TOPICS 2023.11.01 │ 12:00

『鴨乃橋ロンの禁断推理』
阿座上洋平に聞いたロンとトトの絆①

最高峰の探偵養成学校BLUEで将来を嘱望(しょくぼう)されながらも、「探偵」として致命的な欠陥を抱えて「推理」を禁じられた天才がいた――。失意の名探偵と“ピュアでマヌケ”な刑事のコンビが事件を解決する本格ミステリー『鴨乃橋ロンの禁断推理』。初の探偵役に挑む阿座上洋平に、鴨乃橋ロンというキャラクターの不思議な魅力を聞いた。

取材・文/高野麻衣

榎木淳弥くんのおかげでボケがノっている

――原作を読んだときの、第一印象はどうでしたか?
阿座上 ページをめくった先で予想外の展開が待っていたりするので、読み出したら止まらなくなる作品でした。オーディションを受けるにあたって、主人公ロンの視点から原作を楽しませていただいたのですが、彼はつかみどころのない、ちょっと常人離れしたキャラクター。心情をつかむのは難しいと思いましたが、それを抜きにしても、コメディとシリアスの緩急が素晴らしくて一気読みしましたね。

――初の探偵役ということもあり挑戦もあったと思いますが、役作りはどのようにしましたか?
阿座上 おっしゃるように、あまり演じたことがないキャラクターです。普段は、原作を読んでいく中で「このキャラクターのイメージは誰に近いだろう?」とモデルを考えるタイプだったんですけど、ロンの場合はイメージを固定してはいけない気がして。オーディションの段階では、キャラクターをつかみきれないままで演じていた部分がある気がします。ただ、ギャップはつけようと決めていました。面白いところ、やる気のないところ、そして決めるべきところはカッコよく決めるところ。いろいろな表情を持つキャラクターなので、まずは素直に演じて、そこからロンのパーツをひとつずつ拾っていけたらと思っていました。ノリノリでボケる、じつはエンターテイナーな部分とか(笑)。

――実際にアフレコが始まって、印象的だったことはありますか?
阿座上 (井畑)監督が、ロンとトトの掛け合いのテンポ感を重視されていて、ふたりのボケとツッコミを細かく見てくださっていると感じています。そのため、監督やスタッフさんからのディレクションがとても勉強になっているんですけど、それだけでなくトト役の(榎木)淳弥くんがまた、ものすごく刺激を与えてくれる。ツッコミってワンパターンになりがちだと思うのですが、淳弥くんはすごく研究していて「こう来るか!」みたいなツッコミが来る。(原作の)トトって声のボリューム大きめにまっすぐツッコむようなキャラクターで、それもかわいくて素敵なんですけど、淳弥くんはそれをさらに崩したりして、絶対に同じようなツッコミが続かないように工夫してくれる。だから「ここではどんなツッコミが来るんだろう」というワクワクもあって、僕のボケがノっているなと自覚しています(笑)。

――それは完全にロンと同化していますね(笑)。
阿座上 そうなんです。期待したとおりのツッコミが来てうれしかったり、まさかそう来るんだという展開で驚いたり。淳弥くんからすごい刺激をもらっていますね。

生きがいを禁じられた、ロンのしんどさはよくわかる

――では、ロンを演じる上で苦労している点はありますか?
阿座上 長ゼリフが課題ですね。ロンが推理するパートと、事件を解明して真犯人を見つけるパートがあるのですが、そこではロンもトトも専門用語を使って畳みかけるようにしゃべらなければならないんです。そこをどれだけスムーズに演じられるかが大事になってくるのですが、テンポよくタタッと説明するのは難しい。なかなか慣れないですね。

――名探偵ならではの悩みですね。加えてロンには推理を禁じられた理由である、特殊な能力があります。そのあたりの表現は、どのように作り上げていったのでしょう?
阿座上 「能力が発動している間は別の人間だと思って演じてほしい」とディレクションを受けています。あの能力はいわば暗示ですよね。能力を使っている間の記憶がロンにはないため、暗示を相手にかけているようで、むしろロンが自分自身に言い聞かせているような感覚でお芝居をしています。そのため、このシーンだけはちょっと特殊な掛け合いになっているんじゃないかなと思います。この記事が公開されている頃には、第5話まで放送されていると思うのですが、ここまでは正直、ロンというキャラクターをつかみきれないままにしたほうがいいと思っていて。人間味がないぐらいがちょうどいいと思い、あえてそこまで感情移入をせずに演じていたので、それが彼の不思議な魅力につながっていればうれしいです。

――たしかに、原作を読んでいても物語の序盤では「ロンは自分の素顔を全然見せてくれないな」という感じがあり、そこが魅力的でした。彼は、生きがいだった推理を禁じられている状況ですものね。
阿座上 ロンは推理を禁じられているわけですが、それは僕でいうと仕事を奪われているようなもの。 僕だったら、きっと病んじゃうと思います。本当に趣味が少ないので。

――そうなんですか。意外です!
阿座上 最近ようやくキャンプを始めたぐらいで、急にポンっと休みができたりすると、何をしていいかわからないんです。淳弥くんも同じだと言っていました。休みだとしても、ずっと仕事に向き合っていたい気持ちがあるので、何をしたらいいかわからないって。だから、役者あるあるなのかもしれないですね。ロンもきっと同じだと思うんです。推理が本当に好きで、それ以外は何もないんだろうなって思うので、生きがいを禁じられてしまうしんどさはわかる気がします。

――第6話からは、ロンのこれまでの経緯が少しずつ語られますね。
阿座上 このあとのお話で、ロンがなぜ推理を始めて、どんな事件に巻き込まれたから推理を禁じられてしまったのか、という過去が明かされていきます。ロンの深みがわかって、さらなる魅力につながるんじゃないかと思うので、楽しみにしてほしいです。endmark

阿座上洋平
あざかみようへい 群馬県出身。TVアニメ『クロムクロ』(2016年)で初主演後、艶のある豊かな低音で役の幅を広げている。主な出演作に『機動戦士ガンダム 水星の魔女』グエル・ジェターク役、『それでも歩は寄せてくる』田中歩役、『スプリガン』ジャン・ジャックモンド役など。
作品概要

1st Season好評放送中!

  • © 天野明/集英社・鴨乃橋ロンの禁断推理製作委員会