TOPICS 2021.12.28 │ 12:00

オリジナルアニメ『空色ユーティリティ』オンエア直前!
監督・斉藤健吾×絵コンテ・雨宮哲対談①

今、巷で密かに盛り上がっているゴルフ女子をモチーフにした短編アニメ『空色ユーティリティ』のオンエアが決定! 本作の発起人でもある監督・斉藤健吾と絵コンテを担当した雨宮哲に、制作の舞台裏を聞いたスペシャル対談をお届けします!

取材・文/宮 昌太朗

ゴルフの絵をTwitterにアップして「アニメ化したい」とつぶやいたのがきっかけ

――まずは企画の発端について聞きたいのですが、もともとは斉藤監督がTwitterでつぶやいたのが、きっかけだそうですね。
斉藤 一昨年あたりからですかね、自分が普段よくやっていることを絵にしたいと思って、描いた絵をTwitterにアップしていたんです。で、コロナ禍が始まったあたりからゴルフを始めたので、それを描いた絵をアップして「ゆくゆくはアニメ化したいな」とつぶやいたのが今年の4月頃で。しかもちょうどその頃、松山(英樹)選手がマスターズで優勝したんですよね。これはいい頃合いだと思って、会社に「やりたいです!」と話をしたら、ぜひやりましょうと(笑)。
雨宮 本来、アニメを制作するとなると、予算だったり、どうやってペイするのか、みたいな部分を企画に入れ込むわけじゃないですか。でも、『空色ユーティリティ』はそういうことが一切なくて「やりたいことがあるクリエイターさんがいるのであれば、とりあえずやってみれば」と(笑)。

――そういう意味では、ラッキーなところから始まった企画だった、と。ゴルフを始めたのがコロナ禍が始まった頃という話でしたが、もともと興味はあったのでしょうか?
斉藤 両親がめちゃくちゃゴルフが得意だったので「自分もちょっとやってみたいな」という気持ちがあったんです。「親の得意なことで親を超えたい」みたいな(笑)。で、中古のゴルフショップに行ってクラブを3本だけ買って、それを持って練習場に行く、みたいなことを始めて。

――今回、雨宮さんがコンテで参加しているわけですが……。
斉藤 僕が絵コンテや演出について未熟なので、誰かにお願いしたいなと思ったときにパッと浮かんだのが雨宮さんだったんです。『SSSS.GRIDMAN』や『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』で雨宮さんの絵作りやコンテの描き方を見ていたこともあって、僕自身も雨宮さんの絵コンテならイメージしやすい、と思っていたんですよね。
雨宮 とはいえ、アヴァンパートは斉藤さんがすでにコンテを描いていましたよね。
斉藤 そうですね。でも、そこは雨宮さんに修正してもらうつもりで(笑)。「こういう雰囲気がやりたい」というのが伝わればいいなと思って描いたものだったんです。
雨宮 そうだったんだ(笑)。僕は『SSSS.DYNAZENON』が終わった直後で、斉藤さんには今までいろいろやってもらっていたので、コンテじゃなくても、なんでも手伝いますよって話をしていたんです。あと、斉藤さんが所属するYostar Picturesって、制作環境がデジタルじゃないですか。
斉藤 そうですね。
雨宮 僕はこれまでずっとアナログだったので、こういう機会でもないとデジタル環境に触れることがない、というのもあって。これでデジタルのツールに慣れることができたらいいな、みたいな目論見もあったんです。

斉藤 打ち合わせのときにも話していましたよね。「デジタルだと、ここのレイヤーはあらかじめ分けておくの?」みたいな。
雨宮 そうそう、全然わからないので(笑)。なので、とりあえずコンテを描くだけ描いて、あとはお願いしますって感じではありましたね。そもそも脚本の段階で斉藤さんの中でイメージが固まっているパートもあったし。
斉藤 止め絵が続くシークエンスとかは、僕のほうで先に描いていましたね。
雨宮 僕自身はゴルフをやったことがないし、スケジュール的に今から始めるわけにもいかなかったので(笑)、そのあたりは斉藤さんにおまかせしたほうが早いだろう、というのもありました。むしろシーンの組み立てみたいなところを頑張ればいいのかな、と。

ゴルフのススメではなく、3人の女の子がゴルフをしている姿を描きたい

――コンテ作業をやってみて、大変だったところはどこですか?
雨宮 もともと斉藤さんのほうで「ゴルフを知らない人が見ても楽しめるものにしたい」というのがあったと思うんですけど……。
斉藤 そうですね。今回は「ゴルフのススメ」をやりたいわけじゃなくて、あくまでもこの3人の女の子がゴルフをしている姿を描きたい、と。だから、雨宮さんには「この3人の関係性を大切にしてほしい」と、そこをいちばんにお願いしました。
雨宮 ハウトゥーものになると、両方をやらなければいけなくなってしまうし。
斉藤 そもそも15分の企画でハウトゥーをやろうとすると、それだけでいっぱいいっぱいになってしまう。なので、ハウトゥーは止めましょうというのは、企画段階で決めていました。ハウトゥーであれば、もうすでにやっている人がいっぱいいるわけで、そっちを見てもらえばいいや、って。
雨宮 要するに、ゴルフに振りきっているわけでもなく、かといって手も抜かない、くらいのバランスなのかなと。そういう意味では、ゴルフを知らない初心者の視点も必要になるだろうし、「ゴルフのことはよく知らないけど、楽しいものなんだな」というのが――この3人の関係性も含めて――見ている人に伝わればいいのかな、と。そんな風に考えて、作業をしていました。endmark

斉藤健吾
さいとうけんご 1988年生まれ。大阪府出身。Yostar Pictures所属。専門学校を卒業後、アニメーターとして数多くの作品に参加。これまでに参加した主な作品に『アズールレーン びそくぜんしんっ!』『SSSS.DYNAZENON』など。初監督作『空色ユーティリティ』を準備中。
雨宮 哲
あめみやあきら 1982年生まれ。東京都出身。演出家・アニメーター。GAINAXを経て、現在はTRIGGERに所属。アニメーターとして数多くの作品に参加し、最近では演出家としても活躍。監督作に『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』。
作品情報

『空色ユーティリティ』
2021年12月31日(金)19:30より
TOKYO MXにてON AIR!

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