Febri TALK 2021.08.13 │ 12:00

雲田はるこ マンガ家

③主人公がとにかくかわいい
『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』

インタビューの第3回で語るのは、友人のススメで偶然出会ったという中国制作のアニメーション映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』。雲田が魅了されたのは、とにかく動きがかわいい主人公・シャオヘイだった。

取材・文/岡本大介

寄せ集めではないセンスの良さが面白い

――『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』は中国のアニメ映画で、日本では2019年に字幕版が、2020年に吹き替え版がそれぞれ公開されています。雲田さんはどちらをご覧になりましたか?
雲田 私はどちらも見ました。吹き替え版だと映像により集中できるので、そのぶん没入感は高まった感じがしますけど、オリジナルの中国語の響きもすごくカッコよくてきれいで素敵なので、どちらも大満足でした。

――温かみのある人間ドラマと大迫力の能力バトルが融合したアクション作品ですが、どんなところが好きなんですか?
雲田 主人公のシャオヘイのかわいさです。これは前回挙げた『崖の上のポニョ』にも通じることなんですけど、私はかわいいキャラクターが動いているのを見るのがなによりも好きなんですよ。しかも、シャオヘイは猫にもなるし子供姿にもなるし巨大化もするしで、そのどれもが全部かわいいのでまったく飽きないんです。かわいいは正義、まさにそうだと思います。

――ポニョが手描きによるフォルムのかわいさだとしたら、シャオヘイはキャラクターデザインそのもののかわいさですよね。
雲田 そうですね。それぞれベクトルは違うんですけど、どちらもかわいいのでいいんです(笑)。それこそシャオヘイがご飯を食べて目が星型にキランと輝くシーンとか、すごくマンガ的な表現なんですけど、ちょっとした動作が加わるだけでとてもいいんですよ。マンガではどうしても表現できない部分なので、そこはうらやましくもあります。

――雲田さんの作品に登場するキャラクターは渋い男性が多いですが、こういったかわいらしいキャラにも萌えを感じるんですね。
雲田 強く感じますね。昔からずっとそうなんですけど、デフォルメキャラを描くのも好きですしね。あまりにかわいいので、私も小さくてかわいらしいキャラがモニョモニョと動くような作品を描いてみたいと思うようになりました。自分にかわいいキャラクターが描けるかどうかはわかりませんが、いつか挑戦したいですし、アニメ好きな姪っ子に楽しんでもらえるようなマンガを作るのが今の目標ですね(笑)。

――シャオヘイ以外にも、好きなキャラクターはいますか?
雲田 いっぱいいます。一瞬しか出てこないキャラクターでも、きっとそれぞれバックボーンやドラマを持っているんだろうなと感じさせる人ばかりで、みんなカッコいいです。なかでもシャオヘイの師匠になるムゲンは、序盤は敵なのか味方なのかわからなかったので、ずっとハラハラしながら見ていて「シャオヘイ、ムゲンから早く逃げて!」とかまんまと思っていたんですけど、一緒に旅をしていくうちにシャオヘイとの距離が少しずつ縮まっていく演出が素敵で、いつしかムゲンのことも大好きになっていました。

中国のアニメを見たのは

これが初めてだったんですけど

こんなにすごいんだと驚きました

――本作の大きなテーマとして、妖精と人間の共存というものがありますが、ストーリーやメッセージ性はどう感じましたか?
雲田 自分にとって都合の悪い存在をただ拒絶するのではなく、受け入れて共存するという考え方はすばらしいですし、それを中国アニメが教えてくれるというのもなんだかうれしい気持ちになりますね。

――たしかに。中国アニメも大きく変化しようとしているのかもしれません。
雲田 美術の雰囲気はジブリっぽいところもあり、キャラには萌え要素があり、さらにスタイリッシュなアクションもあって、いろいろな表現がハイブリッドされていて。でも、決して寄せ集めではないセンスの良さもあって、それがものすごく面白いと感じました。中国のアニメを見たのはこれが初めてだったんですけど、こんなにすごいんだと驚きましたね。

――さまざまなテイストを取り込みながらもオリジナリティーを感じさせてくれて、中国のアニメーションもここまできたんだと感じます。
雲田 そうですよね。そういう海外の新しい表現に対して、日本のクリエーターがまた反応していくということを考えると、クリエイティブというものがどんどんボーダーレスに豊かに広がっていく感じがして、それは私自身も勇気をもらえます。

――マンガ業界にも通じるものがありますか?
雲田 ありますね。マンガという表現もいつかは飽きられてしまうのかなと、ふと心配になるときもあるんですが、海外の方々が日本のマンガ文化を発展させて、それをまた違うかたちで返してくれたりもしていて。それってすごくいいことだと思いますし、あらためてマンガが持つ力って強いんだなと実感できるんです。

――芸術や文化が持つ根っこの強さというのは、『昭和元禄落語心中』でも象徴的に描かれていましたね。
雲田 落語もまさしくそうなんですよね。その時代に合わせて変化しつつ受け継がれていくもので、決してなくならないんです。

――今はまた若いお客さんも増えてきているようで、それは『昭和元禄落語心中』の影響も大きいと思います。
雲田 もし、私の作品がわずかでも落語界のお役に立てているなら、それがいちばんうれしいです。これは落語に限らずですが、私はどこか懐かしいアナログな雰囲気のする世界が好きで、これからもそんな空気が漂う作品を作り続けていきたいですね。

――かわいいキャラを描くという目標は?
雲田 そっちもいいですよね……! そういう異物を混ぜると面白い作品になったりしますし、いい感じに混ぜて、自分の大好きな世界観を作り上げていきたいと思っています。新連載、楽しみにしていてください。endmark

KATARIBE Profile

雲田はるこ

雲田はるこ

マンガ家

くもたはるこ 栃木県出身。2008年、ボーイズラブ・アンソロジー「職業カタログ」にて『窓辺の君』でマンガ家としてデビュー。その後、一般漫画誌にて『昭和元禄落語心中』を連載。第21回手塚治虫文化賞新生賞をはじめ多くの賞を受賞。

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