Febri TALK 2021.04.14 │ 12:00

宇木敦哉 映像作家/イラストレーター

②深夜アニメを見る
きっかけとなった『舞-HiME』

クールな語り口と唯一無二の世界観&ビジュアルデザインが、絶大な支持を集める宇木監督。そのアニメ遍歴を追うインタビュー連載の第2回は、大学時代に卒業制作のかたわらで見ていたという『舞-HiME』について。

取材・文/宮 昌太朗

女の子とクリーチャーの組み合わせに惹かれたのかなと思います

――2本目に挙げていただいた『舞-HiME』ですが、この作品を見たのは大学生の頃ですか?
宇木 卒業してからか在学中か、よく覚えていないんですけど……。北海道では深夜アニメがあまり放送されていなかったこともあって、そこまで熱心には見ていなかったんです。ただ、『舞-HiME』は、夜中にたまたま最初のほうのエピソードを見て、それがけっこう面白かったんです。前半はわりとありがちな、学園能力バトルっぽい感じで進むんですけど、途中から少し雰囲気が変わって、仲間同士のバトルロワイアルみたいな展開になる。そこから本格的にハマって、他の深夜アニメも見るようになりました。

――どこがそんなに面白かったんでしょうか? 『天空のエスカフローネ』のようなロボットものでもないですし……。
宇木 そうですね。ただ、主人公たちがバトルのときに『ポケットモンスター』みたいな感じでクリーチャーを使うんですよ。そのクリーチャーにちょっとメカっぽい雰囲気があった気がします。まあ、理由はわからないですけど、なぜかハマっていましたね(笑)。昔、自分のWebサイトを持っていたんですけど、そこに自分で描いたファンアートを載せたり……。

――ああ、そうでした!
宇木 当時の絵は全部消しちゃったので、自分のハードディスクにしか残していないんですけど(笑)。

――やっぱり、女の子とクリーチャーの組み合わせに惹かれたんでしょうか?
宇木 それはあると思います(笑)。モンスターを使役して戦う、みたいな組み合わせが面白いなと思ったのは、たぶん『ポケモン』だと思うんですよね。『センコロール』もそうでしたけど……。

――前回、『真・女神転生』の話が出てきましたけど、宇木さんのなかには何か、この世ならざるものに対する憧れみたいなものがあるのかな、という気もします。
宇木 どうなんでしょうね。自分ではうまく説明できないですけど……。ただ、現実的ではないものを描きたいという欲求みたいなものはあるかもしれないです。

絵はマンガからの影響が

大きいと思います

鳥山明先生と

田島昭宇さんですね

――なるほど。先ほど『舞-HiME』がきっかけになって、他の深夜アニメも見るようになったという話がありましたけども、具体的にはどんな作品を見ていたのでしょうか?
宇木 具体的な作品名はパッとは思い浮かばないんですけど、とりあえずオンエアをチェックしてみて、面白そうなものがあったら見てみるって感じでしたね。そのときは大学5年生だったんですけど、大学にはもう行かなくなっていて、夜な夜な、卒業制作の短編ムービーをコツコツ作っている、という状況で。その夜のお供に深夜アニメを流していたんですよ。で、朝まで作業していると『ふたりはプリキュア』が始まる、みたいな。

――あはは、なるほど(笑)。
宇木 あと、ちょうど『舞-HiME』と放送時期が同じ頃じゃなかったかな。大学の同じゼミにmebaeさんがいたんですけど、mebaeさんは『蒼穹のファフナー』派だったような記憶があります。

――じゃあ、情報交換もしつつ。
宇木 そうですね。まあ、僕が『舞-HiME』の話をしても「ふーん……」くらいの反応でしたけど(笑)。あと大学の研究室に、誰かの所有物なのか借りてきたものなのかどちらかだと思うんですけど、アニメのソフトが無造作に置かれていたので、それを見たり。『フリクリ』とか『幻魔大戦』とか。平松(禎史)さんが作画監督をやられた『フリクリ』の第3話は、すごく好きだった記憶があります。

――当時、卒業制作と並行してアニメを見ていたわけですよね。何か影響を受けたなと感じる作品はありますか?
宇木 何かしらの影響はある気もするんですけど、絵はマンガからのほうが影響が大きいかなと思います。

――マンガというと……。
宇木 鳥山明先生と田島昭宇さんですね。田島さんはやっぱり『魍魎戦記MADARA』が本当に好きで、自分でもこういう絵柄を描きたいと思っていたんです。それこそ中学の頃かな。雑誌『コミッカーズ』で田島さんの描き方講座みたいなのを見て、水彩インクに挑戦したり。全然、田島さんのように描けないんですけど(笑)。

――『魍魎戦記MADARA』は、もともとゲーム雑誌(『マル勝スーパーファミコン』)に連載されていましたよね。
宇木 最初に読んだのは、そこだったと思います。ゲーム雑誌を買ったらマンガが載っていて、それがきっかけで読み始めたっていう。だからやっぱり、ゲームとマンガから受けた影響が大きいですね。endmark

KATARIBE Profile

宇木敦哉

宇木敦哉

映像作家/イラストレーター

うきあつや 北海道出身。2009年に初めての監督作『センコロール』、2019年に続編と連結させた新作『センコロール コネクト』が公開。中村健治監督の『つり球』など、キャラクターデザイナー・イラストレーターとしても活躍する。最新作は22/7(ナナブンノニジュウニ)の7thシングル「僕が持ってるものなら」のMV。

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