TOPICS 2024.07.24 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第19回 コブクロさんの「Million Films」が
呼び起こす、戻れないあの頃と父の思い出(前編)

声優・伊達さゆりのお気に入りや、心に残っているものを取り上げながら自らを語るフォト&インタビュー連載。第19回は、父親が大好きだったというコブクロの「Million Films」をテーマに取り上げる。この連載では意外と(?)語られてこなかった父との思い出とともに、楽曲との出会いを振り返ってもらった。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水

想像の中の「巣鴨」とは全然違う印象だった

――巣鴨に来たのは初めてでしたか?
伊達 初めてでしたね。私の中で思い描いていたイメージとはけっこう違っていました。お年寄りが多くて、時間がゆっくり流れているような場所なのかなと思っていたんです。でも、巣鴨の駅に着いて電車を降りるときに、若いお客さんが一斉に降りていくので「こんなに若い人が、巣鴨に用事があって来ているんだ……」とまずそこにびっくりしました。

――よく「おばあちゃんの原宿」と呼ばれますが、それに近いイメージだったわけですね。
伊達 そうですね。東京だけど東京じゃない、そんな印象の場所なのかなと思っていたのですが、実際に歩いてみると外国から観光に来ている方や私と同い年くらいの学生さんもたくさん見かけて、本当に想像していた「巣鴨」とは全然違う場所でした。

――これまで東京で暮らしてきて、いろいろな商店街に行く機会があったと思うのですが、印象に残っている場所はありますか?
伊達 舞台をやらせていただいたときに、稽古場が商店街の近くにあったのですが、そこと巣鴨の雰囲気が少し似ているなと感じました。その商店街も稽古に向かったときに初めて訪れた場所だったのですが、「懐かしい」という感覚が真っ先に来ましたね。地元の宮城にも商店街はあるんですけど、懐かしい気持ちになる商店街にはあまり行ったことがなくて。駅の近くで賑やかな感じの場所はあるんですけど、たとえば和菓子屋さんが並んでいたり、老舗のお店が続いているような商店街には、今回の巣鴨や舞台の稽古場近くの場所しか行ったことがないです。あまり行ったことがないはずなのに「懐かしい」感覚になるのがとても不思議で、素敵だなと思いました。

――東京の内外を含めて、行ってみたい商店街はありますか?
伊達 今回はお昼に行かせていただきましたが、私の中で「商店街」というと、夕方から夜6時くらいがいちばん活気にあふれる場所というイメージがあって。

――つっかけを履いて、なじみのお店に晩ご飯の材料を買いに行く、みたいな雰囲気ですよね。
伊達 そうです。私の家の近くには商店街がなかったので「ちょっと近所にお買い物に行く」みたいなシチュエーションがなくて。なので、その景色を見てみたいなという、ちょっとした憧れみたいなものはあります。

親孝行のためにも東京を案内してあげたい、けど……

――今回のテーマはお父さんとの思い出に関する楽曲と聞いているのですが、前回(第18回)でお父さんの話題が出てきたので、その流れで挙げてもらったのでしょうか?
伊達 狙っていたわけではないのですが、前回のインタビューをきっかけに少し前の楽曲を聞くようになって、自然と父との思い出に行き着きました。

――じつは今回の撮影も「お父さんと商店街にお出かけ」的なシチュエーションを意識したのですが、実際にお父さんと買い物には行ったことはありますか?
伊達 家族ではよくお買い物に行きましたが、父とふたりきりで出かけたことはあまりないですね。母とふたりはたくさんあるんですけどね。でも、小さい頃、父とふたりでジブリの映画を見に行きました。珍しい出来事だったので、なんだか妙に緊張してしまって、映画の内容を全然理解できないまま終わってしまって。父も父で緊張していて、微妙な空気になっちゃいました(笑)。

――なるほど(笑)。お父さんに限らず、ご家族が東京に来たときにどこかを案内する、というようなことはありますか?
伊達 それが、そんなになくて。私の家に来てくれることはあるんですけど、家からそんなに出ないんですよ。父はわりと「冒険したい人」なので家のまわりを探索したりはするんですけど、それでも「東京タワーを見に行くぞ!」と言ったりはしないですね。私自身は親孝行としていろいろなところに連れていってあげたり、家族が「行きたい」と言った場所に「この電車を使えばスムーズに行けるよ」みたいな案内ができたらカッコいいな、と思っているんですけど(笑)。

ミュージックビデオの中に自分がいるような感覚

――第19回のテーマはコブクロの「Million Films」という楽曲です。2004年発表なので、さすがに伊達さんはリアルタイムでは聞いていないですよね。
伊達 初めて聞いたのは小学校に入る前だったと思うので、5歳くらい。父の車の中でよく聞いていて、気づいたら頭の中でずっと流れていた、というような出会い方でした。

――メロディを鼻歌で歌っていたということだったので、きっと幼心に印象に残ったのだと思うのですが、どんな部分が気に入ったのでしょうか?
伊達 小さい頃、私は父の車の助手席に座ることが多くて、そうするとスピーカーが近い場所にあって、音楽がよく聞こえるんです。車酔いしやすいので窓を開けていることが多かったんですけど、風で髪がなびいた自分の顔や、うしろの席に座っている母の顔がサイドミラーに見えて、それにすごく感動したというか。まるでミュージックビデオの中に自分がいるような感覚で好きでした。ずっと忘れられないですね。

――メロディと鏡の中の画があっている感覚ですね。
伊達 楽曲のテンポがゆったりと走る車の速さとあっていて、ぴったりハマっているように感じました。endmark

関連情報

【撮影協力】
巣鴨地蔵通り商店街
<公式HP>
https://sugamo.or.jp

 

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