですが(笑)。齋藤くんが「金属です」っていうんだけど、金属は曲がらないから!って(笑)。
齋藤 肘関節を覆っているところですよね。
水島 2Dの作画だと雰囲気で描けちゃうのですが、3DCGだと「どうするんだ」という話になって、スカルプチャーデザインの浅井(真紀)くんの検証の段階で、この関節が可動するには切れ込みがこっち側に入っていないとダメだよとか。そのあたりの細かい検証はやりましたね。

アンジェラと違い、ディンゴは「リアルで」という依頼だった

――ディンゴはいかがでしたか?
水島 序盤は飄々としたキャラクターなのであまりわからなくって、シナリオが固まるまではデザインを止めていました。
齋藤 アンジェラとは違って、ディンゴは「リアルで」と依頼されました。だけど、最初の頃に提案したものは、リアルすぎると言われて。
水島 リアルすぎるというか、写真から起こしたような絵を描いてきたので、そうじゃないよと。一方で、虚淵さんのシナリオを読みながら、どうしたら彼をうまく演出できるかなとずっと考えていて。その中で若返らせたり、三枚目にしてみたりして、現在のディンゴが生まれました。そうするとディンゴの声もどんどん明確になっていって、三木(眞一郎)さんが浮かんだんですね。ディンゴというキャラクターの「内に秘めている熱さ」を表現できそうだなと思って。アンジェラは釘宮(理恵)さんだったので、ふたりの芝居の良さを実感している身としては、これは成立するなと。それに合わせてデザインの微調整をしました。
齋藤 三木さんは確かにイメージに合う感じでしたね。

――キャラクターをデザインするうえで、声優のイメージがデザインに反映されるのはよくあることなのでしょうか。
水島 あると思いますよ。釘宮さんが女の子をやるとなれば、どんな風にしゃべるのか、なんとなくわかるじゃないですか。そうすると皆でイメージをつかみやすいんですよ。それはシナリオもデザインもそうですよね。今回だとシナリオと絵が同時進行だったので、たとえば、シナリオを刺激するためにデザインを描いてもらったりとか。その中で「ディンゴに帽子を被せたいよね」とか無邪気に言っていたんですけど、帽子を1個作るとモデルを作るのにコストがいくらかかるのかをまったく考えていなかった(笑)。でも、それを知っていたはずの野口さんが何も注意をしなかった(笑)。
野口 デザイン段階でコスト面の話をして、自主的にセーブがかかるのは避けたかったんですよ。それでつまらないものになるのは嫌じゃないですか。endmark

第2回(8/26更新予定)に続く
齋藤将嗣
さいとうまさつぐ イラストレーター/デザイナー。キャラクターデザインを手がけた主な作品として『ゼノブレイド2』『ゼノブレイド3』『楽園追放』『楽園追放 心のレゾナンス』『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』『怪獣デコード アイダラの指輪』など。
水島精二
みずしませいじ アニメーション監督/音楽プロデューサー。主な監督作として『鋼の錬金術師』シリーズ、『機動戦士ガンダム00』シリーズ、『楽園追放』『楽園追放 心のレゾナンス』など。また、『アイゼンフリューゲル』では総監督を務める。
野口光一
のぐちこういち 東映アニメーションに所属する企画部プロデューサー。主なプロデュース作品として『楽園追放』『正解するカド』『楽園追放 心のレゾナンス』『怪獣デコード アイダラの指輪』など。VFXクリエイターとしても活躍している。
書籍情報

「楽園追放 心のレゾナンス 齋藤将嗣デザインワークス」
 
2026年11月13日公開の劇場オリジナルアニメ「楽園追放 心のレゾナンス」のキャラクターデザインを手がける齋藤将嗣の仕事集。魅力あふれるキャラクターデザインの数々をラフ稿や初期案も含め、コメント付きで多数掲載!
 
また、前作書籍「楽園追放 Expelled from Paradise 齋藤将嗣デザインワークス」を完全再録し、書籍発売以降に発表されたアンジェラのイラストも多数追加収録。カバーイラストはアンジェラとガブリエルの描き下ろし!
 
予約受付中
 

  • ©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ2
  • ©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