【機動戦士ガンダム】 両親はホワイトベースのクルー
ハサウェイの父ブライト・ノアは、一年戦争時、ガンダムの運用艦でもあったホワイトベースの艦長を務めた人物。アムロ・レイやカイ・シデンなど、一筋縄ではいかない民間人上がりのパイロットたちをまとめあげ、一年戦争終結に貢献している。当時19歳であったが、数少ない連邦軍正規兵としてその指揮能力を発揮した。
ハサウェイの母ミライ・ヤシマは、艦の操舵を担当した民間人。彼女はその名前が示す通り日系で、連邦軍内にも名が知られるヤシマ家の令嬢。当時18歳であったが冷静沈着、そして包容力のある「母」のような人柄で、戦乱終結まで艦やブライトを献身的に支え続けている。
ブライトは艦で指揮を執るなかでミライに想いを寄せるようになるが、彼女の前には許嫁であったカムラン・ブルーム、男も惚れるナイスガイ、スレッガー・ロウが現れる。だが、一年戦争の混乱もあってミライと彼らとの関係は成就せず、戦乱終結後、ブライトとミライは結ばれた。そんなふたりの間に生まれたのが、ハサウェイと妹のチェーミンである。
押しの強いスレッガー、婚約者という立場のカムランに比べると、ブライトは少し引いた立ち位置でミライと向き合っていた。艦長として私情を挟みすぎてはいけないという考えもあったのだろう。真面目である。
【機動戦士Zガンダム】 アムロに命を救われたハサウェイ
ブライトはミライとの間に二子を授かり、一家庭人としては幸せな日々を送っていた。だが、連邦軍内で急速に力を伸ばしていた派閥「ティターンズ」の横暴に反発し、彼らと対立する連邦軍内の別派閥「エゥーゴ」に参加。その後、勃発するグリプス戦役の最前線で指揮を執り、新たなニュータイプであるカミーユ・ビダンや、かつての敵シャア・アズナブル(クワトロ・バジーナ)などと行動をともにした。
一方、一年戦争後に艦を降りていたミライは、戦いの気配が迫るジャブローからホンコン・シティへ移動していた。ハサウェイ(当時7歳)はホンコンで、アムロ・レイと対面することになる。その直後、彼は母、妹とともにティターンズのベン・ウッダーとホンコン特務警察に拉致され、人質とされてしまう。アムロとの接触から、ブライトの家族であることがバレてしまったのだ。窮地を迎えたハサウェイだが、アムロやカミーユ、そしてかつてのホワイトベースクルー、ハヤト・コバヤシの決死の行動によって救出され、九死に一生を得る。ハサウェイはこのとき、身を挺して自身を救ってくれた“アムロおじさん”に対し、特別な想いを抱いたとしても不思議ではない。
ノア家の家族写真。ブライトに抱えられているのがチェーミン。ちなみにホンコンでは、フォウ・ムラサメとも接触している(チェーミンのおもちゃのグライダーを、フォウが拾ってくれた)。
「おじさん」と呼んでいたアムロに救出されたハサウェイは、ミライに抱きついて離れなかった。このときに感じた恐怖が、ハサウェイの人格形成に大きく影響を与えたのかもしれない。
【機動戦士ガンダムZZ】 ブライトとミライの絆に亀裂が…!?
