「つかみ」を担当するからには自分がカット数を持たなければ
――おふたりが本作に参加した経緯から教えてください。まず、みやちさんはメインアニメーターとして声がかかったかと思いますが……。
みやち そうですね。『ヤマノススメ Next Summit(以下、Next Summit)』の制作が終了してすぐにプロデューサーの村上(光)さんからお声がけいただいて。また同じ座組の作品に参加したかったことはもちろん、塀先生の存在も認識していたので、とてもうれしかったですね。
銀さん 僕も村上さんからお声がけいただいたんですけど……当時はまだ何話にどういうかたちで参加するのかは決まっていなくて。というのも、村上さんとの縁は、僕が『ヤマノススメ』シリーズに参加したかったことがきっかけなんですよ。でも、つながったときには村上さんは『Next Summit』から離れていて。なので、『上伊那ぼたん』にお声がけいただいたことは、とてもうれしかったですね。
――本作は吉成鋼さんが手がけたキャラクターデザインこそ存在しますが、クリエイターの個性が炸裂した画が魅力のひとつになっています。担当したエピソードに対して、どのように取り組もうと考えましたか?
みやち そもそも当初の依頼は、第1話の作画監督としてではなく、一原画マンとしてだったんですよね。そのときは自分の絵柄を出していこうと思っていたんですけど……。
――作画監督になってしまったと。
みやち そうなれば、作品の「つかみ」となる重要なエピソードですから、バランスをしっかり取っていかなければ、と。監督の佐久間(貴史)さんからは「自由にやってください」と言われていたものの、吉成さんの画のニュアンスもしっかり参考にしつつ、自分の絵柄との中間になるように意識しました。結果として第1話はAパートからBパート前半のかなでが出てくる直前まではひとりで原画を担当していたので、統一性が保てたと思っています。
――作画監督だけではなく、141カットも原画を担当したというのは、なかなか大変だったかと思いますが……。
みやち この作品で作画監督をやるからには、自分がある程度のカット数を持つしかないと思ったんです。さらに吉成さんの絵柄ないし塀先生の絵柄に寄せるのであれば、自分がどんどんやらなければ、と。
――銀さんはいかがですか?
銀さん 第3話の絵コンテ・作画監督を務めることが決まる前に、制作方針をうかがっていたんですよ。村上さんもラインプロデューサーの藤田(規聖)さんも『ヤマノススメ』シリーズに携わっており、「自分のやりたいことに挑戦してみては?」と言っていただいたということは、『ヤマノススメ』のときのようにやりたいことをやってもいいのだなと認識しました。
みやち 第1話が放送された際に「『ヤマノススメ』を彷彿させる」みたいな感想が視聴者さんから上がっていましたけど、その本領発揮ともいえるエピソードでしたよね。自分の隣の席が動画検査を担当している後山(汰央)くんなので、第3話の原画を見て驚いていました。
銀さん いや、でも自分も副監督の戸澤(俊太郎)さんの担当回を見たら、演出表現としての濃度で負けていて……。
みやち いや、そんな演出バトルじゃないんだから(笑)。
第3話は「原動画」の面白さを味わってほしい
――第3話は、銀さんらしいマンガタッチ的な絵柄が冴えわたる映像になっています。一方で、シャフトの演出を彷彿とさせるテロップワークも入っていましたね。
銀さん 絵コンテを描いた時点で現在のかたちにかなり近いプランになっていたんですよ。たとえば、温泉に着くシーンがシネマスコープになっているのは『幸腹グラフィティ』を参考にしていたり……。自分が惹かれた、インパクトのある映像をとにかく詰め込もうと思いながらコンテを切った結果、こうなりました。
――他に特筆すべきことといえば、第3話では銀さんが原画を担当しているのみならず、原画と動画を一貫して担当する「原動画」としてクレジットされていたことです。
銀さん 『ルックバック』を見て、原画の線をそのまま動画として再利用する作り方に憧れていたんですよ。なので、自分のパートは原動画として一貫してやらせていただいたんです。絵柄もガッツリと線をつなげて描くものではなかったので、このスタイルのほうがなじむだろうと。とはいえ、こうして作ったことで、仕上げさんにはご迷惑をおかけしたのですが……。
藤田 『ひゃくえむ。』にも参加されて、原動画にも慣れていたナタリーさんへ仕上げ作業を依頼することができたので、なんとか完成しました……! また、銀さんの原動画以外の2000枚ほどの枚数を後山さんがひとりで動画作業するという執念には驚かされました。
銀さん この映像を見て、原動画だからこその面白さが視聴者だけではなく、他のクリエイターにも伝わればいいなと思っています。
――そんな第1話と第3話の中で、とくに見どころだと意識したカットを教えてください。
みやち 自分が担当したカットであれば、Bパートの頭ですね。ぼたんといぶきがふたりきりになるシーンは、やり取りをとにかくかわいく描けるよう意識していました。また、作画監督としては、アバンとBパート終盤ですね。アバンはとくにぼたんが走る一連のシーン。新海(良佑)さんの原画ですが、スケジュールが厳しい中でも大事にしたかったので、かなりギリギリまで粘りました。Bパート終盤のかなでとぼたんのやりとりの部分は、喫煙シーンがきーくんさんで、談話室に入ってからがにこオムさん、日本酒を注ぐあたりからが土佐岡(加奈)さんの原画なのですが、一連の動きとして視聴者さんの心をつかめるようにしなければ!と考えていました。
銀さん Bパートは、とくに郡上先輩がかわいくなるカットが好きでした。
みやち 土佐岡さんのカットですね。あそこは狙い通りのものが上がってきて、作画監督修正はほとんど入れずに済みましたね。
銀さん 第3話なら色鉛筆タッチのところでしょうか。アナログレコードの素晴らしさに言及しているシーンですから、ここはアナログの力で魅せたかったんです。また、自分が原動画を担当していないカットでいうと、ぼたんが朝、階段を降りていくところですね。かぶきゅうさんが頑張ってくださいました。
みやち 後半のいぶきが海風に当たり髪がなびくシーンも素晴らしかったですね。
銀さん そこもかぶきゅうさんですね。
みやち あのシーンは、後山くんが「動画を描くのが大変……!」と言っていました(笑)。
――第4話以降も『上伊那ぼたん』の放送が楽しみですが、おふたりがとくに期待しているポイントをお教えください。
みやち 各話色が異なるので、そのエピソードを担当された方の個性も含めてどうなっていくのか楽しみです!
銀さん 僕はやはり衝撃を受けた戸澤さんの担当エピソードの放送が楽しみですね。皆さんもぜひ驚いていただければ……!![]()
- みやち
- 大学時代よりアニメーターとして活躍。現在はソワネ所属。主な参加作品に『ヤマノススメ サードシーズン』『ヤマノススメ Next Summit』(作画監督)、『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』『お兄ちゃんはおしまい!』(総作画監督)など。
- 銀さん
- ぎんさん 主な参加作品に『その着せ替え人形は恋をする』『アンデッドアンラック』『mono』(作画監督)、『千歳くんはラムネ瓶のなか』(絵コンテ)、『淡島百景』(絵コンテ、作画監督)など。


























