Febri TALK 2022.01.31 │ 12:00

横谷昌宏 脚本家

①初めてアニメにハマった
『魔法のプリンセス ミンキーモモ』

『ケロロ軍曹』『Re:ゼロから始める異世界生活』『トロピカル~ジュ!プリキュア』など、ギャグからシリアスまで幅広い作品を手がける脚本家・横谷昌宏が選ぶアニメ3選。インタビュー連載の第1回は高校時代に出会い、初めてアニメにどハマりしたという『魔法のプリンセス ミンキーモモ』について。

取材・文/岡本大介

「魔法少女もの」への思い入れの原点

――1本目は『魔法のプリンセス ミンキーモモ(以下、モモ)』です。これは1982年の第1作目、通称『空モモ』のほうですね。
横谷 そうです。高校生時代に見て思いっきりハマったアニメで、初めてスタッフのクレジットを意識した作品でもあります。

――アニメは昔から好きだったのですか?
横谷 完全にインドア派だったこともあって、子供の頃からアニメも特撮もマンガも映画もすべて好きだったのですが、アニメに関しては中学生になってからあまり見なくなり、しばらく離れていたんです。『空モモ』は、たまたまアニメ好きのクラスメイトに録画を頼まれたのが見るきっかけでした。

――どんなところにハマったのですか?
横谷 最初に録画した話数が「機械じかけのフェナリナーサ」(第19話)というエピソードで、とにかくモモがめちゃくちゃ可愛かったんですよ。それからいてもたってもいられずに『アニメージュ』や『アニメック』などのアニメ誌を買うようになり、気になった話数のクレジットを調べるようになっていきました。当時のアニメって、今よりも各話で作画スタッフの個性が出るじゃないですか。だから、そのうち「どうやら僕は上條修さんの描くモモが好きなんだな」とか「でも、動きはわたなべひろしさんのモモが好きだな」とか、アニメーターごとの特徴も意識するようになりました。

――『空モモ』をきっかけに美少女アニメというジャンルに目覚めた人は多いですよね。
横谷 そうなんですよ。僕自身、少女キャラに「萌え」を感じたのはそれが初めてでした。クラスメイトたちが『機動戦士ガンダム』に夢中になるなかで、僕だけは脇目も振らず『モモ』だけを追いかけていまし、その後もロボットものより魔法少女ものばかりをチェックしていました。そういう原体験があるので、じつは今でもロボットものってあまり明るくないんですよ。

――なるほど。ストーリーや世界観という点ではいかがでしたか?
横谷 最初こそモモの可愛さに惹かれたのですが、ほどなくしてシナリオの魅力にも気づきました。中でも「大いなる遺産」(第36話)は大好きで、これは金春智子(こんぱるともこ)さんの脚本なのですが、わたなべひろしさんのよく動く絵と相まって傑作回です。ファンの間でも評価が高いエピソードだと思いますが、同じように僕もどハマりしました。他にも首藤剛志さんが書いた「お願いサンタクロース」(第41話)も、心が温まる話ですごく印象的です。かと思えば、リアリストなのに童話が大好きなボーマン船長が登場する「ふるさと行きの宇宙船」(第30話)などは「こんなことを子供向け番組でやってもいいんだ!?」と衝撃を受けました。制作陣の真意はわかりませんが、「これ、明らかに大人に向けていますよね?」と感じたことをおぼえています。とにかく話数ごとにテイストがまったく違う。スタッフがやりたい放題に楽しんでいる感じが伝わってきて、そういうところにも虜(とりこ)になりました。

話数ごとにテイストが違って

スタッフがやりたい放題に

楽しんでいる感じが

伝わってきました

――脚本家の個性が発揮された作品ですよね。
横谷 そうですね。第一部のラストで、主人公であるモモが交通事故で死ぬという展開も、今ではまずありえないですよね(笑)。

――あれは衝撃的でした。
横谷 僕は『ウルトラマン』シリーズなどの特撮系もずっと好きなのですが、あれも基本的には一話完結ですよね。いろいろな脚本家の方が参加して、それぞれの個性を存分に発揮するスタイルの作品が大好きなんですが、『モモ』もまさにそんな作品でしたね。

――高校生の当時は、将来脚本家になりたいという気持ちはあったのですか?
横谷 「脚本家」という職業にはまだピンときていなかったのですが、アニメに限らず小説家だったり映画監督だったり、何かしら物語を作る人にはなりたいなと思っていました。マンガ家になることも考えていましたね。

――ここでアニメに目覚めたことが、現在放送中の『トロピカル~ジュ!プリキュア』などにもつながっているのかもしれませんね。
横谷 そうですね。『モモ』を出発点として、魔法少女ものには愛着がありますから。とくに『プリキュア』シリーズは1年間続くので、最後にはキャラクターにかなり情が移ってしまって。最終話付近では日常会話を書いているだけでも泣けてきたくらいです(笑)。

――大人になってから『空モモ』を見返すことはありますか?
横谷 それが、見ていないんです。青春時代に見て衝撃を受けたものってかなり美化されていて、大人になって見ると「こんなんだっけ?」と思うことも多いじゃないですか。だから思い出は美しいまましまっておこうと思って、いまだに見返していません。ただ、この業界に入ってから、金春さんやわたなべさんとお仕事をご一緒する機会があり、そのときは本当に舞い上がって「『モモ』、大好きです!」と思いの丈を語りました(笑)。さらに首藤剛志さんの追悼イベントでおふた方に挟まれて首藤さんの作品を鑑賞できたときは本当に感慨深かったです。高校時代の自分に教えてあげたらめちゃくちゃ驚いただろうなと思います。endmark

KATARIBE Profile

横谷昌宏

横谷昌宏

脚本家

よこたにまさひろ 大阪府出身。大学卒業後、エンジニアを経て1996年に『怪盗セイント・テール』で脚本家デビュー。シリーズ構成を担当した主な作品に『ケロロ軍曹』『Free!』『トロピカル~ジュ!プリキュア』などがある。

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