Febri TALK 2022.02.28 │ 12:00

manzo ミュージシャン/作詞家/作曲家/編曲家

①初めて音楽を意識したアニメ
『ルパン三世』

ミュージシャン活動や歌手への楽曲提供はもちろん、『秘密結社鷹の爪』や『怪人開発部の黒井津さん』などのアニメ劇伴も数多く担当し、現在は『弱虫ペダル』や『刀剣乱舞』などの舞台音楽も手がけるmanzoが選ぶアニメ3選。インタビュー連載の第1回は、小学生時代に出会い、音楽に心を奪われた『ルパン三世』シリーズ。

取材・文/岡本大介

ハンフリー・ボガートや松田優作のように、実写作品の感覚で見ていました

――1本目に挙がったのは『ルパン三世(以下、ルパン)』シリーズです。これはアニメの原体験という感覚ですか?
manzo そうです。世代的には1977年から放送された第2シリーズがドンピシャなんですけど、再放送で第1シリーズも見ていました。他の作品だと、同時期にやっていたタイムボカンシリーズの『ヤッターマン』も好きでしたね。どちらも劇伴が印象的で、『ルパン』の音楽はスタイリッシュでカッコよくて、『ヤッターマン』の音楽はすごく面白いなと、子供ながらに思っていました。

――子供の頃から音楽に注目していたんですね。
manzo そうですね。もちろん、将来的に音楽の道へ進もうなんて当時はまったく思っていませんでしたが、たまたま4歳からギターを習っていたこともあり、やっぱり音楽は気になっていました。それはアニメだけでなく、ドラマやバラエティ番組を見てもそうでした。

――『ルパン三世』のキャラクターや世界観はどう見ていましたか?
manzo 本家にあたる『アルセーヌ・ルパン』シリーズ(著/モーリス・ルブラン)の子供向け翻案小説をもともと読んでいたんです。あちらがワクワクするような冒険小説なのに対して、『ルパン』はすごくアダルトでハードボイルドな雰囲気に満ちていて、「同じルパンなのに全然違う!」と衝撃を受けた記憶があります。そのアダルトな感じにすごく憧れたんですよね。

――小学生にあの渋さが響いたんですか?
manzo 響きましたね。というのも、僕は新宿で生まれ育ったのですが、母親が歌舞伎町でスナックをやっていたこともあって、物心がついた頃から歌舞伎町で過ごす大人たちを見てきたんです。当時は歩きタバコも自由でしたし、ルパンや次元のような渋い雰囲気の大人がたくさんいて、どこかで憧れを感じていたんですよね。

――なるほど。ファンタジーというよりは現実の延長線上で見ていたんですね。
manzo まさにそうです。『カサブランカ』のハンフリー・ボガートや『探偵物語』の松田優作などと同じく、実写作品の感覚で見ていました。

――ちなみに第1シリーズと第2シリーズではどちらが好きでしたか?
manzo まだ子供だったので、頭の中では一緒に記憶されているんですよね。ただ、もともと音楽きっかけで見ていた僕としては、第2シリーズの大野雄二さんのキャッチーでコミカルさを残した音楽が耳に残っています。でも、大人になるにつれて、山下毅雄さんが手がけた第1シリーズの音楽にある無頼漢っぽさというか、やさぐれた雰囲気の魅力もわかってくるようになりました。今ではどちらの音楽も好きです。

僕が子供の頃の歌舞伎町には

ルパンや次元のような

渋い大人がたくさんいたんです

――『ルパン』の劇伴というと、ジャズがベースですよね。manzoさんはそういうジャンルも好きなんですか?
manzo 好きですね。僕が作る音楽のイメージからは遠いと思われるかもしれませんが、それはたまたまそうではないジャンルの曲が有名になってしまっただけで、ジャズも僕の手札のひとつなんです。学生時代はジャズ研に所属していましたし、わりとバックボーンとして刷り込まれていると思います。

――そうだったんですね。とくに好きなエピソードはありますか?
manzo TVシリーズは話数が膨大なので、「この一本」を挙げるのはなかなか難しいですね。記憶に残っているという意味では、やはり映画『ルパン三世 カリオストロの城』がいちばんです。中でもルパンと次元が水路を使ってお城に潜入していくシーンが好きで、水の流れに身をまかせながら、すごく狭いところをすり抜けていくあの描写がなぜか忘れられません。

――『カリオストロの城』は、音楽とシーンのシンクロも抜群ですよね。
manzo そうですね。お城の屋根を登っていく有名なシーンを筆頭として、リズム感やスピード感など、まさにフィルムスコアリングの極致のような作品で、子供ながらに圧倒されたのをはっきりおぼえています。

――好きなキャラクターを挙げると誰になりますか?
manzo メインキャラクターはみんな好きなんですよね。ただ、子供の頃は峰不二子の魅力にはまた気づけなくて「悪い女だなぁ~」と、むしろ嫌っていました。でも、大人になるにつれ、いろいろな経験を積んでくると、男をケムに巻く感じだったり、ちゃっかりしたところが気になって……。

――だんだんと好きになっていった?
manzo 今では大好きになりました(笑)。他のキャラクターは子供の頃から好きで、次元はとにかく渋くてカッコいいですし、五ェ門も仕事人っぽくていいし、銭形の昔気質(むかしかたぎ)の感じも泥臭くて好きです。でも、やっぱりいちばんとなると、ルパンですね。クールなところもお茶目なところもあって、決めるときはビシッと決めるじゃないですか。僕からするとルパンは「粋の塊」みたいな感じなんです。僕自身にそういう要素がほとんどないので、余計に憧れちゃうのかもしれません。endmark

KATARIBE Profile

manzo

manzo

ミュージシャン/作詞家/作曲家/編曲家

まんぞう 東京都出身。1994年よりミュージシャンとして活動を始め、日本ブレイク工業の社歌で注目を集める。『秘密結社鷹の爪』でアニメ劇伴デビュー。主なアニメ劇伴作品に『伝染るんです。』『声優戦隊ボイストーム7』『アニマエール!』などがある。

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