――第10話ではサトノクラウンの国内GⅠ初勝利が描かれましたが、振り返っての印象を聞かせてください。
鈴代　クラちゃん（サトノクラウン）は、第1話からずっと「サトノ家に勝利を」と言い続けていて。まわりからも「クラウンなら勝てる」と期待されていて、実力も自信もあるのにあと一歩が届かないというレースが続いてきましたよね。それを経ての宝塚記念での勝利だったので、台本を見たときはウルッときちゃいました。

――とくに印象深いセリフやシーンはありますか？
鈴代　ピンポイントで「このセリフやこのシーン」というよりは、トータルで見てすごく印象的な回という感覚です。ただ、スタート前の「国内でのGⅠ勝利。今日ここで決める」というセリフは、クラちゃんがずっと言い続けてきたことだったので、ようやくそれが達成できたことがすごくうれしかったです。

――勝ちきれなかったこれまでのレースと比べて、宝塚記念ではレース中のお芝居に変化をつけたりしたのでしょうか？
鈴代　意識して変えたところはありません。今までのレースシーンでクラちゃんが映るのはワンシーンだったり、（カメラが）引いているシーンだったりすることが多かった印象なのですが、キタサンブラックと比べると走っている芝居をする場面はあまり多くなかったので（キタサンブラック役の）矢野妃菜喜ちゃんたちのお芝居を見て、「私も早く演じたいな」と思っていました。なので、第10話で「よし、きた！」と思ったのですが、実際に演じてみたら、めちゃくちゃしんどくて。初めて過呼吸のようになり…… 自分の体力のなさを痛感しました。

――かなり体力も使うアフレコだったのですね。
鈴代　アフレコの前日は公園で少し走って、（息芝居は）こういう感じかな、と準備をしていたんです。でも、スタジオで他の役者さんの熱いお芝居を聞いていたら、自分も限界突破したい、という気持ちが強くなっていきました。私は、あんなにかわいいウマ娘たちが、がむしゃらにすべてを賭けて走る『ウマ娘』のレースシーンが大好きなので、自分も絶対に出し惜しみしてはいけないと思いましたし、振り返ってみても、自分なりにすべてを出し尽くせたかなと思っています。レースにも勝てましたから、そういう意味でも達成感のようなものがありました。

――オーディションや役が決まった際のことで、思い出に残っているのは？
鈴代　オーディションではサトノクラウンの他にも数キャラクター、受けさせていただいたんですけど、その中でもテンション感というか、フィーリングがいちばん合いそうだなと思ったのがクラちゃんだったんです。ただ、スタジオオーディションに進んで、監督さんやスタッフさんの前で演じたときは、元気になりすぎちゃって。クラちゃんの「元気だけど落ち着いている」というバランスが難しかったです。

――相反する特徴なので、表現が難しそうです。
鈴代　私は「クラちゃん」と呼んでいるんですけど、まわりからはどちらかというと「サトノクラウンさん」と呼ばれるほうが似合うような、品があって余裕を感じるお姉さんだと思っていて。それでいて「クラちゃん」と呼べるくらいの親しみやすさもあるのが素敵なところだと感じていたので、ちょうどいいポイントを探して試行錯誤した記憶があります。

――実際に役が決まったときは、どのように思いましたか？
鈴代　「やっぱり！」と思いました……というのは冗談で、もちろんすごくうれしかったです（笑）。（制作スタジオの）スタジオKAIさんや及川（啓）監督には他の作品でもお世話になっていたので、またご一緒させていただけるという意味でもうれしかったですね。その作品で演じたキャラクターとクラちゃんはタイプがけっこう違う女の子だったので、また新しい面を見せられるように頑張ろうとも思いました。

――サトノダイヤモンド役の立花日菜さん、サトノ家のトレーナー役の長谷川明子さん、そして鈴代さんは所属事務所が同じですよね。まるでサトノ家だなと思いました（笑）。
鈴代　そうなんですよ（笑）。しかも、クラちゃんはダイヤ（サトノダイヤモンド）の少しお姉ちゃん的ポジションなんですけど、私も日菜ちゃんの一期上なんです。これもご縁だし、自然にそういう関係性が出せればいいなと思いました。クラちゃん役に決まったことを最初に話したのも日菜ちゃんだったんです。「やったー！」と喜んでくれましたね（笑）。