Febri TALK 2022.03.30 │ 12:00

Tom-H@ck サウンドプロデューサー

②当時の自分を勇気づけてくれた
『NARUTO -ナルト-』

TVアニメ『けいおん!』のOPテーマ曲「Cagayake!GIRLS」で作曲家としてデビュー。多くのアーティストへの楽曲提供はもちろんのこと、自らもアーティストとして活躍するTom-H@ckが選ぶアニメ3選。インタビュー連載の2回目は、クリエイターとしてのバックグラウンドに大きな影響を与えた『NARUTO -ナルト-』。

取材・文/岡本大介

マンガもアニメも劇場版も全部楽しみ尽くした作品

――2本目に挙がったのは『NARUTO -ナルト-』です。
Tom-H@ck これはシンプルに昔から大好きな作品です。連載が始まった当初から完結するまでずっと継続して読んでいましたし、アニメもチェックしていました。忍術のギミックもカッコ良くてオトコ心がくすぐられますし、ストーリーも王道ながらとても面白いですよね。ナルトって里いちばんの落ちこぼれなんだけど、どんなに辛い目にあってもそれを乗り越えていくじゃないですか。中学生だった僕は、そんなナルトにすごく勇気づけられましたし、励まされたんです。

――原作はもちろんですが、アニメのアクションがまたカッコいいんですよね。
Tom-H@ck そうですね。なかでも劇場版の作画は凄まじいですよね。個人的には『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』の冒頭、サスケと大筒木キンシキのバトルシーンが大好きで、初めて見たときに心が震えたのをおぼえています。こういうアクションを突き詰めていけば、日本のアニメって今以上に世界で評価されると確信したというか。あらためて手描きアニメの素晴らしさを感じた映画でしたね。

――かなりの長編ですが、いちばん好きなエピソードは?
Tom-H@ck 自来也の死はけっこうショッキングでしたね。あれだけの強キャラが負けるなんて想像もしていなくて。ペインの登場でストーリーもどんどんシリアスになっていきましたし、ナルト自身も加速度的に強くなっていく感じがして、あのあたりは原作を読み返すたびにアツいなって思います。

サスケとキンシキの

バトルシーンの作画が凄まじく

心が震えました

――好きなキャラクターはいますか?
Tom-H@ck キャラクターというか、僕は写輪眼とか万華鏡写輪眼とか、作中に登場する異能の眼が好きなんですよね。これも忍術と同じようにオトコ心……いやむしろ厨二心が刺激されて(笑)。他にも輪廻眼や白眼などいろいろあって、それぞれデザインや能力も違う。そういうところが『NARUTO -ナルト-』を象徴している感じがして好きです。だから、特殊な眼を持っているキャラクターはみんなカッコいいなと思っています。

――厨二心でいうと、素早く「印」を結ぶシーンもスタイリッシュで『NARUTO -ナルト-』っぽいですよね。
Tom-H@ck そうそう。なにしろ中学生時代に出会っているので、『NARUTO -ナルト-』に関してはそういうビジュアル的なカッコ良さが印象的です。僕よりも上の世代の方が「モビルスーツかっけー!」ってガンプラを買っていたのと同じ感覚だと思います。

――『NARUTO -ナルト-』が自身の創作活動に影響を与えている部分はありますか?
Tom-H@ck 深層心理で、とても影響を受けていると思います。子供時代にワクワクする経験って絶対に必要ですよね。アドレナリンが出まくった体験って大人になってもおぼえているものだし、その量は多いに越したことはないです。それでいうと『NARUTO -ナルト-』を読んでものすごくワクワクしたことは今でもおぼえていますし、まさにアドレナリン体験のひとつです。その体験は音楽を作るうえでも必要ですし、どんな音楽を生み出すかにも影響していると思います。

――子供時代のアドレナリン体験が、作る音楽の性質にも関わってくる。
Tom-H@ck 僕はそう思っています。もちろん、触れてきたエンタメ作品だけに影響されるわけではなく、たとえば、難しいプラモデルを完成させたときの興奮でもいいし、綺麗な景色を目にしたときの感動でもいい。いずれにしろアドレナリンが放出される体験が大切で、僕の場合は『NARUTO -ナルト-』で味わったワクワク感だったり、小さい頃から触れてきた地元の自然が大きいのかなと感じています。

――幼少期の自然環境も影響しているんですね。
Tom-H@ck 影響はあると思います。この地域からはアーティストが多く輩出されているとか、この地域は学者が多いとか、そういう地域性って実際にあるじゃないですか。

――たしかに。Tom-H@ckさんは宮城県のご出身です。音楽でいえば、菅野よう子さんも宮城県ですね。
Tom-H@ck そうなんですよ。若い世代で言えばkzさんも宮城県出身ですし。僕は石巻(いしのまき)市というところで育ったので、近くに海も山も川もあって、日本三景として知られる松島もすぐ近くだったんです。豊かな自然に囲まれたあの土地の空気感のようなものは、僕の音楽にも大きく影響しているのかなと思います。昔はそういうことには無自覚だったんですけど、とあるピアニストの方から「音楽から石巻の自然の景色が見える」と言われて初めて意識して、それから自分でもだんだんとそう思うようになりました。なので、すごく極端なことをいえば、僕の音楽は石巻と『NARUTO -ナルト-』からできているのかもしれません(笑)。endmark

KATARIBE Profile

Tom-H@ck

Tom-H@ck

サウンドプロデューサー

トムハック 1985年生まれ。宮城県出身。作編曲家の百石元に2年間師事したのち、2009年、TVアニメ『けいおん!』のOPテーマ曲「Cagayake!GIRLS」で作曲家デビュー。バンド、アイドル、アニメ、ゲームなど、幅広いジャンルへの楽曲提供を行うかたわら、自らもOxT、MYTH & ROIDとして活躍中。

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