Febri TALK 2021.04.16 │ 12:00

宇木敦哉 映像作家/イラストレーター

③男の子の絵をメインで描いた
『つり球』の経験

連載第3回で取り上げるのは、宇木自身がキャラクターデザインを手がけた『つり球』。自分の監督作と参加した作品の違い、そしてアニメ以上に宇木に影響を受けたというゲームについて、存分に語ってもらった。

取材・文/宮 昌太朗

いろいろなものから少しずつ影響を受けて今の自分の作品がある

――ゲームから受けた影響が大きいという話があったんですけども、なかでも大きかったのはやはり『ドラゴンクエスト』ですか?
宇木 そうですね。単純に、最初に触れたロールプレイングゲームだったというのもあるんですけど、それに加えて鳥山明先生の絵が好きだったんです。僕のなかでは『ドラゴンクエストV』とか『クロノトリガー』あたりの鳥山先生の絵が本当に好きで、絵から勢いみたいなものをすごく感じる。当時はまだアナログで描かれていたと思うんですけど、アナログならではの情報量があって、めちゃくちゃ憧れていました。

――他に好きだったゲームというと?
宇木 前にもタイトルを挙げましたけど『真・女神転生』とか『伝説のオウガバトル』、あとは『ファイナルファンタジー』。『ファイナルファンタジー』は攻略本に武器やアイテムの絵がたくさん載っていたので、それを一生懸命に模写して。

――そこでもやっぱり武器なんですね(笑)。3本目に挙げていただいたのは、中村健治監督の『つり球』。宇木さん自身、キャラクターデザインとして参加していますね。
宇木 『センコロール』の制作が終わったあと、続編を作ることは決まっていたんですけど、2年くらいずっと同じことをやっていたので、『センコロール』以外の仕事もちょっとやりたいなという気持ちになっていたんです。そのタイミングで『つり球』のお話をいただいたので、ふたつ返事で「やります」と。

――具体的にはどんなやり取りをしたのでしょうか?
宇木 僕が北海道にいるので、基本的にはメールやグループウェアを使って、東京のスタジオとやり取りする形でした。中村監督から「この子は髪がすごくぼさぼさで」みたいなテキストをもらって、それに沿う形でラフを送って、見てもらって。で、「もっとぼさぼさにしてほしい」みたいなオーダーをもらったら、さらにボリュームアップする、みたいな感じで。

――クレジットは、宇木さんがキャラクターデザイン、高橋裕一さんがアニメーションキャラクターデザインになっていますね。
宇木 そうですね。僕がずっと札幌にいることもあって、やっぱり現場にいる人が最終的なデザインを決めたほうがいいだろう、と。僕のほうからは全体的なイメージを提出して、そこから先は高橋さんが描きやすい感じに描き起こしていただいた、という流れです。あと、アキラたちが所属していた「DUCK」という組織のボスとか、「DUCK」の黄色い宇宙服みたいなコスチュームは、高橋さんが担当されていたと思います。

『つり球』で初めて

男の子の絵をメインで描くことに

それはやっぱり印象的でしたし

なにより楽しかったです

――他の人の作品に参加するのは『つり球』が初めてだと思うのですが、参加してみていかがでしたか?
宇木 それまでも趣味で描いた絵をWebサイトにアップしていたんですけど、それも女の子の絵が中心だったんです。それが『つり球』で初めて、男の子の絵をメインで描くことになって。それはやっぱり印象的でしたし、なにより楽しかったですね。現場はきっと、すごく大変だったと思うんですけども。

――あはは。やはり自分がすべての工程に関わる『センコロール』とは違う感じがあったんでしょうか?
宇木 そうですね。「ここまでやればいい」という区切りがはっきりあるのは、気持ちが楽でした。『センコロール』だと最後まで――それこそ撮影まで自分でやらなきゃいけない。そこが一番違いますね。

――『つり球』での経験は、その後のお仕事に生かされているのでしょうか?
宇木 キャラクターの線をなるべく増やさない、というのはあるかなと思います。アニメに関しては、やっぱり線の多いキャラクターを描きたくないんですよ。それは『センコロール2』にも生かされていると思います。

――なるほど。
宇木 特に劇中に出てくるクリーチャーですね。あまり複雑なデザインにしたくなかったのもあって、そのあたりは意図的に線を減らしたデザインにしています。

――こうしてお話を聞いていると、何かから影響を受けたというよりは、宇木さんのなかで自分の作品とそれ以外の作品が、くっきり分かれているような印象を受けます。
宇木 そうですね。たぶん、皆さんそうだと思うんですけど、見たものから何かしらの影響は受けていると思うんです。いろいろなものからちょっとずつ影響を受けているから、最終的に今、自分が描いているものが何の影響かというのは、ひと言では言えない。これも好きだし、あれも好きだし、みたいな。そういう感じはありますね。endmark

KATARIBE Profile

宇木敦哉

宇木敦哉

映像作家/イラストレーター

うきあつや。北海道出身。2009年に初めての監督作『センコロール』、2019年に続編と連結させた新作『センコロール コネクト』が公開。中村健治監督の『つり球』など、キャラクターデザイナー・イラストレーターとしても活躍する。最新作は22/7(ナナブンノニジュウニ)の7thシングル「僕が持ってるものなら」のMV。

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