Febri TALK 2021.06.23 │ 12:00

広川恵一 作曲家

②深夜アニメにハマるきっかけ
『STEINS;GATE』

作曲家・広川恵一が影響を受けたアニメについて聞くインタビューの第2回は大学生の頃に出会った『STEINS;GATE』。これをきっかけに彼は秋葉原へ通い出す。

取材・文/日詰明嘉

オタクカルチャーのブランクを一気に埋めた作品

――次に挙げたのは2011年に放送されたTVアニメ『STEINS;GATE(以下、シュタゲ)』。このコンテンツはゲームや小説など広く展開されていますが、入ったのはアニメからですか?
広川 そうですね。友達の家で偶然見て、「これは面白そうだ」と思いました。それが第3~4話あたりで、話がちょうど動き始めるころだったので、原作のゲームを買ってプレイしつつアニメを見ながらハマっていきました。

――どんなところがピンときたんですか?
広川 とにかくSFものが好きだというのがひとつ。「タイムマシンみたいなもの」というワードが飛び込んできて、気になったんです。それと『魔法陣グルグル』の頃は子供だから当たり前のようにアニメを見ていたのですが、中高時代は音楽をやっていたこともあって、ほとんどアニメに触れなくなってしまっていたんです。それが大学に入り、まわりの友達の影響もあって、徐々に深夜アニメというオタクカルチャーにハマっていったんです。

――今の世代の学生は子供の頃から深夜アニメを見ていたりしますが、広川さんは夕方のアニメで一度「卒業」を経験した世代に当たるんですね。
広川 そういうことになりますね。作品の舞台になっている秋葉原にも興味がありました。それまで行ったことはなかったのですが「アニメの街になっているらしいけど、どんな場所なんだろう?」と。あと、深夜アニメに対して、偏見じゃないけれどもまだ色メガネで見る風潮があったなか、この作品はキャラクターも人間臭いし、頭身も普通の人間と同じように描かれていて、色合いも彩度が抑えめで大人っぽかった。主人公が大学生だったということも当時の自分と近くて、そこも引っかかったんだと思います。

――一方で、彼らの話すネット用語やオタクのノリはどうでしたか?
広川 それもひとつ話がありまして。中高時代は軽音楽部に入って、表向きバンドをやっていたわけですが、その頃にパソコンを買ってもらって、「2ちゃんねる」を見ていたんですよ。だから、ダル(橋田至)の喋り方がちょっと懐かしいネットミームのように思えて(笑)。

原作へのリスペクトを感じて

オタク心をわかっているなぁと

見事にハマりました

――じゃあ『シュタゲ』は、いろいろな意味でブランクを一気に埋めるような体験だったのですね。
広川 本当にドハマリしちゃって。作中に主人公の好物として、ドクターペッパーが出てくるじゃないですか。それも箱買いしてみたり(笑)。

――(笑)。
広川 キャラクターもストーリーも全部好きなんです。伏線がすごく上手に張られていて、全部見終わったあとにもう一度、第1話に戻っても楽しめる。何なら2周3周しても、「このキャラクターがこうしゃべっているのは、こういう背景があるからなんだ」と発見があるくらい、すごく丁寧に作られているんです。考察サイトも流行っていて、それを読んだりするのが楽しかったですね。アニメを見て、それについて考えること自体も面白くてハマったのかなと思います。

――いろいろな意味で良いタイミングで出会えた作品でしたね。
広川 大学生ぐらいだと、世の中に対してちょっと斜に構えている感じがあるじゃないですか。『シュタゲ』の主人公もそれがあるんですよ。それが1回ひっくり返されて、やっぱり主人公として、ヒーローとして戻ってくる。そのストーリーに引き込まれるものがありました。

――その後、秋葉原には行きましたか?
広川 めちゃくちゃ行くようになっちゃって(笑)。本当に一時期ドハマリしていて、サントラのCDを買って、秋葉原に行くときは必ずそれを聞きながら気持ちを高めるということをしていました。阿保剛(あぼたけし)さんが原作ゲームやアニメでも音楽を作られているのですが、アニメでも特に大事なシーンのときはゲームから使われている曲がかかるんです。ゲームの主題歌である『スカイクラッドの観測者』が第23話のエンディングでかかるところとか、そういう原作へのリスペクトも含めて、音楽の演出も印象に残りました。「オタク心をわかっているなぁ」と感じて、見事にハマっていきましたね。秋葉原といえば、このアニメが放送された直後の伝説のプロモーションですよ。作中で人工衛星が秋葉原のラジオ会館に激突するという展開があるのですが、実際のラジオ会館にも作中に出てきた人工衛星の模型を設置して、現実世界に作中のシーンを再現したんです。ああいう展開も本当に面白かったですね。その後の深夜アニメは全部に近いくらい見ていたんじゃないかと思います。「こんなに心を引き込まれる作品が、もしかしたら他にもあるのかもしれない」って。『シュタゲ』は、そのきっかけになった作品でした。endmark

KATARIBE Profile

広川恵一

広川恵一

作曲家

音楽制作会社MONACA所属。1987年生まれ。神奈川県出身。東京造形大学大学院卒業。2012年より神前暁に師事する。主な代表作に、アニメ『Wake Up, Girls!』、『THE IDOLM@STER』シリーズなど。

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