TOPICS 2023.11.02 │ 12:00

『鴨乃橋ロンの禁断推理』
阿座上洋平に聞いたロンとトトの絆②

「探偵」として致命的な欠陥を抱えて「推理」を禁じられた失意の天才と、“ピュアでマヌケ”な刑事のコンビが事件を解決する本格ミステリー『鴨乃橋ロンの禁断推理』。名探偵・鴨乃橋ロンを演じる阿座上洋平へのインタビュー後編は、バディの絆がテーマ。物語と現実がオーバーラップする舞台裏のエピソードや、芝居への熱い思いに迫る。

取材・文/高野麻衣

トトへの好奇心が少しずつ信頼に変わっていく

――前編では、阿座上さんがトト役・榎木淳弥さんから受けた刺激を教えてもらいましたが、ずばりロンにとってトトはどんな存在だと思いますか?
阿座上 ロンはもともと大抵のことが推理できて、先の展開を予想できるキャラクターだと思います。リアリストでもあるし、効率の悪いことは絶対にしない。そんな考えだったヤツが、自分の命を投げ捨てても他人をピンチから救おうとするトトに出会って、衝撃的だったんじゃないかなと。自分とは真逆の存在だし、自分の予想を裏切ってくる存在ですから、彼の行動、彼の考えをもっと見たい、知りたいと思ったんじゃないでしょうか。そういう好奇心から始まり、次第にバディに変わっていく。最初は「お互いの利害が一致するから」という理由で手を組んだふたりが、一緒に謎を解いていく中で少しずつ信頼関係を築いていく、というのは熱い展開だと思いますね。

――同感です。そのターニングポイントはどこだと思いますか?
阿座上 第1話で犯人の命を救ったところは、もちろん、ひとつのポイントだと思います。あとは今後のエピソードでロンがピンチに陥るんですけど、ひとりじゃどうにもならなかった窮地をトトが救う。そこが間違いなく、彼らにとってのターニングポイントです。ぜひ楽しみにしてもらえるとうれしいです。

――本作にはロンとトトのバディ以外にも、個性的なキャラが続々と登場します。たとえば、八代拓さん演じるシュピッツは、どのような存在でしょうか?
阿座上 シュピッツは、いい意味でギャップがあって、僕の予想を大きく裏切ってくれたキャラクターですね。敵対しているけれど、ときには協力するような関係になっていくのかと思いきや、完全に味方になって、しかもちょっとかわいらしいキャラクターだった。そんなにロンに懐くの?っていうくらい(笑)。シュピッツにはどうしてもロンに力を貸してもらいたい事情がありますが、だとしてもキャラクターが変わりすぎだろって、八代くんと話をしていましたね。これはもうヒロイン枠じゃんって(笑)。僕はシュピッツをかわいいヤツだと思いますけど、ロンはどうでもいいと思っている可能性も大いにあるので、それも面白いと思っています。

ギャップといえば、雨宮刑事もそうで、クールなキャラクターかと思いきやロンのことをイケメンだと騒いだりする、そういう俗っぽいところが魅力だなと思います。衝撃的な登場をした翡翠さんも、キレ者なのに刑事としてちょっとダメじゃない?って思うところがある。部下思いすぎるでしょって(笑)。

――そうですね(笑)。「慧眼(けいがん)のカワセミ」こと翡翠(かわせみ)刑事の事件も印象的でした。
阿座上 そんな異名をとるだけあって、ロンとトトの関係性を一発で見抜けるような鋭い感覚を持っている。その一方で、部下を切り捨てることができない優しさも持っているのがギャップであり、魅力ですよね。翡翠刑事も味方になっていくので、どんな活躍を見せてくれるのか、再登場が楽しみです。翡翠刑事といえば、演じていらっしゃる福山(潤)さんの演技が、彼にぴったりで。福山さんご自身も、翡翠刑事のように知識量と教養がすごいんです。現場では淳弥くんとふたりで、福山さんの話をずっと聞いていました。いろいろなところに考えを広げている方で、どんな話をしても、なぜそうするのかっていう理由をすべて説明してくださるんです。たとえば「いつからその髪型にしているんですか?」みたいな質問から、いつの間にか世界情勢に話が広がっている(笑)。話術もすごいし、ご自身の考えもちゃんとあるから、ひとつひとつの話に説得力があってずっと聞いていたくなる。すごい方だなって思いますね。

人間を描いたドラマで「悪になってしまった人」を演じたい

――舞台裏、ものすごく楽しそうですね。
阿座上 そうですね。登場してくださるキャストの方によって、アフレコ現場の空気感が変わるんです。僕と淳弥くんがMCで、毎回ゲストを呼んで話を聞くドキュメンタリー番組のような空気の現場になっています。八代くんや雨宮刑事役の日笠(陽子)さんが来るとただのバラエティー番組になるんですけど(笑)。収録の合間にお芝居やニュースの話で盛り上がったりして、すごくいい刺激をいただいています。

――阿座上さんは本当に掛け合いが、そしてお芝居が好きなんだなと、お話を聞きながら感じています。今後、こんなキャラクターも演じてみたいという目標はありますか?
阿座上 自分のキャリアを考えると、悪役をたくさん演じたいと思っているんです。役者の第2章は、悪役を演じてから始まるんじゃないかなとも思っていて。わかりやすく「正義と悪」の悪を演じるのも、もちろん大事だと思うのですが、人間をしっかり描いたドラマの中で「悪になってしまった人」を演じたいですね。たとえば、少年が何らかの事情で悪を背負ってしまったとか。自分が正義だと思ってやってきたことが、この社会でいうと悪だった――そういう魅力的な悪役は、キャラクターを二層演じることではないかと個人的に思っていて。演じ切るためには、表面的な役よりももっと深いところにいかなければいけない。そこにいってみたいと思うんです。

――今回のロンを経て、近いうちに魅力的な悪役の阿座上さんに会えそうな予感がします。では、最後に『鴨乃橋ロンの禁断推理』を応援している読者に向けてメッセージをお願いします。
阿座上 『鴨乃橋ロンの禁断推理』は本格ミステリーでありながら、コメディとしても面白く、なによりキャラクターが持つ魅力を120%引き出している作品だと思います。推しを作ってもらえるとこのキャラクターがまた出てきたとか、こんな表情も持っているんだとか、ストーリーとともに彼らのドラマをより楽しんでもらえると思います。皆さんの応援を、引き続き届けてもらえるとうれしいです。endmark

阿座上洋平
あざかみようへい 群馬県出身。TVアニメ『クロムクロ』(2016年)で初主演後、艶のある豊かな低音で役の幅を広げている。主な出演作に『機動戦士ガンダム 水星の魔女』グエル・ジェターク役、『それでも歩は寄せてくる』田中歩役、『スプリガン』ジャン・ジャックモンド役など。
作品概要

1st Season好評放送中!

  • © 天野明/集英社・鴨乃橋ロンの禁断推理製作委員会