TOPICS 2023.03.24 │ 12:00

クラファンでアニメジャンル歴代1位を獲得! 『狂気山脈 ネイキッド・ピーク』製作総指揮・まだら牛インタビュー②

架空の神話「クトゥルフ神話」をモチーフとしたアニメ映画『狂気山脈 ネイキッド・ピーク(以下、ネイキッド・ピーク)』。後編では、引き続きまだら牛に、原案になったTRPGシナリオ『狂気山脈 ~邪神の山嶺~(以下、邪神の山嶺)』の制作秘話やTRPGの魅力について語ってもらった。

取材・文/水葉 龍弥(パワフルプロダクション)

すべては登山から始まった

――『邪神の山嶺』を作ろうと考えた、そもそものきっかけは何だったのでしょうか?
まだら牛 僕はTRPGという遊びを十数年間続けてきたのですが、何年か前にニコニコ動画を中心に爆発的に流行った時期があったんです。それまでは仲間内で遊ぶことが多いゲームだったんですけど、TRPGを遊んだ様子を動画にしてアップロードすることが流行って、「多くの人に見てもらうもの」「ネットを通じて遠くの人と交流するもの」という流れが広まったんです。そこで「大好きなTRPGというコンテンツでその潮流に取り残されたくない」と思い、動画を作ろうと決めたのがきっかけでした。『邪神の山嶺』はもともと動画にするために書いたシナリオだったんです。

――見事にその流行りに乗ることができたということでしょうか?
まだら牛 いえ、じつは僕が動画を作りたいと思ったときにはすでにたくさんの動画があって、有名な投稿主の動画に多くの視聴者が集まり、新規の動画は注目されづらい状態でした。言ってしまえば、流行りに乗り遅れたんですけど、それでもやるからにはいろいろな方に見ていただきたくて、どうすれば多くの人に届けられるかをひたすら考えました。歩きながら考えれば何か思いつくかもしれないと、もともと趣味だった登山に繰り出したんですけど、山を登るなかでふと閃いたんです。「本格的な登山家が集まって、山をモチーフにしたシナリオを実際に雪山で遊んだ様子を動画にしたら注目されるのでは?」と。

――趣味の登山とTRPG、そしてクトゥルフ神話が組み合わさって誕生したシナリオだったのですね。
まだら牛 実際、クトゥルフ神話と登山ってすごく相性がいいんですよ。クトゥルフ神話って宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)と呼ばれていて、人智を超えた圧倒的な存在である神話的存在と対峙した人間の物語が多いんです。一方の登山も、まさに大自然という圧倒的な存在に立ち向かう趣味なので、登山家はつねに神話的な存在と向き合っているようなものだと思っています。

長く険しかった人気コンテンツへの道のり

――動画を投稿してすぐに爆発的に広まったのでしょうか?
まだら牛 動画を投稿しているときは、そこまで一気に広がったという印象はありませんでした。感謝の気持ちも込めて完結後にシナリオを配布したんですけど、こちらが思っていた以上に多くの方がダウンロードしてくださって、いろいろな方に動画や配信でシナリオを遊んでいただけたんです。そこから多くの方に知っていただけた感じですね。

――どのような点が爆発的な人気につながったのでしょうか?
まだら牛 『邪神の山嶺』では、プレイヤーの作ったキャラクターが山を登る過程で何度も「生きるか死ぬか」「先に進めるのか進めないのか」といったドキドキする展開に遭遇するんです。そのドキドキ感を動画を見ている方も感じることができて、遊んでいるプレイヤーと同じ感情を共有できたのが大きかった気がします。当時は遊んでいる様子をリアルタイムで配信する流れが出来つつありましたし、そういった土壌とすごく相性がよかったんですね。人気の配信者さんにも遊んでいただけるようになって、シナリオそのものの知名度が上がってきたタイミングでアニメ化のお話をいただいた流れです。TRPGの認知度は昔に比べてずいぶん上がったと思いますが、それでもまだまだマイナージャンルですし、このアニメ映画化企画をきっかけにもっとたくさんの方にTRPGについて知っていただきたいですね。

TRPGを知らない人にこそ見てほしい!

――『ネイキッド・ピーク』はTRPGを知らない人も十分に楽しめると。
まだら牛 むしろ、そういった方にTRPGを知っていただくことが大きな目的です。『ネイキッド・ピーク』を見て面白いと思った方が、TRPGという遊びが原作であることを知り、興味を持ってくださるならこれほどうれしいことはありません。僕にとってTRPGは人生を作ってくれたと言っても過言ではないジャンルです。TRPGを通じてさまざまなものをもらったので、そんなTRPGというジャンルに恩返しがしたいんです。昔の話ですが、TRPG原作のアニメ版『ロードス島戦記』という作品が流行り、それによってTRPGを知る方が増えた時代がありました。そんな風に、TRPGの世界に新しい人たちを呼び込むきっかけになればいいなと思っています。

――では、最後にファンの方へのメッセージをお願いします。
まだら牛 登山で言えば、今はまだベースキャンプに入ったところです。これからが勝負だと思っています。アニメを作ることがどれほど大変かということがこの1年間でよくわかったからこそ、自分にできることは何でもやらなければ、という気持ちです。応援してくださる皆さん、スタートラインに立たせてくれてありがとうございます。引き続き応援のほど、よろしくお願いします。endmark

まだら牛
まだらうし 長野県在住。シナリオライター、ゲームクリエイター。代表作は『狂気山脈』シリーズ。また、オンライン対戦カードゲーム『OVERЯOID』の企画・制作もしている。
作品情報

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