Febri TALK 2022.09.28 │ 12:00

石田祐康 アニメーション監督/アニメーター

②純粋にキャラクターに愛着を持つことができた
『SAMURAI 7』

無類のメカ好きだという石田監督が2本目にピックアップしたのは、黒澤明の名作をもとにした異色の活劇ドラマ。石田監督のこれまでのメカ&アニメ遍歴を交えながら、連載インタビューの第2回では、エンターテインメントならではの醍醐味に迫る。

取材・文/宮 昌太朗

のちのち、日本映画の有名作を見ていくきっかけにもなりました

――そもそも、石田監督がメカにハマったきっかけは何でしょうか?
石田 振り返ると、まだ保育園に通ってた頃からガンダムやメカゴジラ、あとはモゲラとか(笑)、ちょいちょい描いてはいたんです。前回、話題に出た『天空の城ラピュタ』に登場するロボット兵も「カッコいいな」と思って模写したり。ゴリアテとかラピュタ自体もですかね……。

――メカのどこにそんなに惹かれたんだと思いますか?
石田 どうしてなんでしょうね(笑)。車や電車にはそれほど興味が向かなかったから、架空の兵器みたいなものが好きだったのかな。怪獣映画だったら怪獣にいかずにモゲラとかメカゴジラみたいなメカ、特撮番組の戦隊ものだったら合体ロボとか。『アーマード・コア』もそうですし、『ガンダム』でいえば、自分の世代は『機動武闘伝Gガンダム』が最初の『ガンダム』になるんですけど、ガンプラを買ったり、カレンダーの裏に模写したり、という。

――プラモデルもしっかり通っているんですね。
石田 ガンプラはしっかり通っています。叔父の部屋にボトムズのプラモデルが置いてあったんですけど、子供のときに触って壊した記憶があります。とにかくメカとあらば、すぐに手を伸ばしていたんですよね(笑)。今は大人になったので、メカに対する興味はガジェットに向いている気がします。それこそパソコンにどんなパーツを買い足して増設しようか、とか。あとはカメラですね。

――カメラはまさに、メカそのものですね。
石田 映像を作ることが仕事なのでカメラを触っている、というのはあるんですけど、それとは別に持っているだけでも満足するというか(笑)。写真の長い歴史が、あの小さな機械の中に凝縮されている感じが好きで。家にいる間も、写真を撮るわけでもなく、ずっといじっていたりします。絞りをカチカチと……。

――なるほど。2本目は、2004年にBSで放送された滝沢敏文監督の『SAMURAI 7』です。
石田 こういうインタビューでは、なかなか名前の上がらないタイトルだと思うんですけど、自分としてはすごくいい思い出をもらった作品なんです。

中学時代のアニメ体験の一翼を担ってくれた

――見たのはリアルタイムですか?
石田 そうですね。中学に入った頃からあらためて、意識的にアニメを作品として楽しむようになったんですけど、その当時よく見ていたのがWOWOWのアニメだったんです。WOWOWはその頃、いろいろな作品を盛んにオンエアしていて――今回は名前を挙げませんでしたけど、今敏監督の作品も大好きでした。たとえば、『PERFECT BLUE』でおぼえているのが、テレビの番組欄を見ると「R15」と書いてあったりする。ちょっと背伸びをしたい自分としては、見たくて仕方がないわけです(笑)。しかもWOWOWが見られたのは親の部屋だけだったので、そこでビデオの予約をしておいて、学校から帰ってきたら録画したアニメを見る。そういうことをしていました。『SAMURAI7』も、録画して見ていたアニメのうちの一本だったと思います。

――どこにそれほど惹かれたんでしょうか?
石田 同じくらいの時期に大友(克洋)さんの『AKIRA』や、押井(守)監督の『攻殻機動隊』なんかも見ていたんですけど、それとは方向性が違います。大友さんや押井さんの作品がある種、芸術の域にまで達しているというか、中学生が背伸びをして楽しむ作品だとしたら、『SAMURAI7』は等身大の目線で純粋にキャラクターに愛着が持てる。愛着があるからこそ、キャラクターの一挙手一投足と先が気になってしまう。で、見終わったあとに「ああ、楽しかったな」と。

――エンターテインメントとして楽しむことができた。
石田 たぶん『攻殻機動隊』は、楽しいかどうかというよりは「すごい!」のほうが先に来る形での興奮。中学のそれも1~2年生が『攻殻機動隊』を見てもたぶんよくわからないというか、僕もきっと物語はハッキリわかっていなかったと思います。

――あはは、なるほど。
石田 『SAMURAI7』が放送された2000年代前半って、アニメの制作がほとんどデジタルに移行した時期で、これ以降アニメに求められるクオリティが際限なく上がっていくことになると思うんです。だから今あらためて見直すと、クオリティ的に「あれ?」というところも正直ある気はします。ただ、作品を構成しているキャラクターの面白さであったり、シナリオというか構造が、もうその時点で「勝っている」んですよね。登場する7人の侍がそれぞれユニークな個性を持っていて、しかもその侍たちを雇った弱々しい村人たちと一致団結して、襲ってくる野伏せり(のぶせり)を倒そうとする。そういうもろもろの構図が面白い。

――活劇としての骨格というか、物語の土台がしっかりしていますよね。
石田 最初の構想の段階で、面白さが担保されているというのはすごいことだと思います。あと『SAMURAI7』は後々、僕が日本映画の有名作を見ていくきっかけになった作品でもあるんですよ。

――ああ、なるほど。黒澤明監督の名作『七人の侍』がベースになっているんですよね。
石田 大学の頃かな、過去の映画作品に興味を持つようになって、いろいろと調べていくと「あっ、あのとき見ていた『SAMURAI7』はこの映画が元になっているんだ」と。今の若い人たちはきっと昔の白黒映画ってやっぱり手を伸ばしづらいんじゃないかと思います。それこそ、昭和の作品というだけで抵抗感がある、みたいな。でも、僕はそれほど抵抗感がなくて、それも『SAMURAI7』のおかげなのかもしれません。アニメという形でその面白さをうまく噛み砕いて伝えてくれたんだと思います。endmark

KATARIBE Profile

石田祐康

石田祐康

アニメーション監督/アニメーター

いしだひろやす 1988年生まれ。愛知県出身。大学在学中に制作した短編「フミコの告白」で数々の賞を受賞。2018年に森見登美彦の同名小説を原作にした初の長編作『ペンギン・ハイウェイ』を発表し、大きな反響を呼ぶ。最新長編『雨を告げる漂流団地』が公開中。