グリプス戦役の終結から間髪をいれず、「ジオン再興」を掲げるハマーン・カーン率いるネオ・ジオンとエゥーゴの戦乱「第一次ネオ・ジオン戦争」が勃発する(U.C.0088)。ブライトはネェル・アーガマの艦長としてエゥーゴに残り、この戦乱でも最前線で活躍した。
ミライや子供たちと離れ離れで暮らすなかで、もうひとつのピンチが訪れる。エゥーゴに協力するアナハイム・エレクトロニクス社の補給艦ラビアンローズの艦長代理、エマリー・オンスから激しい求愛を受けたのだ。ときにまんざらでもなさそうな顔を見せていたブライトだが、ミライと子供たちへの愛情から理性を保ち、不倫関係とはならなかったようだ。ちなみに『機動戦士ガンダムZZ』では、ハサウェイなどミライ母子の姿は描写されない。
エマリーの積極的な態度に困惑させられるブライト。ジュドー・アーシタをはじめ、わがままな少年少女たちで構成されたガンダムチームに手を焼いていたが、男女関係でも悩まされることに。単身赴任はつらい。
【機動戦士ガンダム 逆襲のシャア】 ハサウェイ、ついに戦場へ
ブライトは外郭新興部隊「ロンド・ベル」に司令として参加。ロンド・ベル旗艦ラー・カイラムの艦長として、シャアによる「地球寒冷化作戦」の阻止に動いた。一方で、ネオ・ジオンの暴挙を察知したミライは、ブライトとの合流を図るべく宇宙へと上がろうとする。
だが、宇宙行きのシャトルにはひとりしか乗ることができず、ミライは当時13歳であったハサウェイを送り出す。宇宙に到着したハサウェイは、シャトルで出会った不思議な少女クェス・パラヤと交流を深めるも、彼女はコロニー・ロンデニオンで出会ったシャアに惹かれて彼のもとへと向かう。クェスを取り戻そうとしたハサウェイは、ひそかにラー・カイラムへと潜入。その勝手な行動をブライトに咎められるが、久々に再会したアムロの進言もあり、乗艦を許された。
シャアが地球へと落としたアクシズは、ブライトやアムロらの決死の行動によって引き起こされた“アクシズ・ショック”により、地球への直撃は回避される。一方、クェスを救おうと勝手にモビルスーツで戦場に飛び出したハサウェイであったが、彼女の死を止めることはできず、 “アクシズ・ショック”をただ見守るしかなかった。ハサウェイはクェスを救えなかったことに対し自責の念にかられただけでなく、未知の現象まで起こしてしまうようなアムロとシャア、ふたりの魂のぶつかり合いに衝撃を受ける。それがのちに、ハサウェイを反地球連邦政府運動「マフティー」に駆り立てたひとつの要因になったと言えるだろう。
ラー・カイラムに密航したハサウェイを修正するブライト。じつの息子にも戦場で鉄槌を加えることになるとは思いもよらなかったであろう。
クェスへの想いから、戦場にまで出撃したハサウェイ。その行為は誰が見ても無謀であり、生み出された結果も、彼にとってつらいものであった。
【機動戦士ガンダムUC】 ブライトが活躍する裏で……
第二次ネオ・ジオン戦争終結後、ブライトは“アクシズ・ショック”の内容を秘匿するという条件を飲むことで、ロンド・ベル司令に留任する。それから3年後に勃発した「ラプラス事変」(U.C.0096)では、ユニコーンガンダムのパイロットであるバナージ・リンクスに未来を見出し、結果的に『ラプラスの箱』の開放を目指すことになる彼を援護する。しかし、こうした行動は『箱』の死守によって既得権益を守りたいビスト財団当主代行マーサ・ビスト・カーバインから反発を受け、両者は険悪な関係に。だが、自身の正義を貫いたブライトは、最後には彼女を拘束する。
『機動戦士ガンダムUC』には登場しないハサウェイだが、第二次ネオ・ジオン戦争終結後、“アクシズ・ショック”を隠蔽したい軍上層部の意向もあり、無罪放免となったようだ。短い軍役後、U.C.0105の段階では、アマダ・マンサン教授のもとで植物監視官として訓練を受けている。だが、彼が世界を震撼させる反地球連邦政府運動に深く関与する「マフティー・ナビーユ・エリン」となることは、彼の両親や妹を含め、この時点では誰も知る由もなかった――。
バナージにニュータイプの素質を感じたブライト。このとき、ハサウェイと連絡を取り合っていたのかどうかは定かではないが、身を案じていたのはたしかであろう。
GUNDAM EVOLVE 5 RX-93 νGUNDAM
小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』やマンガ『機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男』などでも、その姿が描かれるハサウェイ。そのほか、3DCGによって描かれたショートムービー『GUNDAM EVOLVE』シリーズにも(姿こそ描写されないものの)登場している。
U.C.0093の戦いを舞台とするこの作品は、富野由悠季監督が脚本を描き下ろした『逆襲のシャア』のパラレルワールドとなっており、アムロの乗るνガンダムとクェスが乗るα・アジールとのバトルシーンが描かれている。悲惨な結末をたどった『逆襲のシャア』とは異なり、ハサウェイの想いがクェスに届き、彼女が武装放棄するというポジティブな内容となっている。
半壊状態となったジェガンから、サイコ・フレームによって増幅されたと見られるハサウェイの思念が、クェスとアムロのもとへ届く。それによってクェスは戦いに囚われた状態から覚醒する。