Febri TALK 2022.02.14 │ 12:00

童田明治 バーチャルライバー/アーティスト

①ひとつのことを極めるってカッコいい
リアルさに惹かれた『ちはやふる』

活動開始から2年間でライブ配信したアニソンカバーは1,000曲以上。登録者数は24万人以上(2022年2月時点)という、にじさんじ所属の人気バーチャルライバー、童田明治(わらべだめいじー)。インタビュー連載の第1回は「人生で一番影響を受けたアニメ」だという『ちはやふる』について。

取材・文/日詰明嘉

シリーズ視聴20周! 何度も噛み締めて味わう作品

――アニメが大好きな童田さんにとって、『ちはやふる』は「人生で一番影響を受けたアニメ」とのことですが、どのようなきっかけで作品に触れたのですか?
童田 友達がこの作品を本当に大好きで、猛プッシュをされたんです。でも、百人一首のお話だと聞いて、私にとってはそんなになじみがないテーマでしたから、1年くらいパスしていたんです。でも、「絶対見たほうがいい!」と言われたものですから、「まあ見てやるか……」ぐらいの気持ちで見てみたんです。

――で、いかがでしたか?
童田 そしたら! なんて言うんですか……、あの作品にはすべてが詰まっていました!!

――(笑)。一気に心をつかまれたんですね。
童田 はい。友情だったり、恋愛だったり、そして競技を行う上での心理描写がすごく丁寧なんです。かるたを早く取るだけじゃなくて、相手がどう考えているか、何を思ってこの試合に臨んだかとか、大会に向けてどう練習をしていたかっていうのが、本当に丁寧に描かれていて、どのキャラクターもみんな好きになっちゃいました。『ちはやふる』って美男美女だけが出てくるのではなくて、ちょっとふくよかな「肉まんくん」っていうあだ名の男の子(西田優征)とか、歴史が好きだから百人一首に触れてみた「かなちゃん」(大江 奏)とか、みんなすごくいいキャラをしていて、それがとてもリアルなんですよ。この子たちって、物語に動かされているキャラクターではなく、この子たちが動くことによって物語が進んでいるんです。

――つまり、物語上に置かれた「妹キャラ」とか「解説役」というわけではなく、ひとりの人間として人物像が描かれているというわけですね。
童田 そうです! やっぱり「設定的に必要だから置いたんでしょ」っていうキャラはすぐにわかるし、企画の意図が見えると冷めちゃうんですよね。でも、『ちはやふる』はそういうことがなくて、本当にどのキャラクターも生き生きとしています。私にとって、この子たちは生きているんですよ。

――特にお気に入りのキャラクターはいますか?
童田 それが、ホントにみんな好きなので、ちょっと選べないんです。最初は(綿谷)新が好きだったんですけど、2周目は「いや、(真島)太一もいいな」って。で、3周目はまた「やっぱ、新もいいな」みたいな感じで、見るたびにキャラクターの良さがわかってきて。もちろん、主人公の(綾瀬)千早の良さも、噛めば噛むほど味しか出ないって感じで(笑)。私は凹んだときとか疲れたとき、とりあえず『ちはやふる』を第1話から流すんです。特に2期は20周ぐらいしています。

ひとつのことを全力でやって

それで勝ったときのうれしさって

何ものにもかえがたいです

――すごい……! でも、千早のように何かに全力で打ち込むキャラクターって好きになっちゃいますよね。
童田 そうですよね。千早って、いい意味で本当にひとつのことしかできない子で、かるたのことしか考えていないんです(笑)。それぐらい好きになれるものを千早は持っていて、それを見ていると「ひとつのことを極めるってカッコいいな」と思ったんですよね。勝つまでの過程だけでなく、負けた悔しさも丁寧に描かれていて、「自分も、これなら誰にも負けない!」っていうものを作りたいなって。『League of Legends』っていうゲームにめちゃくちゃハマって一日12時間くらいプレイしていたこともありました(笑)。ひとつのことを全力でやって、それで勝ったときのうれしさって、やっぱり何ものにもかえがたいんですよね。

――一生懸命がんばることとか、何かに打ち込むことをバカにするような風潮に対して、千早の生き方はそれを肯定してくれる。
童田 おっしゃる通りです。作中でも千早のお姉ちゃんがモデルをしていて、お姉ちゃんは親に評価されるけど、かるたって本当にマイナーだから評価されない。そういうのも、なんかちょっとリアルというか。でも、それでも辞めないんですよ。それに本当に心を打たれました。

――この作品は正直なんですよね。かるたをテーマにしているからといって、かるたがメジャーな世界線ではなくて。
童田 そうなんですよ! どちらかと言うと「え、かるた?」「こんな可愛いのになんでかるたなの?」みたいな。それもすごくリアルじゃないですか。私も影響されて百人一首をやろうと思ったんですけど、けっこう難しくて……。

――まだまだ、これからですよ。
童田 これからですかね!?

――『League of Legends』のお話もそうでしたし、何かに打ち込むことの大切さは何にでも応用が効きますから。童田さんは音楽ユニット「Rain Drops」のメンバーとしても活動していますが、この作品がご自身の音楽活動に与えた影響はあると思いますか?
童田 あります! 私はけっこう完璧主義というか……、歌を歌うんだったらリズムやピッチをピシッとしないと気がすまないタイプなんですが、『ちはやふる』を見ていると感情を揺さぶられることが多いですね。かるたにもいろいろな取り方があって、ただ手が早いから取れるというわけでもなくて、耳が良いから取れる人もいたりします。見ていて、ひとつのやり方にこだわるのが必ずしも正解じゃないんだなって思いました。音楽にもそれと同じようなことが言えると思って。私は耳は良いほうなんですけど、感情を乗せるのがすごく苦手だったんです。でも、表現の仕方はいろいろなやり方があっていいんだって思えたら、自分の歌にも感情が乗せられるようになりました。そういう点においても『ちはやふる』は私の人生です。endmark

KATARIBE Profile

童田明治

童田明治

バーチャルライバー/アーティスト

わらべだめいじー。にじさんじ所属のバーチャルライバー。キャラクターデザインは萌木雄太。2019年1月より活動を開始し、YouTube登録者数は24万人以上(2022年2月時点)。2020年に音楽ユニットRain Dropsのメンバーとしてメジャーデビューを果たした。