――TVアニメと今回の映画で、違いを感じたところはどこですか？
菱川　TVアニメの『デリシャスパーティ♥プリキュア（以下、デパプリ）』が伝えたいことはとても明確で、「ありがとう」という気持ちだったり、「笑顔をみんなでシェアしたい」ということだったりするんです。でも、今回の映画のクライマックスで、ゆいちゃんは「笑顔だけじゃなくて、悲しいことも涙も、私たちに分けてよ」と言うんです。それがすごく衝撃的で。たしかに笑顔だけじゃなくて、いろいろなことをみんなと共有して、最後にわかりあえたら、とても素敵なことだなあって。TVアニメとはまた違う「伝えたいこと」が今回の映画にはあるので、ぜひ皆さんにそこを感じ取ってもらえるといいなと思います。
高森　コメコメには一貫して「ゆいのようなヒーローになりたい」という思いがあるんですよね。でも、今回の映画では収録中にそんなヒーローを演じている花菜ちゃんの涙を見ることになって……。コメコメ役として、それはすごく衝撃的でした。ゆいは、そういう負の感情をあまり表に出さないキャラクターだと感じていたんですが、映画では葛藤やあきらめ、迷いといった感情が描かれるんです。

――そうなんですね！
高森　『デパプリ』における「ヒーロー」には、母性みたいなものも含まれているのかなって。これまでは物理的に強くなりたい、誰かを助けられる人になりたいという部分が前に出ていたように思うんですが、今回は感情面で支えられる人こそが、本当のヒーローなのかな、と。コメコメがそこに気づけるお話になっていると思います。

――菱川さんから見て、コメコメを演じる高森さんの印象は？
菱川　先輩なんですが、すごくかわいくて愛おしいんですよ。
高森　うれしいなあ（笑）。
菱川　キュアプレシャスのテープオーディションを受けた頃の話なんですけど、事務所のスタジオに行く用事があって、そのときに中から「コメ！」って声が聞こえてきたんです（笑）。「コメコメ役を受けている人がいるけど、誰なんだろう？」と思ったら、それがじつは高森さんだったんです。

――オーディションのときというと、まだコメコメ役が決まる前ですよね？
菱川　そうなんです！　なので、こうして映画でもふたりをピックアップしていただけたのが、すごくうれしいです。私にも「早く大人になりたい！」という気持ちがあったりするし、本当に愛おしい気持ちになりますね。ゆいちゃんと一緒に、コメコメの成長も見守っていただけたらうれしいなあって。

――今回、ケットシー役を花江夏樹さんが担当しているのも注目のポイントですね。
菱川　このコロナ禍にもかかわらず、一緒にアフレコができて本当によかったです。劇中、子どもの頃のゆいちゃんとケットシーが出てくる場面があるのですが、そこで何度もリテイクを出してしまって……。花江さんに「どうやったら子どもの声が出せますか？」と聞いたら「僕が子どもの声を出すときは、幼稚園の頃を思い出してやっているよ」と。

――そんなアドバイスが！（笑）
菱川　でも、思わず聞き返したら「今のは冗談」と言われてしまいました（笑）。自分で台本を読んでいたときに想像していた声よりも切ない声だったのも印象的でした。
高森　花江君がどんなケットシーをアフレコ現場に持ってくるのか、すごく楽しみにしていたんですけど、第一声を聞いた瞬間に「さすがです……」と思いました。とても繊細な役なので、花江君自身、細かい感情の機敏を本当に丁寧に演じていて。その一方で、コメコメたちと一緒に大騒ぎするシーンでは楽しそうな姿を見られましたし、繊細なケットシーと賑やかなケットシー、両方を見ることができて本当に贅沢な時間でしたね。

――最後に、映画を楽しみにしているファンやこれから見に行こうという方に向けて、注目してほしいポイントを教えてください。
高森　『デパプリ』の原点は、おいしいものをみんなで、大好きな人と一緒に食べることにあると思うんですが、そこにあらためて気づかせてくれる映画になっていると思います。加えて、見に来てくれたお子さんと、親御さんや大人の観客では、もしかしたらそれぞれ感情移入するキャラクターが違うんじゃないかな、と思っているんです。ただ、どちらの視点からでも、きっと気づきのある映画になっているんじゃないかな、って。

――なるほど。
高森　あと、この映画でコメコメがお披露目する特別な姿があるんですが、エナジー妖精サイドからすると「やっと来てくれたね！」という感じがあります」。「まさか、私たちもいいんですかっ!?」と（笑）。お子さんたちもきっと喜んでくれると思うので、今からワクワクが止まらないです。
菱川　今回、本編をサンドイッチするような形で2本の短編が上映されるんですが、そちらも見どころ満載です。そのうちの1本では、ついに先輩プリキュアと共演することができて、昔から『プリキュア』を見てくれていた方も、『デパプリ』が初めてという方も、大人も子どもも楽しめる作品になっていると思います。あと、今回の劇場版では、とにかくごはんがおいしそうに描かれていて、アフレコ中もみんなでずっと「おいしそう！」と話していました。映画を見ておなかを空かせたあとは、お子さまランチをいっぱい食べてもらえれば！と思います（笑）。