――『THE MARGINAL SERVICE』の企画は、どういう構想からスタートしたのでしょうか？
迫井　当初は「70～80年代の洋画や海外ドラマ、それもB級寄りの突き抜けた爽快感とアクションを軸にしたオリジナル作品を作りたい」とうかがいました。だから、登場人物がジョークを飛ばし合いながら軽妙な掛け合いを繰り広げ、最後は派手に爆発して終わる、みたいな感じなのかなと。

――たしかに『THE MARGINAL SERVICE』を見て、80年代の海外ドラマ『特攻野郎Aチーム』を思い出しました。
迫井　ああ、まさにそのノリですね。我々世代の人間にはどこか懐かしく、そして若い世代の方々には新鮮な感覚で見てもらえる作品にしたいと思いながら、具体的な内容について話し合いました。そこで話に挙がったのが映画『メン・イン・ブラック』でした。あれは人類社会にたくさんの宇宙人が紛れ込んでいるという作品だったので、こちらは妖怪などのいわゆる「UMA」をメインに据えることになったんです。そしてUMAの中でも人間に化けて社会に紛れ込んだものを≪境界人≫と仮の名で呼んでいたのですが、思いのほか通りがよかったので、そのまま作品内での呼び名として採用しました。

――≪境界人≫という言葉を調べたところ、社会学用語に同じ言葉がありました。
迫井　じつはそうらしいですね。意味合い的にも「移民や少数民族など、どの集団や文化にも所属せず、それらの境界に位置する人々」というもので、ちょうど本作の≪境界人≫とも合致するんです。ただ、当初はそこまで考えていなくて、たまたま意味があっていただけなんですけどね（笑）。

――第1話はわりとシリアスな展開でスタートしましたが、そこからぶっ飛んだ方向へ転がっていきました。
迫井　第1話は、主人公のブライアンを取り巻いていたシリアスな世界がどんどん崩れていくという、ギャップを狙っていました。もともと海外作品をオマージュできたらと考えていましたので、シリーズ構成の猪原（健太）さんもシナリオをその方向でまとめてくださったので、作品の土台となる設定や雰囲気も海外ドラマ的な雰囲気になるよう気を使いました。ブライアンたちがやっていることはぶっ飛んでいますが、世界観はしっかり細部まで練り込み、キャラクターの芝居もリアルな路線でまとめる。そうすることで、ただのおバカな作品ではなく、地に足の着いたものにしたいという意図がありました。

――表現やカメラワークだけでなく、出演キャスト陣の顔触れやお芝居も、どこか海外ドラマを思わせるものでした。
迫井　じつは、そのあたりは僕から明確にオーダーしたわけではないんです。でも、役者の皆さんは脚本を通して作品の雰囲気を読み取り、ナチュラルなお芝居に振ってくださいました。

――作品の内容を明かさず、ティザービジュアルでは登場キャラクターたちが裸だったり、≪マージナルサービス≫のユニフォーム風の衣装を身に着けたキャストの写真を大々的に扱うなど、宣伝形態も特殊で話題を呼んでいました。内容はまったくわからないけれど、興味を引かれた方も多かったようです。
迫井　あれは本作の宣伝担当の主導だったのですが、かなり話題になっていたようですね（笑）。僕も知人から「どういう話なの？」とやたら聞かれました。オリジナル作品なので、作品の内容を伝える前にまずはインパクトの大きな宣伝で視聴者の興味を引くことも重要なんだなと。そういう意味では、効果の大きな宣伝だったと思います。

迫井　とはいえ、中身がちゃんと伝わっているかというと……いや、ロビンとボルツの筋肉コンビはとにかく裸になりたがるので、当初の全裸ビジュアルは、ある意味において内容を正しく伝えていたといえるのかな（笑）。