TOPICS 2023.09.28 │ 12:00

わかりやすく、でも突き詰めて――
監督・平牧大輔が語る、アニメ『【推しの子】』の制作論②

アニメ『【推しの子】』の監督を手がけた平牧大輔のインタビュー連載。第2回は、キャラクターたちの目の中の星をはじめ、原作マンガの魅力を再現するために行った、映像面での“盛り”について話してもらった。

取材・文/森樹

アニメでの表現にこだわった目の中の星

――本作は芸能界とアイドルを描く一方で、アイを死に追い込んだ犯人を追うサスペンスとしての要素もあります。映像面では、このサスペンス感をどのように意識しましたか?
平牧 間(ま)と色ですね。たとえば、目の前に広がる景色や人間の姿も、少し青みを足すだけでホラー感が増しますよね。

――青の要素で生気が失われる分、恐怖を煽るような絵になります。
平牧 映画やドラマでは当然、そのような効果を入れるのですが、そのさじ加減と、どのシーンで入れるのかを慎重に判断していきました。ここはサスペンスタッチで、ここはギャグでなど、原作でも描かれているものをどういう順番、リズムで映していくのか、という部分ですね。アニメでもカッティングという作業があるのですが……。
――制作したカットを、放送尺に沿ってつなぎ合わせる編集のことですね。
平牧 はい。この作品では話数によって「定尺」(作品が放送される時間)が変わるので、カッティングにおいて、どういうリズムにすれば面白くなるのかを突き詰めました。そのなかで生まれるテンポ感を重視しながら、ひとつひとつのシーンの色にもこだわったのが『【推しの子】』です。

――物語はアクアとルビーを中心に進んでいきますが、有馬かなや黒川あかねの視点もしっかりと描写されています。
平牧 そうですね。物語の中心になるキャラクターは話数ごとに存在しますが、群像劇ですから、常に別のキャラクターの時間軸を入れることは意識していました。
――原作よりもユーモアやギャグが増えている部分もありますが、意識的に増やしたのでしょうか?
平牧 絵が入って、音が付いたことでギャグなどの印象が増幅されているのでそう感じるだけだと思います。ギャグのシーンを違和感なく見せるためにはこうする、という自分なりの方法に当てはめていくなかで、原作よりも強調されるところはあると思いますが、それが映像として“盛る”という作業になります。

――そうした“盛り”の象徴として、アイやアクア、そしてルビーの目の中の星の演出もありますね。
平牧 マンガ的な表現であり、リアリティに寄せたものではないので、アニメとしてどう表現していくかは考えましたね。わかりやすくアクアは青にするのか、ルビーは赤くするのか、ではあかねはアイと色を変えるのか――そうした細かい部分を、キャラがいちばん映える見せ方を考えて配色していきました。撮影監督の桒野(貴文)さんからの提案もあり、瞳の星の光り方もカットごとに変えています。明暗の付け方なども、目のディテールがよく見える場面では、より映えるかたちに調整しています。カットによっては、通常であれば光るような場面で逆に光らせないところもありました。
――物語を盛り上げるポイントとして、都度判断していったと。
平牧 そうですね。多用しても仕方ないですし、見得を切る場面で使うことを考えていました。

――目の演出もそうですが、ダンスパートではそれぞれのキャラクターの個性が活きた動きや表情、そしてカメラワークにもこだわりを感じました。
平牧 アイドルが歌い踊るアニメが多い時代なので、カメラをぐるっと回したり、表情に寄っていったり、重要な部分はカロリーを上げることで見映えを意識しました。また、原作ではマンガのコマの性質上、寄りのカットが多いので、アニメでは表現を足しています。たとえば、B小町の「サインはB」であれば、振り付けをしっかり見せること、そしてフォーメーションダンスを入れることで、グループアイドルらしさを意識しました。その上で、アイがセンターを務めていることがわかるように、彼女の寄りのカットを多くしています。『SELECTION PROJECT』で培った、ちゃおさんのノウハウが生きていますね。

――最終回の新生B小町のパフォーマンスでは、ルビーにアイを重ね合わせる演出もありましたが、ふたりの描き方の違いは意識しましたか?
平牧 作画で違いを出そうと考えていました。アイの子供なので、アイに見えるようにルビーを描くということですね。カットによっては、アイよりも輝いているカットを作っています。ここもちゃおさんと平山寛菜さん(アニメーションキャラクターデザイン、作画監督)のコンビだから表現できたところだと思います。コンテが上がった段階ではちょっとカロリーが高いかなと思ったのですが、ふたりなら何とかするだろうと考えるのを止めました(笑)。
――それくらいステージパフォーマンスは手を抜かず、重要なものとして取り扱ったと。
平牧 あのステージに向けて盛り上げてきたのに、コストやスケジュールの問題で表現を抑えるのはおかしいじゃないですか。ここをしっかりと見せられるように、他の部分を調整することに注力しましたね。

――ちなみに『【推しの子】』はどういった世代をターゲットとして制作していたのでしょうか?
平牧 本作の制作中は20代半ば~30代前半くらいを考えていたのですが、結果的に10代~70代まで幅広い層の人に視聴していただいたと聞きました。なので、わかりやすくしておいてよかったのかなと思います。小さいお子さんが「アイドル」を歌っているという話もよく聞くので、すべては理解できていなくとも“伝わって”はいるものになったのかもしれません。endmark

平牧大輔
ひらまきだいすけ アニメ監督、演出家。監督作に『私に天使が舞い降りた!』『恋する小惑星』『SELECTION PROJECT』などがある。
作品概要

TVアニメ【推しの子】
第1期好評配信中!
第2期制作決定!

INTRODUCTION
「この芸能界(せかい)において嘘は武器だ」 地方都市で働く産婦人科医・ゴロー。 ある日”推し”のアイドル「B小町」のアイが彼の前に現れた。 彼女はある禁断の秘密を抱えており…。 そんな二人の”最悪”の出会いから、運命が動き出していく―。

STAFF
原作:赤坂アカ×横槍メンゴ(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載) 監督:平牧大輔 助監督:猫富ちゃお シリーズ構成:田中 仁 キャラクターデザイン:平山寛菜 アニメーション制作:動画工房

CAST
アイ:高橋李依 アクア:大塚剛央 ルビー:伊駒ゆりえ 有馬かな:潘めぐみ 黒川あかね:石見舞菜香 MEMちょ:大久保瑠美 ゴロー:伊東健人 さりな:高柳知葉 アクア(幼少期):内山夕実

  • ©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会