Febri TALK 2021.09.27 │ 12:00

田中将賀 アニメーター

①アニメの原体験
『超時空要塞マクロス』

『君の名は。』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のキャラクターデザインで知られ、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では作画監督としても名を連ねるアニメーター・田中将賀が選ぶアニメ3選。1本目はアニメの原体験とも言える『超時空要塞マクロス』について。

取材・文/岡本大介

「アイドル好き」ではないが、ミンメイにはドキドキ!?

――学生時代はマンガ家を目指していたこともあったとのことですが、アニメもよく見ていたんですか?
田中 好きでした。ただ、僕は何事に対しても広く浅くという性格なので、自分からアニメを深掘りしていくということはなくて、アニメに詳しい友達からいろいろな情報を仕入れて、おだててそいつからビデオを借りるっていうスタイルでした(笑)。

――では、いわゆるアニメオタクというわけではなかったんですね。
田中 いろいろな作品をチェックしていたので、そこそこオタクだったとは思います。ただ、好きなキャラクターや作品について一日中語れるかといったらそれは難しくて、そういう類いのオタクではなかったです。アニメ業界に入るまで、監督や演出、アニメーターという職種にもそれほど興味はなかったくらいですから。

――では、なぜアニメ業界に入ろうと思ったんですか?
田中 高校生まではマンガ家やイラストレーターを目指していたんです。でも、投稿した作品が箸にも棒にかからずに挫折して、それで大学に進学したんですけど、今度は勉強に挫折しまして。そうなったときにもう一度すがったのが絵だったんです。とはいえ、マンガ家やイラストレーターへの道はすでに高校時代に閉ざされたと思っていましたから、じゃあどうしようかなと思ったときに、アニメーターなら絵の才能がなくても技術で生きていけるんじゃないかと思ったんです。そんな感じで、自分の中では逃げるようにしてたどり着いたのがアニメ業界なんですよ。

――第一線で活躍している現在の姿からは、あまり想像がつきませんね。
田中 最初にアートランドというスタジオに就職したんですけど、それも給料の最低保証があったからで、これならどんなに下手でもひとまず生活はしていけるだろうと思ってのことでしたから。自分の絵の才能で食っていこうなんて、当時は考えたこともなかったですね。

――そうだったんですね。ちなみに今回挙げていただいた『超時空要塞マクロス(以下、マクロス)』は、そのアートランドが原作協力という形で関わっていますね。
田中 『マクロス』が好きだったからアートランドに入社しようと思ったわけではないんですけど、よくよく思い返すと子供の頃からずっと好きなシリーズなんですよね。

――第1作の『超時空要塞マクロス』から見ていたんですか?
田中 そうです。放送当時は小学校低学年だったと思うんですけど、本当にたまたまテレビをつけたらやっていて、それからなんとなく見続けたんですよ。ストーリーはほとんどおぼえていないんですけど、とにかくオープニングがカッコいいなというのと、リン・ミンメイがかわいくてドキドキしたことだけは鮮明におぼえています(笑)。

ミンメイを演じている

飯島真理さんのことも

熱心にチェックするように

なりました

――『マクロス』シリーズと言えば、歌とアイドル要素、さらにはバルキリーに代表されるリアルなメカニックやSF設定が革新的でした。
田中 バルキリー、カッコいいですよね。当時は『機動戦士ガンダム』の影響もあって、スーパーロボットよりもリアルロボットのほうがまわりで流行っていて、僕も20メートル以下のサイズ感のメカが好きでしたね。プラモデルもいっぱい買いましたし、クリスマスプレゼントには完全変形できるバルキリーのフィギュアを買ってもらった記憶があります。

――戦闘機からロボットに変形する「可変戦闘機」というギミックは衝撃的でした。
田中 メカアクションも良かったですよね。とくに劇場版(『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』)の戦闘シーンはスゴくて、いわゆる「板野サーカス」と呼ばれる空中戦も子供心にかっこいいなと思って、ビデオで繰り返し見た記憶があります。

――田中さんは、どちらかと言えばキャラクター芝居が得意という印象がありますが、アクションやメカも好きなんですね。
田中 好きですよ。そもそも僕自身は、キャラクターが得意でメカが苦手だとは思っていないんです。『交響詩篇エウレカセブン』ではメカを描いていますし、『∀ガンダム』でもちょこっとモビルスーツを描いたりしていますから。いろいろなジャンルの作品を描かせてもらってきたうえで、今はなんとなくキャラクターを描く人っていうイメージになっているのかなと思います。

――そうだったんですね。
田中 そもそもプロのアニメーターである以上「これは苦手です」とか「描けません」とは言いたくないですし、実際に言わないですね。僕は仕事においては職人でありたいと思っているので、そこは美学として大切にしているところだったりします。

――『マクロス』シリーズと言えば、歌やアイドル要素も特徴的ですが、そちらはいかがでしたか?
田中 正直に言うと、僕は「アイドルが好き」っていう感覚がまったくわからない人間なんです。これは子供の頃からそうなんですけど、たとえば、松田聖子さんの曲は好きだったとしても、じゃあ本人を好きになるかというと、それはまったく別物なんですよね。だってアイドルって絶対に手の届かない存在じゃないですか。それならまだ可能性のあるクラスメイトに目を向けるべきですよ(笑)。二次元のキャラクターに対してもそれは同じ感覚で、絶対に手には入らないとどこかで線引きをしているので、好きになることもないんですよ。

――でも、子供心にミンメイに対してドキドキしていたんですよね?
田中 それはまあ、そうです(笑)。しかも、それが高じてミンメイを演じている飯島真理さんのことも熱心にチェックするようになりましたからね。後にも先にもそんなことはなかったので、なんでミンメイをそこまで好きになったのか自分でも不思議です。うーん、もしかすると自覚がないだけで、アイドルや二次元キャラを好きになる素養があるのかもしれません。endmark

KATARIBE Profile

田中将賀

田中将賀

アニメーター

たなかまさよし 1976年生まれ。広島県出身。原画、作画監督、キャラクターデザインと幅広く活躍するアニメーター。キャラクターデザインを務めた代表作は『家庭教師ヒットマンREBORN!』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『君の名は。』『空の青さを知る人よ』など多数。