Febri TALK 2021.10.22 │ 12:00

黒田洋介 脚本家

③脚本家として生きていく
自信を与えてくれた『TRIGUN』

脚本家・黒田洋介が偏愛するアニメ作品を語る連載インタビュー。その第3回は、自身のキャリアで大きなターニングポイントになったという『TRIGUN(以下、トライガン)』。海外での人気も高いこの作品は、いかにして生み出されたのか。たっぷりと聞いた。

取材・文/宮 昌太朗

「『トライガン』の脚本を書いたのはお前か」と海外の人に言われる

――3本目は、キャリアのターニングポイントになった作品ということで『トライガン』を挙げていますが、『トライガン』はキャリアの比較的初期の作品ですね。
黒田 そうですね。まだ20代だったので、デビューしてから4年目くらいでしょうか。それまでコメディや恋愛ものを書くことが多かったので、「カッコいいアクションを書きたい!」という欲求が溜まっていたんです。で、あるときOVA作品の打ち上げの席でプロデューサーの人に「カッコいいアニメがやりたいんですよぉ!」って酒を飲みながら話していたんですね(笑)。当時、ジョン・ウーが好きだったので、銃をガバガバ撃ちまくるようなアニメをやりたかったんです。カッコいい男のアクションで魅せて、女の子はあんまり出なくていいから男気あふれるドラマを作りたい……って、そういうテンションでした。で、そこで「『トライガン』みたいなのがやりたい!」と大声で力説したら、話を聞いてくれていたプロデューサーが、じつは『トライガン』のアニメの企画をちょうど動かしていたんです。

――ええっ! それはまたすごい偶然ですね。
黒田 それで「やらせてやるよ」と、プロデューサーが言ってくれて(笑)。それまで何度か仕事をご一緒していたので、僕の力量をある程度わかって言ってくださったのかな、と思うんですけれども。大好きだった内藤泰弘先生のアニメに関わりたいと思ったこと、そしてできればひとりでシリーズを書き切りたいと思ったのが、大きなきっかけです。ただ、当時、原作がアニメの7話分ほどしかなくて、残りはオリジナルストーリーで展開しなくちゃいけなかったんですが……。

――けっこうな分量ですね。
黒田 ただ、幸いなことに内藤先生からは「マンガはマンガ、アニメはアニメ。アニメはアニメで作品として完結させてくれ」と。「原作では生きているキャラクターも、アニメ版では死んでしまうかもしれません」と言ったら、「それでもかまわない」とおっしゃっていただけたんです。じゃあ、本当に「終わらせる気で書こう」と思って、しかもある程度はやり切ることができた。前回もお話ししたように、僕は本当にイージーに脚本家になって、それまで誰かから褒められたこともないし、ましてや賞を獲ったわけでもない。だから脚本家としての自信なんてまるでなかったんですけど、監督の西村聡さんやキャラクターデザインの吉松孝博さんとがっつり組んでやらせていただいて、結果的に人気も出て。すごく自信になったし、「俺、脚本家としてやっていけるぞ」と、心から思えた作品でした。

『トライガン』という作品が

僕たちをワンランク上に

引き上げてくれたんじゃないかな

――まさしくターニングポイントになったのが『トライガン』だったわけですね。先ほど、ひとりで全話書き切りたかったという話が出ましたが、それはどうしてでしょうか?
黒田 たしかに相当難しいとは思ったんです。オリジナル部分はとくにそうですね。ただ、西村さんもTVシリーズの監督は初めてでしたし、他の脚本家さんを入れたら、逆にスケジュールが大変なことになるんじゃないかな、と。あともちろん、他の誰にも書かせたくないというエゴイスティックな気持ちもあったと思います。ヘンな言い方になってしまいますけど、他の人が書いた脚本を読んで、キャラクターのテンションが違うと「ちがーう!」と言って、上から書き直したくなってしまう。であれば、自分で書いたほうが早いだろう、と。僕が睡眠時間を削ればイライラすることもない――と、前向きなんだか後ろ向きなんだかわからない考えに至ったんです(笑)。あと、オリジナルエピソードが多かったので、途中で軌道修正しなければならないことも多かったんですよ。それこそ何稿も書き直したので、ひとりでやってよかったなと思っています。

――参加しているスタッフを見ると、今、第一線で活躍している方がたくさん参加していますよね。
黒田 それに関連して印象に残っていることがあって、(制作スタジオの)マッドハウスで打ち合わせをしていたとき、演出と作画で参加されていた大橋誉志光さんから「この現場はマッドハウスの三軍だから」と言われたんです(笑)。一軍は劇場で、二軍は人気原作&夕方放送枠のTVシリーズ、「ここは三軍だから」と。「じゃあ、『名門!第三野球部』のように一軍を超えてやりましょう!」みたいな、わけのわからないことを言ったんですけど……(笑)。でも、あの頃はみんなペーペーで――僕の印象だと『トライガン』がスタッフのその後のステップアップにつながったんじゃないか、と思います。『トライガン』という作品が、僕たちをワンランク上に引き上げてくれたんじゃないかな、って。

――たしかに、そういう若い勢いにあふれた作品だったなと思います。
黒田 海外の人から「『トライガン』の脚本を書いていたのはお前か」って、たまに言われるんですよ。今だとさすがに「『僕のヒーローアカデミア』を書いているのか」って言われることのほうが多いんですけど(笑)、でも、それまでは本当に「『トライガン』を書いた男」みたいな感じでした。ちょっと話は横道に逸れますけど、映画監督のロバート・ゼメキス氏が来日したときに『トライガン』のレーザーディスクを全話買って帰ったっていう話をプロデューサーから聞いたんです(笑)。「ああ、俺が書いたアニメ作品を、ハリウッドの監督が見ているんだ」と思って、すごくうれしかったですね。

――そういう意味でも思い出深いし、黒田さんのキャリアのなかでも大切な位置を占める作品になったわけですね。
黒田 そうですね。その次の『無限のリヴァイアス』に誘われたときも、プロデューサーから「『トライガン』を見て、あなたの脚本に興味を持ちました」と言われましたし、やっぱり『トライガン』が、その後の自分の行き先を示してくれたんだなと思います。……まあ、今は逆にラブコメの仕事を振られることがほとんどないなって、ちょっとしょんぼりしているんですけど(笑)。

――あはは。デビューは美少女ものだったのに(笑)。
黒田 というか、美少女ものの企画がきても全部、内容が重たいんですよ。ものすごいバトルとか、ものすごいガンアクションとか(笑)。肩の力を抜いて楽しむ美少女コメディとか、恋愛ものとかの依頼がないかなあ……って、寂しく感じたりしています(笑)。endmark

KATARIBE Profile

黒田洋介

黒田洋介

脚本家

くろだようすけ 1968年生まれ、三重県出身。脚本家。雑誌編集者、ライターを経て『天地無用!魎皇鬼』で脚本家としてデビュー。主な参加作品に『僕のヒーローアカデミア』『ガンダムビルドファイターズ』『機動戦士ガンダム00』など。

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