Febri TALK 2026.10.16 │ 12:00

油布京子 アニメーター

③モチベーションを上げたいときに見る『SHIROBAKO』

『精霊幻想記』や『デリシャスパーティ♡プリキュア』など、数多くの作品に参加するアニメーター・油布京子が選ぶアニメ3作品。3本目は、アニメ業界の舞台裏を描いて大きな反響を呼んだ『SHIROBAKO』。アニメ業界に入ったからこそ見えてきたという、その魅力とは?

取材・文/宮昌太朗

アニメーターになってからは見るたびに理解度が増していく

――3本目は『SHIROBAKO』。これも見ていたのは高校生ぐらいですか?
油布 そうですね。リアルタイムで見ていました。高校生になったあたりで、ニコニコ動画でアニメを見るようになったんです。当時は深夜アニメもどんどん配信してくれていたので、そこで『SHIROBAKO』を見ました。

――当時はもうすでに、アニメーターになろうと決めていたんですか?
油布 ちょっと覚えていないんですけど、でも放送されたのが2014年だから、たぶんなろうと決めたあとに放送が始まっているはずですね。「アニメ業界が舞台のアニメが始まるんだ、すごい! これはもう絶対に見なければ」と思って見始めたんですけど、めちゃくちゃ素晴らしいアニメだったという(笑)。

――アニメ業界どうこうとは関係なく(笑)。
油布 そうなんですよね。アニメ業界の舞台裏を描いた作品としてもすごい作品だと思いますし、それとは関係なく、純粋に作品単体で見てもいいんですよね。私が人生の中でいちばん見返しているアニメは、『SHIROBAKO』なんじゃないかと思います。たぶん、10回くらいは通しで見ています。

――それは、どういうタイミングで見返すのですか?
油布 どうでしょう……「久しぶりに『SHIROBAKO』を見るか」みたいな(笑)。面白いのは、私自身が業界の人間になっているので、見返すたびにどんどん、内容に対する理解度が高まっているんですよ。

――劇中で何が起きているかが、だんだんくっきりわかるように(笑)。
油布 最初に見たのは高校生だったので、流れ的になんとなくで見ていた部分が多かったと思うんです。それこそアニメ制作のワークフローは、当時まったくわかっていなかったので。もちろん、ストーリーには感動しているんですけど、ちゃんとは理解できていなかったと思うんですね。でも、アニメーターとして働き始めてから見返すと「これってこういうことだったんだ!」と(笑)。「そういう状況だったんだ」みたいなことが、どんどんわかるようになってくる。

――制作デスクの本田(豊)さんの「万策尽きたー!」が、どれくらいピンチだったのか、だんだんわかってくるという(笑)。
油布 そうですね。ブラックジョークみたいなネタとかも、当時はちゃんとわかっていなかったんですけど、それがだんだん全部わかるようになってきて。だから何回見ても楽しめる、というのはあると思います。

絶対にないとは言い切れないストーリー

――アニメ業界の中の人から見ても、実際のアニメ制作に即した内容になっているんですね。
油布 そうですね、アニメ業界の人はわりと「『SHIROBAKO』はファンタジーだ」と言うんですけど……。たしかに「こんなヤバい状況に、こんな素晴らしい救世主が現れるなんて!」と思わないわけでもないんです(笑)。でも、作中で起きていることは、すべて起こりうることだなって思います。「絶対にない」とは言い切れないんじゃないかなって。あと『SHIROBAKO』はやっぱり、作中のキャラクター――丸川(正人)社長だったり、そういう人たちの人徳みたいなものがあって成り立っている、というのはありますよね。

――好きなキャラクターというと?
油布 好きなキャラクターは平岡(大輔)君と(高梨)太郎なんですけど(笑)。最初は本当に「なんなんだよ、こいつ」というか、いわゆるヘイト役みたいな立ち位置のキャラクターなんですけど、宮森(あおい)たちと出会うことによって、どんどんいい方向に成長していく、というか。

――だんだんと真人間になっていく。
油布 平岡君にしても、すごくかわいそうなキャラクターなんですよね。最初にいた環境がよくなかったばっかりに、あんなにすれちゃっているんですけど、でも正直なところ、誰でも彼みたいになる可能性があって。だからちょっと憎めないなって思うんです。そういうことが私自身、実際にアニメ業界に入って、経験を積むに従って理解できるようになった、というのはあります(笑)。

木佐さんの気持ちがわかってしまう

――そういう意味でも、リアリティがある作品なわけですね。
油布 しかもそういう平岡君に寄り添ってあげているのが太郎っていうのが、すごくいい組み合わせで。太郎って1クール目だとトラブルメーカーみたいな扱いで、本当に制作としてはよくないと思うんですけど(笑)、でもそんな太郎の持ち味に平岡君がだんだんほだされていって。いい巡り合わせだなぁって思いますね。

――もう純粋に、ドラマとしてハマっていたわけですね。
油布 そうですね。しかも『SHIROBAKO』が本当にすごいのは、あんなにキャラクターの数が多いのに、最後にはちゃんとみんなの名前と顔が一致するんですよ。全24話あるけど、無駄な話数がひとつもない。そこも本当にすごいなと思います。

――何度も見返してしまうのも、仕方がない。
油布 何度も見返しちゃいますよね。あとやっぱり自分も頑張らないと、と思わされる。井口(祐未)さんが頑張っているんだから、私も頑張らないといけないな、って。だから、モチベーションを上げたいときに見ることが多いかもしれないですね。わりと好きな作品に挙げる人が多いと思うので、どうしようか悩んだんですけど、普通にめちゃくちゃ好きな作品なので。

――ベスト3に入れざるを得なかった(笑)。このFebri TALKだと他にも、アニメーターでは斎藤敦史さんと田中将賀さんが『SHIROBAKO』を挙げています。田中さんは「自分も出演したかった」とおっしゃっていますね。
油布 その気持ちはめっちゃわかります(笑)。この業界にいたら、ちょい役でもいいから出てみたいですよね。

――出演するとしたら、どんな役どころがいいですか?
油布 やっぱりアニメーターになっちゃいますよね……。でも、それこそ単発で参加しているアニメーターで、作画打ち合わせに出ているうちのひとり、とか(笑)。木佐(光秀)さんってアニメーターさんが出てくるじゃないですか。作中ではかなりだらしない感じで描かれているんですけど(笑)、個人的には「木佐さんの気持ちがわかるなあ」と思いながら見ているんですよね。あんな感じなのに、なんだかんだと頼まれているのは、きっとそれだけ腕もあるんだろうな、と。

――じゃあ、木佐さんみたいなアニメーターになれたらいいな、と。
油布 いえ、憧れるかどうかはちょっとわからないですけど(笑)。endmark

KATARIBE Profile

油布京子

油布京子

アニメーター

専門学校を卒業後、アニメーターとして活動をスタートし、数多くの作品に参加。『デリシャスパーティ♡プリキュア』『精霊幻想記』のキャラクターデザインを担当した他、TVアニメ『きみが死ぬまで恋をしたい』でも、キャラクターデザインを手がけている。

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